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Kerry Conran
2004 USA/UK/I 106 Min. 劇映画
出演者
Gwyneth Paltrow
(Polly Perkins - 新聞記者)
Jude Law
(Joseph Sulliva - スカイ・キャプテン、ポリーとは腐れ縁)
Giovanni Ribisi
(Dex - ジョセフの親友、地上で技術担当)
Michael Gambon
(Paley - ポリーの上司、編集長)
Ling Bai
(トーテンコプフの部下)
Laurence Olivier
(Dr. Totenkopf - 天才科学者)
Angelina Jolie
(Francesca Cook - 空軍のパイロット)
Trevor Baxter
(Dr. Jennings - 科学者)
Julian Curry
(Dr. Vargas - 科学者)
Omid Djalili
(Kaji - チベットでスカイ・キャプテンたちを助ける男)
見た時期:2006年5月
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The World of Tomorrow
Kerry Conran
2005 USA 6 Min. 劇映画 モノクロ
出演者
監督が自宅で作った作品で、名前は不明。数人の登場人物がいます。
DVDにおまけでついています。
見た時期:2006年5月
大分前に見たのですが、うまくまとまらず記事になりませんでした。最近いいきっかけがあったのでもう1度まとめ直してみました。まずは映画ができるまでのエピソードから。
★ チャンスは時として空から降って来る
ある所に The World of Tomorrow という映画を1人でコツコツ4年かけて作った映画アカデミーの学生がおりました。6分のビデオが仕上がったので、誰かに送ったら、それが評判になり、7000万ドル予算を貰い、オスカーをもらった女優を主演にして長編が制作されることになりました。共演の俳優も大物がズラリ。めでたし、めでたし。
まるでアードマン社に見出されたニック・パークの話をコピーしたようなエピソードですが、実話です。発表されたのが後だったので2005年の作となっていますが、コンランが作り始めたのは1998年頃のようです。
★ 意外なテーマ
ドイツでは宣伝が上手く行かなかったのか、劇場公開を見る限りそれほどヒットしませんでした。作り方はシン・シティーと似て、登場人物はガレージなどのブルー・スクリーンの前で演技するだけ。他は全部コンピューターでやります。この種の映画の走りとも言えますが、話題の中心は技術より、レトロ的な SF の持つ雰囲気。第2次世界大戦を思わせる時代が舞台で、ドイツ語で名付けられた悪者が出て来るので、ドイツで受けなかったのは仕方ないかも知れませんが、戦争では連合国の敵になっていたイタリアがお金を出しています。そして冷静になって考えると、メイン・テーマは戦争で実際に連合国の敵だった党や人物ではなく、全く別な所に潜んでいます。となるとイタリアがお金を出したことの方が驚きです。
中で使われているドイツ語はやや不自然な話し方ですが、ドイツ人かドイツ語を母国語にしている人に話させたようです。後半登場するアンジェリーナ・ジョリーは発音をはっきりさせ、ちょっと英国風にしています。あれっと思って見ていたら、英国の国旗が出て来たので、攻撃を受けたのはアメリカはニューヨーク、やったのはベルリン近郊の研究所で働いていた(働かされていた)科学者集団、助けに来るのは英国空軍ということらしいです。
★ 手数をかけたレトロ
空軍の基地は浮かぶ飛行島みたいな物で、水の上ではなく空に浮いています(この発想はおもしろいと思いましたが、技術的に可能でもそんな基地を作るには莫大なお金がかかるでしょうね)。これとは別に本格的な島の基地があります。ここで思い出すのがサンダーバード。スカイ・キャプテンの属する軍はサンダーバードのレトロ版のような仕掛けになっていて、家族、兄弟でやっている家内工業ではなく、英国が国力をかけて組織した軍隊となっています。
普段はどこかの島で休暇を取り、失礼、訓練をし、救助要請があると緊急発進するという考え方が英国は大好きなようで、この発想はサンダーバード以来続いているようです。この考え方に私たちは子供の頃から親しんでいたわけですが、これで現実に本当に機能するかは別問題。同盟国内でも国益が対立する可能性がありますし、そこに軍がいるから相手が元から手を出さないという効果はこの方式では得られません。また、行けと命令ばかりする国と、行かされてばっかりの国に分かれてしまう危険もあります。たかが漫画チックなエンターテイメントの映画でも、考える材料は十分提供しています。
政治の話を横に置いて考えると、この映画の魅力はレトロ・スタイル。カラー映画ですが、白黒に近いトーンで統一してあります。そして巨大ロボットや海の中も走れる飛行機が出て来たりするので、SFとなります。もう1つの魅力は、シャングリ・ラ。ジェームズ・ヒルトンのファンには雰囲気たっぷりで楽しいシーンも出て来ます。(後述)
★ たかが映画オタクの作品と言わず・・・
まだ学校を終えたばかりの若者のアイディアに破格のサービス。7000万ドル払い、大スターを呼び集めた映画会社の努力には驚きます。出演者は皆楽しそうで、なかなかいい雰囲気です。特にセブン以降ぴったりのお化粧や髪型をしていなかった上、押しつけられたキャラクターを演じることが多かったグウィニス・パートロフ、いくつか作品を見ましたがあまり快い印象を受けなかったジョヴァンニ・リビシがぴったりの役を貰い、見直してしまいました。ジュード・ロウは他にもいい作品がありますが、ここではパートロフと意気が合っていて見ていて楽しいです。
監督が自分で台本を書いて作った作品で、彼の関心はもっぱらスタイルとコンピューター技術の方だったのでしょう。ストーリーはいくつかの映画や小説から頂戴しています。ヒルトンの失われた地平線を大々的に拝借。その他にDCやマーベル・コミックの映画化をするならこんなのがいいのではと思えるシーンが続きます。日本人なら鉄人28号も思い出すでしょう。劇場版は6分のビデオのスタイルから1歩も逸脱しておらず、そこに主演のキャラクターを上手に嵌め込み、演じている人たちも真面目な態度で漫画チックに演じています。そのバランスが非常にいいので、見ていて文句が出ません。
★ パートロフの株が最近上昇
パートロフはこの後アイアンマンの準主役になりましたが、私にはセブン以来の快挙に思えます。彼女にはこういう役がぴったりで、本人も楽しそうです。芸能界のお嬢様のスターという印象が強かったパートロフですが、歌では歌手として通っているはずの、歌が下手くそな超大スターを軽く追い抜く歌唱力を見せ、スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモローでは記事を取るためなら大嘘もつくあつかましい記者、アイアンマンではちょっと内気な秘書を上手に演じています。彼女は文芸物で絶賛されていますが、私はまだそちらは見ておらず、ポスターを見ただけでやめてしまっています。駄作としか思えないコメディーはいくつか見ましたが、誉めようがありませんでした。今から思うと、文句も言わずにそういう作品にも出た彼女が偉い。
★ ストーリー - アメリカ本土が攻撃を受けた
作者でもある監督はこのアイディアを1990年代に温めていて、制作にも取り掛かっているので、2001年に起きた大事件とは無関係に筋を決めています。1939年ニューヨーク市に鉄人28号のような巨大ロボットが何台も押し寄せ、町を破壊します。張り切り記者のポリーは果敢にも写真を撮りに現場に向かい、危ういところを元恋人のジョセフに救われます。かつて恋人ジョセフが自分を裏切ったと思い込んでいるポリーと、ポリーが自分の飛行機に悪さをしたと思い込んでいるジョセフは喧嘩ばかりしていますが、命に関わる時には助け合います。ポリーが時々余計な事をするため、事がややこしくなったりとんでもない事になるのでジョセフはカンカン。しかしそれでジョセフが大活躍する場面ができるので、そこは良しとしましょう。
なぜ町が襲われたのか、あのロボットは誰が送って来たのかなど謎ばかりですが、ポリー、ジョセフ、そしてジョセフの親友デックスは謎を追い始めます。ポリーはジョセフたち以上に秘密に近づいていました。最近著名な学者が誘拐される事件が続き、彼女はその事件も追っていました。
学者は元々7人で、全員世界最優秀。ベルリンの郊外で秘密の研究開発に携わっていました。1人ずつ殺されていて、中の1人は危険を感じヒンデンブルク3世号というツェッペリン気球でニューヨークまで逃げて来ていました。そのジェニングスはポリーと接触して来ました。彼を追っているのは髑髏と呼ばれる謎の人物。 しかしジェニングスも助からず、ポリーに細長い金属性のカプセルを託して絶命。
ジョセフは特殊な防衛隊の優秀なパイロット、デックスは新兵器の研究開発もする優秀な技術者。ポリーは押しの強い危険をかえりみない新聞記者。3人は協力して手がかりを追いますが、デックスは髑髏組の者と思われる女に拉致されてしまいます。デックスが残した手がかりを追うと、雪のネパール・チベット付近にいるらしいトーテンコプフ(=ドイツ語で髑髏という意味)博士に行き当たります。このあたりはヘルボーイの雰囲気も漂います。やがて髑髏博士がいるらしい秘密基地に到着。ニューヨークから誘拐されて行方不明になっていたデックス、失踪していた数人の科学者が発見されます。そして肝心のトーテンコプフ博士を発見した時は皆唖然・・・。
とまあ、あちらこちらの有名な話を継ぎ接ぎしてあるので、著作権、何かの使用料などの調整が大変だったでしょうが、でき上がった作品は楽しく、調和が取れていて、名作と呼んでも構わないでしょう。あまり大々的な宣伝活動はしなかったらしく、ドイツでは劇場公開はすぐぽしゃってしまいましたが、もしヘルボーイ、シン・シティーが楽しかった、テレビのディック・トレーシー大好きという方がおられたら、趣味に合うのではないかと思います。セックス・シーンも、えぐい暴力シーンも出て来ないので、家族連れで映画館に行くような時にもいいかも知れません。
画面の楽しさ、ストーリーの単純さ、現役の大スターに加えて、サー・ローレンス・オリビエとサー・マイケル・ガンボンが出演しています。ガンボンはサーと呼ばれるのが嫌いだそうですが、ナイト称号を貰っていると聞いています。英国の舞台、映画で称号に値するような貢献をしたことは間違いありません。サー・ローレンス・オリビエは一応ガンボンの師匠。スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモローでは師匠との共演になりますが、師匠はすでにこの世の人ではなく、生前の画像を拝借です。ガンボンの出演本数は非常に多く、私も何本か見ていますが、1番個性的だったのが The Singing Detective。
★ 日本ではヒットしたのか?
政治のテーマが多いのですが日本やドイツではどういう風に受け取られたのでしょう。前半ではジョセフが満州や南京にいたことになっていて、同じ頃にそのあたりにいたポリーが東條秀樹の入浴中の写真を撮ろうとしていたなどという話が出て来ます。軍人や政治家の入浴中の写真を撮るようなパパラッチは当時の世界にはいませんでしたが、こういう話を聞いて楽しいと思う人と不快だと思う人がいるでしょう。ドイツの扱いはけちょんけちょんで、ジョセフやポリーの敵が1939年という微妙な時期のドイツ。名指しはしていませんがこの時代を描くので、当然敵はあの有名な人物以下制服組を想像させるようになっています。映画の世界では長い間続いている「こいつらを敵にしておけばそれでいい」という作法です。ところが結末に近づくと実は複雑な問題を投げかけていることに気づきます。(後述)
その代わり気合を入れてあるのが発明品、調度品と時代の整合性。本当に当時こういう物があったかと言うことではなく、「あの時代ならきっとこうだろう」と思わせるようなデザインにしてあり、それは徹底しています。非常に贅沢に作られています。なのでレトロが好きな向きには大いに受けると思います。日本にもそういうファンはいるのではないかと思います。
★ シャングリ・ラ
以前はシャングリ・ラと聞くとばかばかしいと思っていました。ヒルトンの小説を読んでからは好奇心が沸いていましたが、視覚的にどういうものか想像はしにくかったです。ただいつだったか古い映画で見たような気がして、小説のイメージと混ざりました。それでもまだはっきりしたイメージはできていませんでした。
その後何十年もしてチベットが話題になることが増え、映画にもこのテーマが利用されるようになりました。その中で、なるほどこんな感じだったのかなと思える作品もいくつか見ました。チベットとかネパールで5000メートル以上の高さの山の上にある寺院とか言われたらとシャングリ・ラの事を言っているのかと疑うといいです。8000メートルを越えて1年中雪に覆われて・・・などということでしたらまず間違いありません(笑)。
ドイツにはヒルトンという名前も失われた地平線という題名も知らない人が多いのですが、そこに住む人々の生活についてはまさにそれがユートピア、理想郷と思っている人が多いです。特に日本で言えば団塊の世代に当たる世代とその次の世代に多いです。その結果70年代以降自然食、自然療法などが盛んになった時期がありました。ドイツ語圏の国々にも薬草を使う文化があったので、とっつき易かったのかも知れません。
中には奇妙奇天烈な話もありますが、まじめに研究し、使える知恵は実行に移した人も多く、例えば化学薬品を使わずに紅茶を育てる事業に乗り出した人もいます。インドなどアジアに土地を確保し、そこでお茶の葉を作る時に健康を重視した方法を使い、できたお茶を中間マージン抜きでドイツに直送。売る店もデパートやスーパー、お茶の専門店を避け、レンタ・カーの事務所など、普段紅茶とは関係の無い店。
同じ頃から急激に効く従来の薬品の他にシロップなどの形で長期間の健康管理に効く薬も積極的に使われるようになり、健康保険で認められた物もあります。日本の漢方薬と同じような位置ですが、長年漢方が知られていて、専門の薬局もあった日本と違い、ドイツでは70年代以降急に注目されるようになりました。ドイツには大昔この種の文化があったため、当時の老人の中にはそういう事を知っている人もいました。その世代から一挙に70年代以降西洋版漢方ブームになった感があります。その煽りで本家本元の漢方も注目されるようになりました。私がドイツで針治療を受けることができたのもそういった影響です。一時期のブームは去り、眉唾物は徐々に淘汰され、本当に効果の認められるものだけが生き残る傾向にあります。
そのネタ元かとも思えるシャングリ・ラですが、ヒマラヤの崑崙山脈にある寺の名前だということになっています。長生き、健康な人が多く、非常に平和な調和ある世界として描かれています。怪我や病気の治療方法も自然療法系。古そうでありながら非常に近代的でもあるというミステリアスな場所です。
失われた地平線のストーリーはコンウェイという青年の体験談。大使館員だったコンウェイを含む3人の男性と1人の女性が欧米出身で、インドが英国の植民地だった頃の話です。インド人が抵抗運動を始めたので緊急避難せざるを得なくなった欧米人が飛行機でインドを去るのですが、機のパイロットが入れ替わっていて、飛行機は乱気流に巻き込まれ不時着。パイロットは死亡。死に際にパイロットは4人がシャングリ・ラの近くにいると言い残します。
4人は雪の中に現われた中国人に案内され、寺院に連れて来られます。そこで寺院を運営しているのはなんとベルギー人(!?)。そして4人がなぜここへ誘拐されてきたのかが分かって、もう1度びっくりという話です。アジアのど真ん中の人里離れた山の天辺にある寺院がヨーロッパ人によって運営されていたというのは欧米人にとっては非常にエキゾチックに思えるのだと想像します。エベレストに近いアルプスの山の上でヨーデルを歌うのが日本人だったら・・・びっくりしますか?実はいるんです、1人有名な日本人が。ま、これでおあいこです(笑)。
最近の映画では例えばスカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー、バットマン・ビギンズなどがこの寺院を思わせる場所を描いています。
★ ヒンデンブルク
物語の冒頭科学者が外国からニューヨークに逃げて来ます。その時彼が使った乗り物がヒンデンブルク。ヒンデンブルクというのは通称で、本名はLZ 129(飛行船ツェッペリン129号)といいます。1号機が世界最大の大きさで、デビューは1936年。14ヶ月の短命で、有名な大爆発で生涯を閉じています。スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモローにはその3世というのが出て来ます。実際には129号以降新しいものは作られていないので、3世号というのはありません。
実在したヒンデンブルクは今風に言うとジャンボ・ジェットやコンコルドのようなものですが、乗客1人あたりの面積は飛行機よりずっとゆったりしています。当時の米独関係は微妙で、直接の戦闘にはなってはいませんでしたが、軍事目的に利用できる物の輸出は禁じられ、そのため飛行船に使われるガスの種類も燃えないヘリウムではなく、燃える水素になっていました。
世界情勢は2極化しており、その頂点とも言えるアメリカとドイツの間の事だったので、ドイツ側はヒンデンブルクの成功を国益を誇るために大いに利用しようと考えていました。欧州の非武装地帯に侵攻する時期とヒンデンブルクのデビューを重ねています。そして本来の旅客の仕事ではなく、宣伝びらまきに使われています。1937年5月6日がヒンデンブルク最後の日。原因不明とされる事故で焼け落ちました。100人弱の乗客と乗員を乗せられるのですが、死者は地上係員1人を含め36人。実は原因は分かっており、改良型も開発されましたが、ヒットラーが完全中止を命令したため、その後作られませんでした。
ドイツはLZ129が示すように129機ほど飛行船を製造していました。旅客に使われたのはごく一部です。しかも1937年には製造中止されたほか、それまで使われていたものも廃棄 処分となっています。ですのでスカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモローではジョセフなどがいる基地の飛行場に何機も置いてありますが、ドイツ側ではこの時期(1939年)にはもう飛行船は使っていなかったことになります。アメリカはヒットラーが中止命令を出した後も暫く使っていたようです。
ヒンデンブルクの事故は同名の劇映画を見たことがあり、その時実写部分を見ました。それとは別に実写フィルムを見たこともあります。なぜその日、その時、ちょうどいいアングルでカメラがセットしてあったのかは分かりませんが、きれいに映っており、驚くほどの速さで火が回ったことが見て取れます。非常に危険な乗り物だと思いますが、当時の人は楽天的だったなあと感じます。この中で生き残った人がいたことの方が奇跡です。
★ 大悪党の悪事
ネパールの理想郷まで登場させ、主人公をそこに向かわせての大冒険活劇ですが、宗教に寛容な日本人が見てどこまでが悪事なのかという疑問にぶつかります。髑髏博士はある島に基地を作り、そこから宇宙に向かってロケットを発射する計画を立てていました。そのロケットには世界中の動物が1対ずつ乗せられていて、ロケットが到着した新天地に新しく地球と同じような世界を作ろうとしていたのです。博士は殺し合い、破壊し合いを繰り返す人類には完全に絶望していました。
確かにその通り。第1次世界大戦は終結したものの、1939年と言えば第2次世界大戦が始まる年。1度で懲りずまたぞろ大規模戦争に突入という年です。こんな調子では博士が絶望するのは当たり前。もしあのまま生きていたらその後も冷戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争などを目の当たりにしたでしょう。なので新天地に希望を託す気持ちは分からないでもありません。
科学者やジョセフたちと、残された人類に取って問題なのはロケットが発射された後地球が破壊されてしまうところ。地球を見捨てて他所に去るだけでなく、地球の存在が危なかったのです。なので止めに入る・・・、分かります。分かりやすい。日本人だけでなく、アジア人やアフリカ人ならそれだけで納得。博士の陰謀は阻止しなければなりません。まだ死にたくない。あしたもご飯が食べたい。私たちは単純なのです。
ここで西洋人やアブラハムの3宗教を信じている人たちと大きな差が生まれます。特にキリスト教を信じている人たちに取っては髑髏博士のやろうとした事は神をも恐れぬ大犯罪なのです。地球を破壊するという部分ではなく、ノアの箱舟の真似をしてノアのロケットを作ったことが問題なのです。そのため博士の計画の全容が分かったラスト近くで頭をガーンとやられる効果があることになっています。神以外の者が生物や世界を創造しては行けないという大原則があるのです。ですのでこの作品の受け取り方は宗教を信じているかいないか、またどの宗教を信じているかで大きく違って来ます。アブラハムの3宗教は表面的にはいくつか差がありますが、大原則は神は1つだけという部分で、神以外の者がやっては行けない事があります。他の宗教に寛容な宗教や多神教の人たち、そして宗教と無縁で育った人たちとは考え方が根本的に違います。というわけで海外での受け取り方にはいくらか差が生じると思われます。
★ ドイツで大受けしなかった本当のわけ
以下は与太話、かんぐりです。ドイツにはマンタと呼ばれる車があり、それに乗る人は国中から馬鹿にされ、コメディアンもこぞってマンタに乗る青年をネタにしてこけにしまくります。有名な会社から発売された安価なスポーツカーなのですが、これに乗る人のメンタリティーをネタにして数々のギャグも作られています。さらにはManta, Manta (邦題:バニシングストリート)という映画も作られ、ドイツが誇る(当時の)若手スター、ティル・シュヴァイガーがデビューを飾っています。彼はコメディーが得意分野。スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモローの後半アンジェリーナ・ジョリーが登場してからマンタという言葉が何度か飛び交うので、ドイツ人はここで(笑い)こけたのかも知れません(まさか。ちょっと言ってみただけです。笑)。
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