August.24,2003 ワイ・カーファイとの共同監督作を整理してみよう
今までに公開されたジョニー・トーとワイ・カーファイの共同監督作品を整理してみよう。
『Needing You』
アンディ・ラウ、サミー・チェン。いまのところ、日本で公開されたのは、これたった1作。
『痩身男女』
アンディ・ラウ、サミー・チェン。東京国際映画祭で上映されただけ。私はそのときに観た。
『全職殺手』
アンディ・ラウ、反町隆史。感想は書かなかったが輸入DVDで観た。
『鍾無艶』
アニタ・ムイ、サミー・チェン。時代劇。これは未見。
『アンディ・ラウの麻雀大将』
Fat Choi Spiritの日本題名。今年の9月にDVD発売。
『我左眼見到鬼』
サミー・チェン、ラウ・チン・ワン。
それで、ジョニー・トー久々の単独監督作品『PTU』の前に公開されたのが、やはりワイ・カーファイとの共同監督作で『百年好合』(Love For All Seasons)。こちらは、サミー・チェンとルイス・クー。
ルイス・クーは大金持ちの上に、モテモテのプレイボーイ。彼に振られて自殺を考える女性は山のような数にのぼる。そんな彼も女遊びが過ぎて身体を壊してしまう。現代医学では治らないので、人づてに聞いた山寺に治療してもらいに出かける。そこは、女性ばかりが共同生活をしているという尼寺。病気を治してもらったルイス・クーはやがて香港へ帰っていく。
サミー・チェンには行方を晦ましていた姉弟子リー・ビンビンがいる。その姉弟子が突然に寺に戻ってきて、門弟を皆殺しにしてやると言い出す。サミー・チェンはリー・ビンビンと闘うが、この寺に伝わる秘剣ハートブレイク・ソード(傷心断腸剣)をマスターした姉弟子にはかなわない。サミーもこの秘剣の練習はしているのだが、本当に失恋の経験がないと、この剣はマスターできない。サミーはまだ失恋どころか恋愛の経験もなかったのだ。妹弟子が言うには、サミーの選ぶ道は三つ。レオナルド・デュカプリオか、木村拓也か、ルイス・クーと恋愛をして失恋するしかない。そのうちデュカプリオとキムタクは中国語がわからないし、サミーも英語や日本語がわからない。それで、ルイス・クーを相手にするしかない・・・・・という変な理屈でサミーを香港に送り出す。
あとは観客の予想どおりの展開。身体を治してくれたお礼にと、ルイス・クーは彼女と擬似恋愛をしてみせ、振ってしまう。ところが、ふたりは本当に愛し合ってしまうというコメディ。先が読めても、まったく飽きさせないのはさすがですね。
こんなに面白い作品を量産しているのに、さっぱり日本公開がされないジョニー・トーだが、上に書いたように9月には『アンディ・ラウの麻雀大将』の日本版DVDが出るし、ロー・ウィンチョンとの共同監督作『暗戦2』もやはり9月に『暗線リターンズ』というタイトルで日本版DVDが出るとのこと。こちらは大傑作だから、是非、観て欲しい。
なお、ジョニー・トー&ワイ・カーフェイの次回作は、金城武、ジジ・リョンの『向左走向右走』というラヴ・コメだそうだ。楽しみだなあ。
August.10,2003 期待通りだったジョニー・トー久々の単独監督作品
共同監督の形で精力的に商業ベースに乗る映画を作り続けているジョニー・トー。それらの作品群も大好きではあるのだが、やっぱり期待してしまうのはノワールの世界。『PTU』は、ジョニー・トー久々の単独監督作品。主演もサイモン・ヤムと、ジョニー・トー組の常連ラム・シュー。いわゆるスターは使っていない。
PTUとは、Police Tactical Unitの事。映画は、サイモン・ヤム率いるPTUが香港の夜の街にトラックでやってきて、街に降り立つところから始まる。9人編成のパトロール部隊のような感じ。中には女性の隊員も混じっている。9人は編隊を組んで夜の街をパトロールして回る。
画面は切り替わって、チンピラ5人組が小さな鍋料理屋に入ってくる。ボス格の男は髪の毛をチョンマゲに結っている。奥のテーブルに着くと店主が飛んできてビールを置く。ビールを飲み始めると天井から水滴が垂れてきて、チョンマゲの顔に当る。エアコンの具合が悪く水が漏っているのだ。チョンマゲは立ち上がり隣のテーブルでひとりで食べている赤シャツ男の隣に座る。他の四人の仲間もテーブルを移ってくる。店主が飛んできて、赤シャツ男を今までチョンマゲの座っていた席に案内する。無言で移動する赤シャツ男。
そこへ、防犯課の刑事ラム・シュウが入ってくる。ラム・シュウはチョンマゲたちのテーブルに座る。慌ててまた店主が飛んでくる。チョンマゲたちは、また元のテーブルに移動だ。赤シャツ男は店の隅の小さなテーブルに追いやられる。
携帯電話のベルが鳴る。ラム・シュウ、チンピラ五人組、赤シャツ男が一斉に自分の電話かと思いポケットから携帯を取り出す。電話はチョンマゲへのものだった。チョンマゲは4人にすぐにどこかの現場に向うように命令し、4人は出ていく。すると、また携帯電話のベルが鳴る。自分のかと確かめるラム・シュウ、チョンマゲ、赤シャツ男。今度はラム・シュウだった。ラム・シュウは、「10分でそちらに行く」と伝え店を出ていく。また携帯電話のベルがなる。チョンマゲと赤シャツが確認すると、今度は赤シャツだった。「はい、わかりました」と言って電話を切ると、赤シャツは立ち上がりバック・パックから包丁を取り出すと、チョンマゲの背中から一気に包丁を突き刺す。黙って裏口から出ていく赤シャツ。この意外な展開で、最初から観る者を釘付けにしてしまうのは、さすがにジョニー・トー。
一方、店から出てきたラム・シュウは自分のクルマの前に、さっきのチンピラのひとりが立っているのを見る。チンピラはラム・シューのクルマのボディを鍵で傷つけてみせる。怒ってチンピラを追いかけるラム・シュウ。逃げるチンピラ。しかし、これは罠だった。あとの3人がビルの陰で待ち伏せしていたのだ。そのことに気がついたラム・シュウは反対側から廻り込んで、不意を打つ作戦に出る。しかし、ネズミの死骸に足を滑らせ転んでしまい、この音を聞きつけたチンピラ4人にボコボコにされてしまう。
そこをパトロール中のサイモン・ヤムらのPTUに発見される。ラム・シュウは頭にケガを負っているが、なんとか無事。ところが、携帯していた拳銃が無くなっていることに気がつく。女性隊員が、このことを本部に報告すべきだと主張するが、ラム・シュウは朝まで待って欲しいと言う。朝までにチンピラを捕まえて拳銃を取り戻す考えなのだ。サイモン・ヤムらは朝までに見つからなかったら本部に報告するということで、ラム・シュウとは別行動でパトロールを続けながらチンピラたちを捜す事にする。
ここまでが、いわば導入部。無くなった拳銃を捜す一晩を描くストーリーになっている。このあと、香港の裏社会が見えてきて、その展開に一時も目が離せない。冒頭の鍋料理屋以外でも、携帯電話が重要な小道具として使われていて、ああ、こういう手があったかと感心してしまった。ちょっと『踊る大捜査線』を思わせる警察内部の上下関係などもあり、まったく飽きさせない。また、ラストの銃撃シーンは、『ザ・ミッション 非常の掟』のときのフォーメーションを思い出させる迫力。拳銃の行方も、ちょっとしたオチが付いていて面白い。
ああ、早くジョニー・トーの次の作品が見たい!