映画のページ
2013年3月23日 - 24日
2日目も気温は下がったまま。会場の換気が良くないので、休み時間に必ず1度外に出ないと映画を見ているうちに眠くなってしまいます。
1日目に血の滴る作品が集中し、2日目はそれ以外のジャンル。前日より多少ましなレベルでしたが、大感激する作品はありませんでした。以前は春のファンタにもかなり出来のいい作品が混ざっていたものですが。良い作品が制作されなければ主催者の選択の幅が狭まってしまいます。映画界だけずっと景気が良かった時代も終わりです。今後は作る側が知恵を絞って良い作品を少数でもいいから確保できればと思います。去年の夏数は少なかったですが、俳優も資金を出して納得の行く脚本で撮った作品が出ていたので、今後もそういう作品に期待したいところです。
普通この時期は小春日和で、イースターに入る直前なのですが、今年は3月に入っても雪が多く、それでも気温はせいぜい氷点下5度ぐらい。それがファンタに入ると突然氷点下10度になり、少し風も吹いています。こういった天気は普通クリスマスの後から2月ぐらい。今年は異例です。
今年の作品は初日の5本は質ががた落ちで、ファンタらしく一定の質を保っているのは1本のみ。日本の作品は短編は日本では公開できないように作られていて、国の評判を海外で落として歩き、日本人は知らないという結果になりました。長編は日本人の監督英語圏の俳優でしたが、やはり質が悪いです。脚本の段階でファンタ全盛時代ならはねられていたような作品です。
去年もどこかで書いたかと思いますが、市場に良質の作品が出なければファンタのスタッフも買い付けができず、低質の作品で我慢しなければならないわけで、今年もそういう事情なのかも知れません。
去年の夏のファンタに出た良い作品は作品としては良かったですが、カンヌやベルリン映画祭向きだと言いました。恐らくあの時もファンタで典型的なジャンル、ホラー、ミステリー、SF で良質の作品が少なかったため、こういう作品も引っ張って来ざるを得なかったのではないかと想像しています。ま、作品や主演でオスカーにノミネートされたので、あちらの質は世界で認められたようですが。
さらに追加が出ました。合計10本になります。
追加が出ました。両日で7〜8本になると思います。なので本数ではそろそろ打ち止め。内容は分かり次第更新します。
またファンタのシーズンです。4本参加作品が発表になりました。久しぶりにファンタが大好きなドン・コスカレリも参加します。来伯してくれればいいのですが。日本からはやはりファンタだ贔屓にしている北村龍平も来ます。
Ingrid Bolsø Berdal, Erik Aude, Fraser Corbett, Dallas Malloy, Iván González, Kyra Zagorsky, Peter Pedrero, Darenzia, Lee Hardcastle, Lucy Clements, Chems Dahmani, M@tch, Xavier Magot, Matías Oviedo, Eva Llorach, Manon Beuchot, Miguel Insua,
Martine Årnes Sorensen, Yoshio Komatsu, Joshua Diolosa, Kim Richardson
アンソロジー、ホラー
いかにもデフレという感じの作品。短編26本。日本からも参加。
後記: 初日の最終。良い作品はほんの2、3本。あとはしょ〜もない作品ばかり。日本の作品は一部映倫に引っかかるように作られているので、国内の公開はその部分をばっさりカットするか、画面の大きな面積をぼかしにしなければ無理。東北大震災をコケにするようなシーンが入っていたり、国旗や宗教を下品に扱っていたりで、最近の国の方針とは真っ向対立します。見ていて不快感を覚えました。ここまで品を落とした作品を見たのは初めてです。
監督は女性の双子。エピソードの一部に俳優としても登場。
貧乏な医学生の女の子が学費を稼ぐためにいかがわしい所でアルバイト。ストリップ小屋で応募の面接中に怪我人が運び込まれたため、急遽人命救助。謝礼として5000ドルも貰ってしまう。最初は怖がっていた彼女、だんだん元気になり、その世界に踏み込んで行く。手始めはもぐりの整形手術。謝礼は10 000ドル。ところがある日本業の医学部の学業の方で教授に泥酔させられ暴行されてしまう。周囲も承知の出来事で、時々カモにされる女学生がいるらしい。最初はストリップ小屋に出入りする人間だけが変態かと思っていたら、れっきとした医者の世界も大して変わらないことを悟る彼女。ストリップ小屋に出入りする人に手伝ってもらい、教授に復讐。話はそんなことでは収まらず、彼女はどんどん脱線。
後記: 妙なテーマではありますが、俳優の質、撮影、プロット、扱っているテーマでバランスの取れた作品で、ヒットの可能性があります。これを冒頭に持って来たので、2本目からさらにレベルが上がるのかと思ったら逆で、この後この日は質がどんどん低下して行きました。
有名な監督ですが、ファンタに出ない人です。 2009年7月4日の独立記念日。チェサピーク湾に沿ったメリーランド州の小さな町で、魚に寄生した謎の生物が大量発生する。寄生生物は人体に入り込み疫病の蔓延を惹き起こす。さらには病死した人々の脳を操りゾンビに変貌させていった。「レインマン」「バグジー」のバリー・レヴィンソン監督の描くモッキュメンタリー風パニック・ホラー。
タイトルは《城塞》という意味で、ベルリンではお馴染みの言葉。町はずれに建てられ、町を守る役目があります。城主が住むこともあります。日本で《お城》と呼ばれている建物の中には城塞と似た建て方の物があります。あとは地理的に見てどこに建っているかで分類されるのだと思います。ベルリンにあるのは Zitadelle とだけ呼ばれていて、ベルリン側から見ると町の西の端っこにあります。正式には Zitadelle の後に建っている場所の名前がついています。建てられたのは1559年頃からの30年ちょっと。織田信長の時代です。
何でこんなタイトルなのかと言うと、監督に自分映画を作るきっかけになった体験があるから。未成年の集団に襲われたためその後家に引き篭もってしまったそうです。
映画では監督と同じように少年たちに襲われ、主人公の妻が殺されてしまいます。牧師と一緒に残された娘と自分を守ろうとしますが、そう簡単に行くわけがなく、だからこそ映画にするようなドラマに発展。作中の引きこもりシーンは監督の当時の気持ちをよく現わしているそうです。恐怖の源は一般人の常識が通用しない少年たちの考え方。
後記: The Seasoning House で監督デビューしたハイエットがメイクのスタッフとして参加しています。以前ファンタに出た狼たちの処刑台を始め多くの作品で裏方をやっていた人です。初日に会場に顔を出していましたが、普段のファンタの招待監督に比べ質問も低調で、時間があっても人がサインを求めて列をなすことはありませんでした。
Citadel は盛り込むテーマを欲張り過ぎて虻蜂取らずになってしまった作品。狼たちの処刑台のスタイルを取り入れて、底辺の社会問題を扱いつつ、ゾンビ映画かと思わせ、実は親の世代が子供の教育を放棄したという展開になり、冒頭から主人公が広所恐怖症と戦う姿、生まれたばかりの娘をシングル・ファーザーとして育てようとする姿もたくさん盛り込まれ、その上最後こういう生き方をしていた人たちがこういう解決法でいいんだろうかというショーダウン。犠牲者も出ます。
狼たちの処刑台はここまで盛りだくさんにせずテーマの一部は暗示する程度で抑えたので Citadel より納得の行く仕上がりでした。
金持ちの娘が新しいクラブができたというので誘われてイベントに出かける。
来ていた数十人の客はイベントを企画した男の罠にはまり、殺される運命。会場全体が殺人マシンと化して、金持ちの娘以外は全員死んでしまう。生命は助かるものの、犯人に囚われてしまう。連れて行かれた別な場所も建物全体が殺人マシン。そこに連れ込まれても運良く助かった人物がおり、彼女の父親がその男に依頼して、娘を助けようとする。金に任せて屈強な護衛もつけてくれるので、助かった男は犯人と対決する決心をする。
話だけを聞くとソウのバージョンアップのような感じです。
後記: 初日に上映。この日1番最初に1番出来のいい作品が出てしまい、後は質が下がる一方でしたが、その中では2番目に出来のいい作品と言えます。俳優のバランスはまあまあで、主演の女性、救援隊のチーフ、父親は合格点。他も非難するほど悪くはありません。撮影はテレビぐらいのレベル。テーマがあまり意味が無い感じがするのであほらしいという気持ちがどこかに残ります。ふざけるなら徹底的にふざければいいですが、この作品はまじめな面もあり、それと犯人の目的がミスマッチ。ただ、ソウほど根性がねじれた作品ではありませんし、登場人物がそれなりに頭を使って考えるので、ソウより僅かに高い点をつけました。
舞台はカタロニア。時代は2つ。 60年代のスペインの内戦の頃痛みを感じない子供たちに物理的な痛みを加えて治そうと試みる話。時は飛んで現代のスペイン。有能な脳外科の医師が骨髄移植のため実の親を探していて、この過去の出来事に行き当たります。
後記: 場所、時代の関係でデビルズ・バックボーンを思い起こさせる作品。
この作品もテーマを盛り込み過ぎて観客の気が散ってしまう作品。扱う時代が長く、現代から何度も過去の違う時代に戻るのですが、観客にその時代の知識が欠けていることもあり、監督の意図が十分に伝わっていない印象をぬぐえませんでした。監督自身はかなり壮大な計画を立てて作ったようです。
フランコ、ナチ、戦後でまだフランコが生きている間などのよその国の政治背景の知識を若いドイツ人がどこまで持ち合わせているかによって作品の理解度がかなり左右されます。フランコがいつ死んで王政に戻ったかを年配の人に聞いても思い出せない人が多いです。私もフランコの末期から王室が新体制の準備をしていたことは当時の報道で知っていましたが、日本での報道。ちなみにフランコの死亡は1975年。
ドイツは戦時中スペインにも進出していましたが、スペインは大諜報戦の舞台になっていて、英国も舞台裏でかなり関与していました。例えば英国王のスピーチのシンプソン夫人とエドワード国王についてもスペインをめぐって有名なエピソードが残っています。
フランコには国内を統一した、ドイツに要求されて参戦するような顔をしつつしなかった、スペイン内の戦火を防いだという面の功績はあるかも知れませんが、それに伴う負の面が多く、直接参戦以外の形ではドイツに協力しており、独裁者として知られています。ヒットラーの時代に入る前に既にスペイン内で左遷や抜擢を経験し、政治手腕を磨いており、ヒットラー時代を生き延びた後、冷戦時代も良く状況を見抜いて生き延び、スペインの地位を国際的に着実に固めています。ドイツはトルコ、イタリア以外にスペインからも外国人労働者を入れていて、それがドイツ経済の急速な発展と同時にスペインの経済にも寄与していました。自分の後はファン・カルロスに継がせる事を生前から決めており、国が胴体着陸しないようにして現在のスペインに受け継がれています。ま、毎日目の前で戦闘が起きなくて済むことと、言論、外出などの自由の無い表向きの平和など歴史の評価は非欧州人の私があれこれ言うのはおせっかいなのでこの辺にしておきますが、主人公の行動が日本人としてはおやっと思わせます。
自分が重病で近い親戚からの移植が必要なため、両親を探し始めるのですが、まずは自分の両親に頼む態度が横柄。「協力はできない」と言われると非難がましいことを言い始めます。
実は彼は養子。それを知ると「これまで育ててくれてありがとう」という態度が薄く、「本当の両親の素性を明かせ」とこれまた横柄に命令口調で迫ります。言いたがらない両親を責めるような態度。
土壷にはまると言うと言い過ぎかも知れませんが、彼の本当の父親をたどるとそこに飛び出すのが戦時中やフランコ時代の暗い背景。スペイン人の医療機関、ユダヤ人のためドイツから逃れて来た医師、スペインの抵抗運動家、それを追うスペインの軍、勝手に入って来て偉そうな態度のドイツ軍などが入り乱れ、養子を取った両親が口をつぐむのもなるほどと言うような事態になって行きます。
たどり着く父親自身は特殊な体質なためフランコ時代に病院に永久監禁されてしまった子供の1人。この子供たちは生まれつき痛みを感じないため、極端な方法で体を傷つけても平然としています。それを危険と見なされ、病院に収容されてしまい、病院では研究が進みます。とは言っても体質の改善は無理なので、教育で自分や人の肉体を傷つけないように教えようという話になって行きます。
ところがその最中に政治問題がこの病院を引き裂くことになり、死者を多数出します。その中でかろうじて生き残ったのが主人公の実父。無事ご対面は果たすのですが、話をする間もなく、視線を交わすだけで父親と母親らしきすでに死んでいる女性の死体が燃えてしまいます。
私は最近の数年の間に重症の火傷と痛みを感じないという両方の事態を経験したばかりで、この作品を見ていて、「ちょっとねえ、あんな事本当にするんだろうか」という疑問を抱いてしまいました。この作品の背景が分からないので、実話を元にしているのかも不明。何かこう、すぐ納得して入って行くには説明が足りない感じがします。痛みを感じないというのはとても不自由な事なんですけれどね。近年はただの新型インフルエンザでもそんな事が起きてしまうので、皆さんお気をつけ下さい。
ファンタお馴染みのコスカレリ監督、久々の登場です。醤油が重要な意味を持つ作品だそうです。
後記: 前日ほとんど眠っておらず睡魔に襲われ、2人の若者があほな事をしているのを理解しただけ。
人質物。究極の状況で加害者と被害者の立場が反転。
後記: 北村はファンタでは評判の高い監督なのですが、おもしろいと思ったのはミッドナイト・ミートトレイン1作のみ。せっかくアメリカからお金が出て、英語圏の俳優を使えたのですが、出来上がりはさっぱり。日本人がアメリカの特定の地方のメンタリティーを解釈しつつホラー映画を作るのは無理だったのかも知れません。部分的には面白くなり得る要素も入っているのですが、サイコパスぶりも表面的です。ミッドナイト・ミートトレインのように1人の特殊な人間をテーマにして、国柄に触れない方が良かったかも知れません。どうしてもと言うなら、その地域に10年ぐらい住んでから作るべきだったかも知れません。
残酷映画にこれまでスタッフとして参加していた監督。
後記: 監督が来ていましたが、サイン会に列を作る人もおらず、質問に来る人もごくわずか。監督と言うのは普通作品を作る前に色々考えを巡らしてから仕事にかかるもの。出来上がった物については言い訳や余計な説明はせず、「皆さん、こういうのを作りました。見てください」というスタンスを取るもの。この監督はまだ監督業に慣れていないのかも知れません。
見ていて筋の通らないストーリーで、観客を不快にするために作るつもりだったのなら、ハネケやシャブロール監督に遥かに及ばず、普通の作品にするつもりなら、もう少し筋を通すべきだったと思います。主人公の女性が戦争に巻き込まれ、その後酷い目に遭い続け、最後もとんでもない人の腕に飛び込んでしまうという終わり方なのですが、そこに至るまでに嫌と言うほど殺人、暴力、麻薬、暴行などで酷い扱いを受ける女性たちを延々見せられます。監督のお楽しみがそちらにあって、それに合うストーリーを後から思いついたのかとかんぐりたくなるほどですが、監督の言によると実話に近いそうです。ここに描かれているような事件が実際にあったとの発言がありました。唯一おもしろかったのは主人公の身の軽さですが、劇中の描写を見る限り栄養失調に近い状態だと思われるので、あそこまで元気だとちょっと矛盾も感じます。
プリズン・ブレイクの弟だったウェントワース・ミラーが脚本担当。監督は韓国語でファンタに
復讐者に憐れみを、
オールド・ボーイ、
サイボーグでも大丈夫などで参加。
ストーカーが最初の英語作品。
他の人が感知できない事が聞こえる18歳の少女が父親を事故で失う。するとこれまで見たことも聞いたこともなかった叔父という人物が現われる。精神的に不安定な母親はこの男を同居させる。ちょうど家政婦がいなくなった時で、叔父は料理が上手なので都合がいい。しかし・・・と緊張の続く関係の中で追いかけっこが始まります。プリズンブレイクでノイローゼっぽい演技だったミラーが書いた脚本をあの身の毛のよだつオールド・ボーイの監督が演出し、ヒッチコックに気に入られそうなブロンドのキッドマンが主演となるといらいらするだろうなあと思っているところです。
後記: 今年の春のファンタの中では比較的出来の良いスリラー。キッドマンの使われ方が相変わらずで、彼女は演技ができないのか、あるいは美しい姿を見せるだけでいいという選出をされてしまったのか分かりません。彼女は撮影現場であまり監督と演技のことで議論をしない人なので、本を渡され、言われた通りやったらああなったのかも知れません。もっとも彼女が美しくないと作品の意味をなさないので、そこは良く理解してやっています。
得な役はキッドマンの娘を演じたミア・ワシコフスカ。多感なティーンエージャー、突然生活に入って来た叔父に疑いの目を向ける、母親と何かにつけ揉めるといった役を良くこなしています。
物凄く深いミステリーではないのですが、ちゃんと納得する伏線が張られていて、ヒッチコック程度のレベルには達しています。キッドマンの使い方などを見るとヒッチコックを意識しているなあと思えます。
脚本が良く書けているので、その本を貰って演出することができた監督は幸運。ちなみに作品には全くアジア色は無く、英語圏のスリラーとして通ります。
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