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アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ /
I Spit on Your Grave /
Doce Vingança /
Escupiré sobre tu tumba

Steven R. Monroe

2010 USA 107 Min. 劇映画

出演者

Sarah Butler
(Jennifer - 作家)

Jeff Branson
(Johnny - ガソリン・スタンドで働く男)

Andrew Howard
(Storch - 保安官)

Daniel Franzese
(Stanley - ガソリン・スタンドで働く太った男)

Rodney Eastman
(Andy - ガソリン・スタンドで働く男)

Chad Lindberg
(Matthew - やや知恵遅れの鉛管工)

Tracey Walter
(Earl - ジェニファーに小屋を貸した男)

Mollie Milligan
(ストーチの妻)

Saxon Sharbino
(Chastity - ストーチの娘)

見た時期:2011年3月


悪魔のえじき / 発情アニマル /
I Spit on Your Grave /
Day of the Woman /
Blood Angel /
Blood Force /
The Rape And Revenge Of Jennifer Hill /
Horror Weekend /
I Hate Your Guts /
Ich spuck' auf dein Grab

Meir Zarchi

USA 1978 101 Min. 劇映画

Camille Keaton
(Jennifer Hills - 作家)

Eron Tabor
(Johnny - ガソリン・スタンドの男)

Alexis Magnotti
(ジョニーの妻)

Tammy Zarchi
(ジョニーの娘)

Terry Zarchi
(ジョニーの息子)

Richard Pace
(Matthew Lucas - 知恵遅れの青年、食料品店の配達係)

Anthony Nichols
(Stanley - 失業者、ジョニーの友人)

Gunter Kleemann
(Andy - 失業者、ジョニーの友人)

見ていない

2011年春のファンタ参加作品

このコーナーではこれまでポルノ・スターにはちょっと触れましたが、ポルノは扱って来ませんでした。ところが今度のファンタがきっかけでポルノにぶつかってしまいました。リメイク前のオリジナルはポルノだったそうです。タイトルは悪魔のえじきと言います。これですと普通のホラー映画のように聞こえますが、別なタイトルがあり、そちらは発情アニマルと言います。こちらはいかにもポルノっぽいです。

主演が名門。あのバスター・キートンの身内のカミール・キートンです。作品はしかしれっきとしたポルノだそうです。

悪魔のえじきは見ていませんので、他の記事から情報を得てのご紹介。実話をベースにしているそうです。

新人女流作家のジェニーがニューヨークから少し離れた田舎の別荘にこもります。付近は自然に恵まれた静かな土地。近くの町の男4人が彼女に目をつけ襲いかかります。ここまで短時間だそうで、そこから延々暴行シーンが続くそうです。観客がやれやれ終わったと思ったら、それは1ラウンドの終了で、その先2ラウンド、3ラウンドと続くそうです。暴力の暴行、性的暴行に加えて彼女の作品を愚弄するため、彼女は命以外は自信も名誉も自尊心も何もかもを失います。

捨てられたごみのようになっても何とか生き延びた彼女は2週間後から一人一人に復讐を始めます。ここからはポルノとは言っても、現代のドイツで言う所謂ゲバルト・ポルノ(= 強度の暴力映画)に変身。手口の1つは阿部定式。

今年の春のファンタは犯罪の被害者が自分でオトシマイをつけてしまうシリーズ。その中でも特にその傾向が目立つ作品の1つがリメイクの I Spit on Your Grave です。記事を読んだ限りではオリジナル版も同じ傾向があるようです。別荘、新人女流作家、ガソリン・スタンドなど全体の設定はオリジナル版と良く似ています。リメイク版はえぐさが抑えてあるような印象を受けますが、元の作品を見ていないので、解説を読んだ範囲での話。尤もオリジナル版のあらすじをを読んでしまうとあまりリメイクに食指は動きません。ファンタに出ていなかったら、自分からこの作品を選ぶかは疑問。オリジナルの話の範囲では際物とかゲテモノ扱いされても仕方ない作品に思えます。

★ 実話部分

オリジナル版を作るにあたって、監督自身の経験が元になっています。監督と知り合いの2人がある日若い女性を発見。その女性は近道をしようとしたら、男に襲われたとのこと。先に病院に連れて行ってから、警察に連絡すればよかったらしいのですが、どうも順序が逆になったらしく、被害者の女性が警察でも良くない扱いを受けたようなのですが、この辺はあまりはっきりしませんでした。いずれにしろ女性が酷い目にあったのを目の当たりにしたことが映画製作のきっかけになったそうです。とすると良かれと思って作ったことになりますが、結果はポルノ扱い。

★ リメイク

リメイクはポルノと呼ぶにはいくつかの要素が欠けています。ゲバルト・ポルノと呼ばれるにはまあ条件を満たしていると言えるかも知れません。男性の立場に立つと感じ方が違うかも知れませんが、まあファンタの守備範囲内とは言えます。

★ ざっとストーリー

上に紹介したのとほとんど変わりませんが、まあちょっとご紹介。

都会から新人作家のジェニファーが田舎に来ます。小屋を借りて、そこで新作を書く予定。町には恋人もいます。到着の少し前、ガソリン・スタンドで従業員やその友達と言葉を交わします。到着するとラップトップを開き、仕事。時々ワインを飲んだり、ジョギングに行ったり。自然の中でゆっくりしながら新作をと考えました。

ここでオリジナル版では都会のスマートな女性と、田舎で失業気味の若者の差がはっきり示されているそうです。そうなると制作の意図は、ひどい目に遭った女性の立場の代弁と同時に、Eden Lake 的なタッチも含んでいるようです。そう言えばリメイクのポスターの女性の姿には Eden Lake を思い出させるような所もあります。

借りた小屋は家具付きですが古く、流しの調子が良くありません。なので修理のための鉛管工が来ます。直ったのを喜んでジェニファーは彼に軽くキス。他意はありませんが、田舎の青年はびっくり。キャストのリストを見るとここで登場する田舎の青年マシューはオリジナル版では店の食料品を客の家に届ける役となっています。要するに、用事が何であれ彼女と最初のとっかかりを作る理由がマシューに与えられています。

まだ到着して1日か2日しか経っていないある日、ガソリン・スタンドでたむろしていた若者に押し入られ小屋で襲われます。ようやく逃げ出し、ちょうどそこにパトカーで来ていた保安官に助けられ、現場確認のために小屋に戻ります。ところが保安官もグル。と言うか、主犯のようにすら見えます。そしてちょっと知恵遅れの鉛管工もグル。グルと言うか、彼は無理やり彼女を暴行するように仲間から強制されます。そんなこんなで身も心もズタズタ。外へ逃げても追いつかれてしまい、最後に彼女は橋の上から川に身を投げます。

キャスティングのリストを見る限りオリジナル版にはドイツ語の名前を持った保安官の名前は無く、これはリメイク版で新しく作られたようです。ですので、オリジナル版では恐らくジョニーが主犯でしょう。リメイクではこの保安官が1番の悪で、ジョニー役と思われるスタンリーは保安官の下ではボス的役割を持っています。

リメイクを見る限り上下関係が重要で、冷酷な目をして普段は冷静な保安官が1番上、比較的冷静なスタンリーがその次、その下にこの2人よりやや間抜けに見える男がいて、男の中では1番下がマシュー。弱い面を見せると男たちの順列では下に置かれてしまうようです。そして欲求不満がたまっている男たちが強さを示したいので上から中へ、中から下へ、下から最下位へと力を見せ付けて行きます。で、マシューは男の間では普段苛めに遭っています。そこへ女が1人現われると、ボスの女にでもなるめぐり合わせになるか、男たちの餌食になるかです。と言うわけで彼女は最悪の状況のど真ん中に立つことになります。

使えるだけ彼女の体を自分たちの欲望のために使ってしまったら殺して森のどこかに埋めてしまうつもりでいた一味は彼女の死体を発見されては困るのでうろたえ、川や付近を捜しますが、見つかりません。

ここからどのぐらいの日が経つのかははっきりしませんが、それほど長い時間は経っていないある日、最初の復讐が始まります。彼女は生きていて、体もかなり元気になっており、頭ははっきり。男を1人ずつ殺して行きますが、簡単には死なせません。1人は鳥に目を突かれ盲目に。1人は強い酸かアルカリの入った風呂桶の上に置かれ、自分の体が支え切れなくなった時には頭を風呂桶に突っ込まざるを得ないポジションに固定。長くは持たず、男は生きたままその水の中へ・・・。

もう1人は安部定式にやられ、いずれ出血多量で死ぬように放置されます。

最後は2人。主犯格の保安官にたっぷりお仕置きをし、マシューを気絶させ、彼の手首に紐を結んでおきます。その紐の別の端は警官の方のショットガンの引き金に結んでおきます。もしマシューが目を覚ましたら引き金が引かれてしまう仕掛け。マシューだけは本人の強い意志で行った犯罪でないためか、ジェニファーは彼には断末魔の苦しみは与えません。

と言うわけで全員死亡か取り返しのつかないほどの重症になります。人里はなれた田舎の小屋なので、当分人に見つからないでしょう。なので恐らくは全員死亡。

★ エピローグが無い

・・・と話はここで終わるのですが、推理小説などを読む人にはちょっと不満が残ります。

まずあれほど酷い目に遭った女性がこんなに短時間で回復するのかという点。オリジナルでは2週間だそうですが、リメイクもそれほど時間は経過していません。橋から落ちるところでは彼女は精神的な傷も深いですが、肉体的にも結構怪我をしていたりするので、あのまま人知れず回復するのはちょっと無理。

病院に行けば暴行の被害者だとすぐ分かるので、本人が何を言おうが警察に通報されます。裸に近い状態だったので、遠い所の病院に行くのは無理。そうなると保安官には知られてしまうはず。

服も、携帯も、財布も無い彼女が数週間のうちにすっかり元気になって、男たちの近くに潜みながらチャンスをうかがうというのは話に無理があります。連絡が無ければ恋人が不審に思って探しに来るかも知れません。恋人に何があったか分かったら、彼が警察に通報するでしょうし、彼女の復讐を許すとも思えません。プロットが甘いです。あのままエピローグをつけずに話が終わるのは、こういった事にきっちりけりがつけられないからではないかとかんぐりました。

★ オリジナル版を作った時

キートンの演技が迫真、一味の演技もまるで本人そのままという印象だそうです。なので、監督はそういう人物を集めて来て自然に演技させたのではないかとかんぐっている記事を目にしました。私はポスターも見ていないのでその辺は判断ができませんが、この作品を作った時点ではキートンと監督は結婚していたようです。妻でもないと頼みにくい役だったのでしょうか。映画の世界には時々極端な人もいますから、まあ、そういう話もありなのかも知れません。

★ 主演女優に聞く

実はこの日リメイク版の主演サラ・バトラーが来ていました。舞台に上がり、私は映画館の真ん中あたりにいたので、結構距離があったのですが、それでもかなりの美人に見えました。舞台では司会者や観客の質問に答え、共演者が「カット!」となると親切にしてくれたり、優しい声をかけてくれた、時にはリラックスできるようにマッサージを呼んでくれたとか話していました。この辺はどうもオリジナルとかなり違うようです。

バトラーは舞台の上ではこんな映画にふさわしくないほど陽気で明るい感じの人。始終ニコニコしている上、本人の気持ちもさらっとしてこだわりの無い人のようでした。なので共演の凶暴な男の役をやる俳優と楽しく談笑したという話もあながち宣伝のための嘘ではなさそうでした。しかしそういう明るく楽しい雰囲気になってしまっては困る作品なので、プロらしく「用意、アクション!」となると、背筋が寒くなるような悪漢に化けたのでしょう。

インタビューが終わってからファンにサインをするというので出かけて行きました。前日のジョン・ランディスと同じで、私はこの日もサインより、聞きたい事があって出かけて行きました。

映画の筋をたどるとジェニファーは自分が襲われた直後そのまま警察に行き、病院で診断書を貰い、日本の法廷に出れば、文句無く襲った男たちが有罪になるような状況でした。しかし彼女はその後男たちを全員殺しています。なので捕まるのは彼女の方。

正当防衛ではなく、計画的な殺人なのでアメリカだと第1級殺人。日本ですと犯行の動機に情状酌量の余地があるので、1人ぐらいならもしかしたら無理をして執行猶予になるかも知れません。しかし5人を明らかな殺意を持って扱っており、恐らくは放置された男たちは発見された時には死んでいるでしょう。

映画の観客の間では過剰防衛という話が出るかも知れませんが、検事や弁護士の間ではおそらく暴行を受けた後、彼女が回復し、しっかり計画を練って殺しているので、心神喪失とも言いにくいし、その場でやり返したら死んでしまったというケースでもないので、過剰防衛には当たらないと思います。するとあれほど酷い目に遭った彼女が、虫けらのような酷い男たちを殺したかどで死刑または80年とか100年などという懲役刑。よほど腕のいい弁護士を連れて来ても何かしらの刑になってしまうでしょう。

同情の余地のある女性が復讐をした時アメリカの裁判所はどう判断するのか、男たちが彼女を殺す前に彼女は川に飛び込んだ(自殺のつもりかもしれない)、つまり男たちは手を下していない、逆に彼女は手を下した。アメリカの法廷では彼女は有罪になるのか、執行猶予は考えられるのかと聞いたのです。

すると意外な反応が返って来ました。バトラーは「自分はまだその視点で考えて見なかった。どうなるのか分からない」とのことでした。質問の視点をおもしろいと思ったらしく、後ろにサインをほしがる人が長々と並んでいるのに暫く私と話していました。もしかしたらアメリカに帰って誰かに聞いてみるのかも知れません。

目の前で見、握手をしたバトラーは私よりちょっと背が高く、非常に華奢な体つきで、手はとても骨が細かったです。この体であの役を演じるのは大変だったろうと思います。どちらかと言えばファッションモデルかと思えるほど華奢です。ですからあんな大男を担いだりできるわけはありません(笑)。カメラに映ると俳優は太めに見えてしまうので、皆ダイエットに励んでいると聞きましたが、まさにそのいい例です。商売とは言えこぼれるような笑顔はとても印象的でした。

参考作品: リップスティック (1976年、悪魔のえじきの2年前制作の《自分でオトシマイ》作品)

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