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2011年3月19日-20日
今年の春のファンタは中粒揃い。「これだ!」という作品はありませんでしたが、それぞれのジャンルの物としての対面は十分保てる作品ばかりです。
今年は時期的に非常に不幸な時期に当たってしまったため、こちらも体力の限界の中で見ました。そのため多分1番おもしろい作品と、2番目におもしろい作品の間集中力を欠いており、評価ができない状態になっていたことを書き加えておきます。もしかしたら平時ならこの2作品に「これだ!」という評価が来るかも知れません。
ゴールデン・グローブからベルリン映画祭までを出して、ほっとしたところで、一息つく間も無く、春のファンタです。今年は10本上映の予定。監督の顔ぶれを見ると楽しそうなラインアップです。ちょっと気になるのは自分でオトシマイをつけてしまうストーリーが並んでいる点。
工藤栄一のリメイク。三池崇史はファンタお気に入りの日本人監督。間接的に史実を参考にしたストーリー。
幕府の制度の中で処罰できないので、自分たちがと手を挙げた13人の物語。英国がお金を出していますが、英語は出て来ない様子。
後記: 全作品の最後に上映。
ちょっと前にスキヤキ・ウエスタン ジャンゴとか言う作品があったなあ、あちらは見ていないけれど、十三人の刺客にそういうタイトルをつけてもいいんじゃないかなどと思っていたら、何とスキヤキ・ウエスタン ジャンゴも三池の作品でした。
侍物としてはいささか疑問のある描写が多いのですが、活劇としてはおもしろいです。オリジナルを見ていないのがちょっと残念。話をおもしろくするために、他所の国の要素を混ぜているので、マカロニ・ウエスタン、スキヤキ・ウエスタン程度の信憑性と思いながら見た方がいいです。その範囲ではおもしろい。
細かい点はドイツの人には分からないでしょう。例えば、切腹でも介錯がいる時といない時がある、なぜか尾張と言うと鉄砲隊が出て来る、悪い上司でも侍は契約破棄をして他の上司につくことができないなど。その辺は日本学を勉強してもらうしかありません。
英国で前々世紀に起きたバークとヘア連続殺人事件(= ウェストポート連続殺人事件)を元にしたホラー・コメディー。
予告を見る限り雰囲気は I Sell the Dead に似ています。
犯人はサイモン・ペグとアンディー・サーキス。被害者は17人。殺人の目的は医学部に死体解剖用の死体を売って儲けること。医学が発展、それまでの厳罰主義が緩和された(こそ泥程度でも死刑だった)などの理由から、既に死んだ人の死体だけでは足りなくなり、元気な人を殺して死体を売り飛ばした事件。サイモン・ペグが出るとおもしろいので見る予定。
後記: この日の体力の限界がこの時間に来たため、もう1度見直してからでないと正しい評価ができません。おもしろそうだったけれど。
ランディス本人は乗っていましたが、映画作りとしての乗りは、ブルース・ブラザースの域にはまだ少し距離があります。ただ、元気そうで上り調子に入って来そうな気配はあります。
ちょっとランディスと話す機会があったので、「音楽の映画を作る計画はあるか」と聞きました。具体的にはまだ無いようですが、本人も音楽が大好きで、是非また音楽映画を作りたいとのこと。私の方から念を押して、あなたの音楽関係の映画は光っていると言っておきました。お金を出す人さえ現われればすぐやりそうです。
戦争物。タリバンも絡む宗教と戦争の物語。重い内容のようですが、スリラー。
後記: ファンタに出る作品としては異色。ファンタであるということを無視するといい作品。一見「演技力なんか要らないじゃないか、ただその辺を駆けずり回ってればいいじゃないか」と思える役でありながら、実は結末に持ち込むためにかなりの演技力が要求される作品。なので、ガロがあちらこちらで賞を取るのは納得。主人公の台詞は無し。
B級ですが、このジャンルとしてはきちんと仕上がっています。ティーン向きで、ホラー性もちゃんと確保。加えてちょっと捻った所もあり、ドイツのカリガリ博士からもちょっと引用。
2001年の穴とは無関係の作品。
新居に住み始めた母子家庭の一家が地下室で深くて底の分からない穴を見つけて・・・という話。全然怖くないという前評判。
後記: 3Dは嫌い。できれば眼鏡無しで見たい。時々いんちきして眼鏡を外して見ていましたが、眼鏡が無くてもちゃんと見られるシーンも結構あります。
婚約者を殺された男が復讐を決意。韓国映画で復讐と聞いたのでえぐい話ではないかと危惧。
後記: ランディスのインタビューがあり、その後ちょっと本人と話す機会もあったのですが、すると次の映画の冒頭が欠けてしまうはずでした。ところが主催者が親切にも次の回の上映を少し延ばしてくれたので、全部見られました。
とは言っても20分ぐらい削ってもいい作品。冒頭でなく、後半の頭あたりで。いかにも韓国という感じのスタイルですが、こういのを外国に出すと国のイメージを損なうのではとちょっと考え込みました。国内ではガス抜きの機能が必要なのでしょうか。韓国事情をあまり知らないので何とも言えません。
1978年の悪魔のえじき(= 発情アニマル)のリメイク。元ネタの方は世界的に有名なキートンの身内が主演で、ポルノ扱い。リメイクは過激復讐暴力作品のようです。
後記: 所謂ゲバルト・ポルノ作品。オリジナルは本当のセックス・ポルノだったようです。リメイクはそこにはチラッと触れるだけ。重点はもっぱら暴力の方に置かれていました。インターネットの記事を見ると、暴力もセックスもリメイクは控えめにしてあるとこのこと。リメイクには一定の上品さが保たれています。気の弱い男性には向かないかも知れません。
主演女優と話す機会があったので、疑問をぶつけて見ました。主人公は前半酷い目に遭い、後半やり返すのですが、前半の犯人たちは彼女を殺さなかった、自殺に追いやりはしたけれど、彼女は死ななかった、後半の復讐では死傷者が出る、こういう時アメリカの法廷はどういう判断を下すのかということを聞いたのですが、彼女はそういう質問を予期していなかったようで、本人も考え込んでいました。
もし日本でコンクリート殺人事件の女性がぎりぎりのところで生き残り、犯人を殺したり、重症を負わせたら、刑務所送りになるだろうか、それとも彼女が受けた被害と相殺されるだろうかという点です。ドイツ、アメリカ、日本で違う結論になるんだろうかなどと思ったので聞いてみました。
非常に暗い話なのに、主演女優がとても陽気だったので、驚きました。作品でもやせて見えますが、ほっそりしていて美人です。握手をしたのですが、手も細く、私の手の方が大きかったかも知れません。
東欧系の犯罪者がある家族を人質に取り、金を出せと脅すが、家族は凶暴性むき出しでやり返すそうです。
後記: 私が Michael Hanneke in action. と言ったら大賛成してくれたドイツ人がいました。今回のファンタの中では1番低い評価。ジャンルをきちんと守っており、俳優はきちんと演じており、盛り上げ方も上手いなど、映画作りの能力は今回の10本の中でも上の方の評価。それでも最低作品賞に輝くのは、映画が目指している考え方のため。
監督の映画作りの能力は長編をもう何度も作った人と比べてもかなり高いレベル。なので、もっと違う方向の作品を作ったらいいのにと思います。
監督はソウ・シリーズを作りまくった人。
性質の悪いサディスティックな家族が、子供の頃住んでいた家に戻り、そこの住人を意味も無く苦しめるという話だそうです。予告を見ると何かを恨む、やたら目のすわった女性が主犯で、人質を取り、1人ずつ苦しめながら殺して行くようです。いかにもソウ・シリーズの人らしいプロット。あまり見る気しないなあ。
後記: 作品のレベルは、ジャンルが違うけれどスパイダー・パニック!程度。その枠ではきちんと納まっている。売りは母親役の女優、あるいは彼女の役。
トロールという言葉を知らないと冒頭で躓くのでちょっと注を。北欧に伝わる伝説の妖精。色々言われるので地方によって大男とされたり、小人とされたりします。変幻自在なので姿も物語りによって様々。大男で怪我をしてもそのうち治るというのが一般的な話。日本でもフィクションに使われたことがあります。
・・・っとまあ、ノールウェイ人がこういう伝説を信じているというのが前提で話が進みます。
ある農場で家畜などが消える事件発生。事件を追う人がトロール・ハンター。その後をブレア・ウィッチ・プロジェクト風に追う学生たちのプロジェクト・チーム。と言うことはいんちきドキュメンタリー風の作り。
退屈で居眠りが止まらないという話から、B級のパクリぶりを観察するのがおもしろいという話まであるので、見てみないと判断できません。
内緒の話: 私もコロボックルの話を信じているので、ノールウェイ人がトロールの話を信じても許しちゃおう。それに最近ではウンタマギルに出て来る、キジムナーの存在も信じております。
後記: 2日目の体力の限界がこの作品の時に来てしまい、殆ど集中できませんでした。会場の反応を見るとこの作品が今回の10本の中で最高だった様子。私はDVDを借りて見直さなければなりません。
久々にハマー・フィルムが作る作品。
娘を狂犬に殺された両親が、娘を蘇らせられると聞いて妙な宗教の儀式に行きます。キリスト教ではない様子。どうやら両親の望みはかないそうなのですが、その後どうなるか・・・。
後記: このジャンルの物としては合格点。現代のハマー・フィルムと考えても合格点。
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