1.プロローグ
「姫、私に、ついてきてくださりませんか?」
その手が、私に向けてのばされる。
暖かくて、大きくて、私の大好きな手が。
私は、ゆっくりと、その手を取った。
「本当に、私なんかで、いいの?」
「あなただから、いいんですよ。それで、返事は?」
心配げに私の顔をのぞきこんでくる。
鈍感な彼に、私は、うなづいてみせる。
断る理由なんかない。
ずっと、ずっと、私は彼のことが好きだった。
おそらく、初めて彼を見たその日から。
これ以上に幸せなことなんて、あるはずがない。
彼も、私と同じように笑顔になる。
「ありがとうございます!」
感激のあまり、抱きついてきた。
「あ、すみません。」
急いで、腕を放そうとしたが、私はそれを許さない。
「私も、あなただから、あなた以外のことなんて・・・・」
腕に力を入れる。
誰にも邪魔されない、至福の時が流れていく。