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Akmareul boatda /
悪魔を見た /
I Saw the Devil /
J'ai rencontre' le diable

金知雲/Kim Ji-woon

2010 Korea 141 Min. 劇映画

出演者

Lee Byung-hun
(Kim Soo-hyeon - 国家情報院捜査官)

Jeon Gook-hwan
(Jang - 引退した刑事課の班長、ジュヨンの父親)

Oh San-ha
(Joo-yeon - チャンの娘、スヒョンの婚約者)

Kim Yoon-seo
(Se-yeon - ジュヨンの妹)

Choi Min-sik
(Kyung-chul - スクールバスの運転手、連続殺人犯)

Jeon Ho-jin
(Oh - 刑事課の課長)

Choi Moo-sung
(Tae-joo - ギョンチョルの友人)

Kim In-seo
(Se-jung - テジュの女友達)

見た時期:2011年3月

2011年春のファンタ参加作品

★ えぐい作品

オールド・ボーイと比較する人が多いようです。オールド・ボーイは長年の執念、悪魔を見たは数週間の執念という差はありますが、見終わると何となくこの比較には説得力があります。殺される女性のシーンが現実味を帯びた撮影になっている上、度外れた執念の物語なのでかなりえぐいです。

★ ストーリー

セキュリティーか何かエリート的な職務に就いている警察官キム・スヒョンが主人公。かわいいフィアンセがいて、その日はたまたまスヒョンは仕事中。車がパンクして婚約者のチャン・ジュヨンは1人でレッカー車の到着を待っています。そこへ黄色い小型のスクール・バスが近づき、男が乗って行けと誘います。こういう時になぜ乗ってしまうのか私にはさっぱり分からないのですが、彼女は乗ってしまいます。それで彼女の運命は決まり。

誘った男は猟奇殺人の犯人チャン・ギョンチョルで、彼女を全裸にして苦しめるだけ苦しめてから肉片に刻んでしまいます。犯行現場に残されたのは彼女の婚約指輪だけ。彼女の体の一部は川に捨てられ、暫くして頭が発見されます。

ストーリーの前半はこれで終わり。時間的には半分より少ないです。

この後は2週間ほど休暇を取ったスヒョンの行動のドキュメント。同僚などは「暫く休め」と言いますが、スヒョンは2週間でオトシマイをつける決心。休養どころか私的に捜査を開始します。

ジュヨンを殺したのはチャン・ギョンチョル という猟奇殺人の常習犯。親もおり、子もいるおっさんですが、なぜか若い女を殺したいという欲望に駆られ、1度目をつけると、徹底的にうまくやる男です。なぜこの男がこういう性格になったのかの説明はありません。犯罪者に必ずしも因果関係があるとは限らないのでしょう。犯行に付随する仕事はやり慣れていて手際がいい、誰も気づかない、というわけで既に多くの女性が犠牲になっています。若い女性を全裸にしますが、セックスの欲望よりむしろ残虐に殺すことの方を楽しんでいるような男です。

ちなみに韓国では観客が同情するような役を演じた俳優でも血も凍るような殺人鬼の役がもらえるようです。日本ではちょっと難しい。アメリカでもそう簡単ではなさそうなので、うらやましい気がします。

職業柄情報源があり、スヒョンは4人の猟奇犯罪の容疑者に目をつけ、監視を始めます。当てが外れることもありますが、やがてギョンチョルに行き当たります。職業を偽りギョンチョルの家族に近づいたスヒョンはギョンチョルの居所を突き止めます。ギョンチョルが留守の間に彼の仕事場を見て回り、ジュヨンの指輪を発見しただけではなく、かなりの数の犠牲者がいることにも気づきます。

新たに犠牲になりかけていた女性を救い、ギョンチョルと対決したスヒョンはここでギョンチョルを逮捕せず、殺しもしません。ギョンチョルに怪我をさせ、気を失っている間にGPSのカプセルを飲み込ませます。そしてスヒョンはその場から消えます。1回戦終了。

スヒョンが警官らしいと気づいたのに自分は殺されもせず、逮捕もされないので不思議に思ったギョンチョルですが、日常生活に戻り ます。スヒョンはジュヨンが残忍な殺され方をしたので、ギョンチョルを簡単に捕まえる気にならず、同じぐらい苦しめてやろうと思います。そこで放免するのですが、GPSで監視していて機会があると残忍な方法で襲います。しかしギョンチョルも一筋縄で行く男ではなく、同じく連続殺人をやる男と組んでスヒョンに挑戦して来ます。結局ジュヨンの父親と妹のセジョンもやられてしまうなど、スヒョンは大きな犠牲を払いますが、最後残酷な形でギョンチョルを殺します。めでたしめでたし・・・?

★ 残る疑問 1

そうなのです。めでたいのか考えさせられます。イケメンの幸せ一杯の警察官と、かわいいとしか言いようの無い乙女、そして善良そうなお父さん・・・同情を引くに十分な家族関係。なのでこの幸せを壊されたら切れてしまうのは当然と前半は考えます。しかし後半になると、過剰防衛と言うか、やり過ぎ、えぐい・・・としか言いようがありません。ここまでやるか、後が虚しくはないか・・・という終わり方です。

ここまでやると観客の同情心が消えてしまい、最後はおっさんとイケメンがほぼ同じ列に並んでしまいます。印象に残るのは殺された乙女と父親の善良さ。こういう男と結婚して、果たして彼女は幸せになれただろうかとまで考えてしまいました。あるいは川で頭が見つかった時にスヒョンは静かに発狂したのでしょうか。

今年のファンタにはこのパターンの映画が他にも来ています。

★ 残る疑問 2

昔、私が子供の頃、よく親、親戚、先生、近所の大人に「知らない人にはついて行くな」と言われたものです。女の子には特に言う人が多かったですが、男の子にもちゃんと注意していました。ですので、うら若き乙女の年齢から何十年も経った今でも、知らない人に話し掛けられたら、まずは警戒警報。人に頭から不信感を持つのは隣人愛などを信じている人には悪い事なのかも知れませんが、普通の人には健全な自己防衛。時代が変わり車が非常に普及した世の中になりました。となると「知らない人の車に乗るな」がアップデート・バージョンです。主人公の婚約者ジュヨンは良い家庭環境に育っている様子で、親子、姉妹の関係も良好。そして婚約者はセキュリティー専門のエリート警官。つまり世の中の治安に身を粉にしてつくしている人と、その家族。ですので、彼女がなぜああも易々と知らない人の車に乗ってしまったのかが理解できません。

ギョンチョルはやり慣れた連続殺人鬼ですから、ジュヨンが断わり続けたら、最後は暴力を使い、結局は目をつけられたジュヨンにチャンスは無かったかも知れません。しかし観客はジュヨンが車に乗ってしまうシーンを見せられるので、私は「あれれ・・・?」と思いました。彼女は人を信じやすいお馬鹿さんとしては描かれておらず、最初何度も断わっています。

アメリカではテッド・バンディーが登場するまで家に鍵をかけなくても大丈夫な程度に安全な国だったそうです。そういう中でしたらこういう行動も納得が行きますが、バンディーの時代からかなり時間が経っている上、別な国の韓国。犯罪は結構高い率で発生しており、描かれている彼女のような人ならそれなりに注意をするのではないかと思いました。日本も最近は犯罪検挙率が落ちているので、皆さんもご注意なさってください。こういう時には「断わると相手を傷つけるかも知れない」という配慮より、あなたの安全の方が優先します。

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