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USA 2012 82 Min. 劇映画
出演者
Selma Blair
(Abigail Clayton - 資産家の跡継ぎ)
Beau Bridges
(Raymond Fontaine - アビゲイルの主治医)
Amy Smart
(Lillian Hart - 新しく引っ越して来た女性)
Jason Lee
(Charles Stratford - リリアンの夫)
Giovanni Ribisi
(Frank Giardello - 刑事)
Jason Antoon
(Jerry Eaans - 刑事)
Kevin Pollak
(Klandermann - アパートの従業員)
Jerry Penacoli
(Jerry Penacoli)
Robert Guillaume
(Howard Miles)
Samm Levine (銀行員)
Bubba Ganter (ドアマン)
見た時期:2012年8月
★ 監督、脚本家、プロデューサー
監督は映画を8本撮っていて、脚本はその倍ぐらい書いている人です。多才な人で趣味も多く、芸術関係では映画のみならず、グラフィック・デザイン、音楽などにも手を出しています。その影響か、撮影では美的感覚が伝わって来ます。
タイトルはポルトガル語の方が分かりやすく、文字通りニューヨークの一等地コロンバス・サークルという場所にあるアパートが舞台です。脚本はケビン・ポラックと共同で書いています。お金を出しているのが、出演もしているケビン・ポラック、ジョバンニ・リビシ、ジェイソン・リー、音楽担当のブライアン・テイラー。お金と口を出すプロデューサーというのもついていますが、直接制作に関わっている俳優がお金を持ち寄って作ったという感じです。
ただでさえ俳優は不本意な作品の不本意な役を押し付けられたりすることもある中、さらに大不況の昨今、それでもこの人たちは自分で満足できる作品を作ろうと試みたのでしょう。全体の調和が取れていて、スタッフとキャストが良く理解し合っている雰囲気が伝わります。こういう風に映画作りを続けて行くと、生き残れるかも知れません。今後もこういうティームができて、見ごたえのある作品を作ってくれればと思います。
★ あらすじ
中心になる人物はアビゲイル・クレイトン。十分世間で通用する魅力的な女性なのですが、子供の時のトラウマが原因で広所恐怖症になり、20年近くニューヨークの一等地の高級なアパートに閉じ籠ったきり一歩も外へ出て来ません。似たような状況に追い込まれた女性を以前コピーキャットでシゴニー・ウィーヴァーが演じていました。
アビゲイルは大コンツェルン、ウォーター財閥の跡継ぎの女性なのですが、18歳の誕生日、遺産相続と同時に突然姿を消し、その後公の席に全く姿を現わさなくなっていました。彼女の正体と資産の状況を承知しているのは主治医のみ。外の世界とは直接接触を避け、用がある時はアパートの従業員に手紙を通して頼むか、主治医に電話をかけています。
そういう出来事を経た後の現在、20年近く人の目に触れず生きて来たアビゲイルの生活が大きく変わる出来事が起きます。向かいのアパートの老女が死亡。警察は事故か他殺か決めかねて、関係者に事情聴取を始めます。担当するのはジアルデロ刑事。当然ながら向かいに住んでいるアビゲイルの所にも刑事が訪ねて来ます。長い間人と直接会ったことが無かったアビゲイルの戸惑いを理解しながら何とか話を聞きだしますが、これと言った進展はありません。
老女の部屋にはその後若夫婦が引っ越して来ます。夫のチャールズは金持ちですが家庭内暴力男。妻のリリアンは時々殴られているようで、アビゲイルもその事に気づきます。ある日リリアンは身の危険から逃れるためにアビゲイルに助けを求め、アビゲイルの部屋に緊急避難。2人は知り合いになります。
老女の死の事情を調査中の刑事が老女の主治医を訪ねると、その人物はアビゲイルの主治医でもありました。
チャールズとリリアンは実はアビゲイルの財産を狙っている詐欺師。主治医と共犯で、まず老女を殺し、その部屋を2人に与え、リリアンがチャールズの暴力を口実にアビゲイルの部屋に出入りできるように仕組み、2人はアビゲイルの口座番号などを盗み、口座から大金を掠め取ろうと考えています。そのトリックの一環としてチャールズがアビゲイルの部屋までリリアンを追って来てリアルな演技をしていたのですが、アビゲイルはチャールズがリリアンを殴るのを見て(リリアンが苦しめられていると信じて)激情に駆られ、ナイフでチャールズを刺し殺してしまいます。
全くの番狂わせですが、リリアンはそれにもめげず詐欺を続行。
最初から数えると死者はここまでで@部屋を確保するために殺された老女、Aチャーリーとリリアンの犯罪に気付き、恐喝しようとして逆に殺されてしまうアパートの従業員、C芝居中に間違ってアビゲイルに殺されてしまうチャーリー。後半に入り、特に頭が切れるようには見えないものの着実に調査を進める刑事がアビゲイルと老女の両方に関わっていた医者にたどり着きます。危険を察知した医者はチャーリーとリリアンに撤退を提案。ところがBチャーリーたちは計画続行を決め医者の口を封じるために殺してしまいます。そしてチャーリーも前述の通りその後すぐアビゲイルの予想外の反応のため死んでしまいます。一味で残るはリリアンのみ。
チャーリーが死ぬ直前リリアンとチャーリーは争っているふりをしながらアビゲイルのアパートに押し入って来て、アビゲイルの口座の情報を取ってしまったのですが、アビゲイルはチャーリーの死後すぐコンピューターに飛びつきます。リリアンは取った情報を手に、アビゲイルに似た姿に変装してアビゲイルの口座のある銀行へ向かいます。
銀行で偽アビゲイルに応対する銀行員は何だかんだと時間を取ります。偽アビゲイルに気付いていてわざとゆっくり作業をしているのか、銀行として身元をきっちり確認する規則になっているのか、普段絶対に本人が現われないのにこの日(偽)本人が現われたので驚いているのかが分かりにくいですが、スリルのあるシーンです。ここまではヒッチコックの現代版のような雰囲気で進んでいたのですが、ここに来て全盛期のブライアン・デ・パルマ的な時間が迫る中でのスリルがうまくかもし出されています。
銀行員がぐずぐずしている間にアビゲイルは自宅からコンピューターを使ってオンライン・バンキング。小金だけを残して口座を空にしてしまいます。同時にプレスに「引きこもりのアビゲイルが銀行に顔を出している」という話を流したため、銀行の前にジャーナリストなどが集まり大混乱。リリアンはアビゲイルの口座の全額を手にしたと思ったのですが、銀行員が言う金額にびっくり。そして銀行の外に出たとたんに大勢の人とカメラの前で逮捕。
警察はアビゲイルのアパートで死体が発見されているので偽アビゲイルは向かいの住人を殺した容疑で逮捕。後で CSI ニューヨークが DNA などを検査したら誰が誰なのかは正確に分かるでしょうが、それまでは取り敢えずリリアンが化けた偽アビゲイルが殺人罪で捕まります。警察署で鬘でも取ればそれがリリアンであることがばれ(アビゲイルは黒髪、リリアンはブロンド)、すると今度は医者を殺したのがリリアンたちだという事がばれて、1週間もすれば、そこに欠けているのは本物のアビゲイル1人だという事が判明するでしょう。
それまでにアビゲイルは誰も彼女を知らない場所に高飛びしているでしょう。もしリリアンが正直者ならアビゲイルがチャールズを殺したのは芝居中のリリアンを助けなければと思い込んだためということになって無罪放免になるかも知れませんし、そうでなくても国外に逃げてしまえば捕まることはまず無いでしょう。お金はたっぷりあるのだし。
★ しゃれた作品
厳密に言えばいくらかプロットに穴もありますが、一応スリラーとしては佳作と言えます。それをさらに魅力的にしているのは全体におしゃれな雰囲気にあふれている点。
★ 不作の年に輝いた1作
今年のファンタはぱっとしない年でしたが、数作輝いた作品がありました。そういう作品は一見地味なのですが、探偵小説のベテランにもショーダウンの予想がつかないような凝った脚本な上に、衣装、セットと出演者のバランスが良かったり、大袈裟過ぎずかつみすぼらしくもない出来です。普通はコンビを組んでいる作品と同等のレベルが多いのですが、今年はそうではなく、ひっそりプログラムの片隅に隠れていたりしました。
コロンバス・サークルは土曜日の午後1時という場所で、2つめの映画館で上映。今年は去年と同じく2館上映だったのですが、2館目はファンタ専用貸し切り状態。しかもベルリンで1番大きなスクリーンな上にベストの音響。しかし初めて使われたため、ファンタの観客には、去年と同じく《副》扱い。プログラムにも2つ目の館として載っています。実際にこの館を使ってみると、こちらの方が居心地も良く、ロビーをうろついているのはファンタの観客のみ、テラスもついていて、ゴージャスです。しかしまだそうだと分かっていなかったので、もう1つの上映作品に比べやや不利な印象でした。
土曜日と日曜日は会社が休みの人が多いので通しのパスを買っていない人も参加できる上、年によっては1本多く上映したり、長時間上映したりする日ではあるのですが、通しのパスを買った人が、一休みするために土曜日の1本目をパスしたりもします。なので、スルーされてしまう事もあります。
私は体が本当にきつくなったら休もうと思っていましたが、この日はまだ全部通しで見ることが出来ました。主演がセルマ・ブレアだったこともあり、見られるなら彼女を選ぼうと思っていました。今年2本に出た俳優が何人かいたのですが、セルマの作品は主演で2本来ていました。両方を比べるともう1つの方は欝っぽい作品、こちらは広所恐怖症の主人公。どちらもややノイローゼっぽい役です。彼女はそういう役が押し付けられる傾向があるようですが、ヘルボーイのように好感の持てる《悩める乙女》の役もありました。解説を読んでみるとコロンバス・サークルの方がおもしろそうな役だったのでこちらを取りました。
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