人魚姫 探偵グリムの手稿
[紹介]
1816年、デンマークの町オーデンセ。ハンス・クリスチャン・アンデルセン少年は、町で出会った不思議な旅の画家ルートヴィッヒ・エミール・グリムとともに、奇妙な冒険に巻き込まれる。二人はある日、海岸に倒れていた少女を発見するが、セレナと名乗ったその少女は人間ではなく人魚だったのだ。半年ほど前にオーデンセの離宮で起きた王子殺害事件で、姿を消した侍女――王子に恋をしたセレナの妹にかけられた疑いを晴らすため、自らの心臓と引き換えに魔女の魔法で足を得たセレナに、残された時間はわずか一週間。ハンスとルートヴィッヒはセレナに協力して王子殺害事件の真相を探ろうとするが、事件は何とも不可解な状況だった……。
[感想]
北山猛邦の新作は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話「人魚姫」を下敷きにして、なおかつ少年時代のアンデルセンその人を主人公に、またグリム兄弟の一員(*1)を探偵役に据えた異色作。これまでの作品でもしばしば、意図的に現実感を希薄にしたような童話的な雰囲気が見受けられました(*2)が、本書ではストレートに童話を題材としながら、そこに原作者を含む実在の人物を登場させるという形で、童話と現実とが混沌とした物語世界が構築されています。
事件の背景となる“人魚姫”――セレナの妹の物語は、原作「人魚姫」(→「人魚姫#あらすじ - Wikipedia」を参照)にほぼ忠実(*3)ですが、妹が泡となって消える前に、セレナたち姉妹が見守る前で海に投げ捨てたはずの魔女の短剣が、なぜかその後に王子殺害の凶器として使われるという不可解な事態。一方、そのような人魚の側の事情を知らない離宮の人間にとっても、当時離宮にいた全員のアリバイが成立し、王子が殺すことができた人間はいなかったという不可能状況となっているのが見どころです。
この事件の謎に挑む、ハンス、ルートヴィッヒ、セレナの三人からなる“探偵団”の活動も、(ハンス少年の視点で描かれていることもあって)本書の大きな魅力となっています。伝手をたどって何とか訪れた離宮での冒険や、人魚の世界の知識を念頭に置いた議論も目を引きますが、画家らしくひたすら絵を描いて情報を記録するルートヴィッヒの探偵法がユニーク。また探偵活動を通じて、父を亡くしたばかりのハンスの悲しみが癒されていくとともに、人間を信用していなかったセレナの心がハンスの献身により開かれていくのも印象的です。
セレナが心臓を取り戻すためのタイムリミットが次第に迫ってくる中、予想外の事態も発生して状況は混迷を極めますが、クライマックスに至ってついに解き明かされる真相は、フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットのいずれもなかなかよくできています。とりわけ、最後に明らかにされるホワイダニットは非常に秀逸で、当初の印象からは思いもよらぬ真相に思わず圧倒されます。
また個人的に感心させられたのは、原作「人魚姫」の“ある事情”をそのまま取り込んで巧みに処理してある点で、それによって生じ得る問題を強引にねじ伏せるのではなく、むしろそこから逆算して真相と解決を組み立ててある節があります。結果として、原作「人魚姫」から大きく逸脱することなく、スムーズに物語の幕を閉じることになっているところがよくできていると思います。
最後に浮かび上がってくるのは、人魚姫の“もう一つの悲劇”というか、原作「人魚姫」のテイストを維持しつつも大きくひねりを加えた、実に見事なものになっています。その分、結末がやや駆け足に過ぎて書き足りないような印象がないでもないですが、じっくり読み返してみるとやはりこれで終わるのがベストかもしれません。いずれにしても、“童話「人魚姫」をいかに(本格)ミステリに仕立てるか”という意味では、これ以上ないほどの出来といっていいように思います。おすすめ。
*2: このあたりについては、『私たちが星座を盗んだ理由』の感想をご覧ください。
*3: ちなみに、私が読んだ原作「人魚姫」は子供向けのものだったせいか、“魔女の短剣”の話はなかったような気が……。
2013.04.04読了 [北山猛邦]
ハサミ男
[紹介]
これまでに二人の女子高校生を殺害し、鋭く研いだハサミを首に突き立ててきた連続猟奇殺人犯〈ハサミ男〉は、その三人目の犠牲者として目黒区鷹番のマンションに住む美少女・樽宮由紀子に目をつけた。出版社でのアルバイトのかたわら、じっくりと時間をかけて由紀子の身辺を綿密に調べ上げ、いざ犯行に及ぼうとしたその夜、〈ハサミ男〉とまったく同じ手口で殺害された由紀子の死体を発見する羽目に。一体誰が、なぜ……? 〈ハサミ男〉の仕業と断定した警察の捜査をよそに、独自に真犯人を探し始めた〈ハサミ男〉だったが……。
[感想]
今さらいうまでもないかとは思いますが、本書は第13回メフィスト賞を受賞した殊能将之のデビュー作で、その手口から〈ハサミ男〉と呼ばれるシリアルキラーを主人公兼探偵役として、奇妙な“模倣犯探し”の顛末を描いた異色の傑作です。
まず目を引くのは、主役をつとめる〈ハサミ男〉自身のユニークな造形で、世間に対して冷めたシニカルな視線を送り、日常のアルバイトからたびたび繰り返す自殺(未遂)、さらには傍から見れば猟奇的な様相の殺人に至るまで、ほぼ一貫してどこか淡々と事に及ぶ姿が印象的(*1)。虚無的ともいえるそのキャラクターは、時おり唐突に出現して饒舌に引用や皮肉を披露する〈医師〉とのやり取りで一層際立っている感があり、合わせて本書の大きな魅力の一つとなっています。
物語はその〈ハサミ男〉が新たな犠牲者に接近するところから始まりますが、シリアルキラーとはいっても行きずりの犯行ではなく、あらかじめ選び出した犠牲者の身辺を丹念に調査し、注意深く時間をかけて犯行の機会を待つ――と、この時点ですでに探偵の素質は十分といっても過言ではないでしょう(*2)。そして、それだけじっくりと準備を重ねた犯行を目前にして、正体不明の模倣犯に“獲物”を奪われるという不可解な事態に、思わず引き込まれずにはいられません。
かくして、殺人犯でありながら犯人探しを始めた(*3)〈ハサミ男〉のパートでは、関係者たちがそれぞれの視点から語る被害者の人物像が見どころで、あまりにもバラバラなイメージの集積は少女の空虚さを浮かび上がらせているようにも思えます。一方、並行して描かれる刑事たちのパートでは、〈ハサミ男〉を犯人とする、いわば“的を外した”捜査が行われていくものの、死体の発見者である〈ハサミ男〉自身も事件と無関係ではなく、事情聴取の対象となるなど、二つのパートが意外に早く接近するスリリングな展開となっています。
そして、次々と衝撃が襲いくる怒涛のクライマックスでは、作者が用意した一筋縄ではいかない企みにしてやられるよりほかありません。ネタの一部には比較的わかりやすいところもないではない(*4)ですが、本書のポイントは決してそこだけではなく、全体的によく考えられていると思います。と同時に、この物語を“こういう形”で、(ある意味)きれいにまとめてしまった作者の手腕にも脱帽。何とも意味ありげな幕切れも含めて、“しゃれた”としか表現しようのない傑作です。
2013.04.10読了 [殊能将之]
ノックス・マシン
[紹介と感想]
ミステリ作家・法月綸太郎による、SF寄りの作品集。パロディ風メタミステリの「引き立て役倶楽部の陰謀」と、ミステリ要素もあるSF「バベルの牢獄」を間に挟んで、本格ミステリをお題にした“メタミステリ”SFの「ノックス・マシン」とその続編「論理蒸発」が配置された内容は、SFが主体ではあるものの、どちらかといえばミステリ読者向けといえるでしょう(*1)。
SFを読まないミステリ読者にとっては、見慣れない架空の理論が難解に思われるかもしれませんが、かっこよければすべてよし(断言)。ということで、あまり難しく考えることなくイメージを楽しむことをおすすめします。
- 「ノックス・マシン」
- 上海大学で数理文学解析を専攻するユアン・チンルウは、〈ノックスの十戒〉を博士論文のテーマに選ぶが、なぜか計算が途中でフリーズする。〈十戒〉の第五項が原因だと考えたユアンは、〈ノックス場〉に〈No Chinaman 変換〉を施すことで成功を収めることができた。そして2058年、国家科学技術局から呼び出されたユアンは、過去への旅に赴くことに……。
- ロナルド・A・ノックスによる〈ノックスの十戒〉(→Wikipedia)――とりわけ第五項の
“探偵小説には、中国人を登場させてはならない。”
をお題として、タイムトラベルSFを展開するという奇想が見事な作品。“数理文学解析”なる学問が重要な役割を果たしていますが、中でも〈No Chinaman 変換〉は出色のアイデアといっていいでしょう。
そこからタイムトラベルにつなげるあたりは少々強引ですが、タイムトラベル先でのやり取りやひねりを加えた結末はよくできています。傑作。
- 「引き立て役倶楽部の陰謀」
- 会長・ワトスン博士からの手紙を受け取ったヘイスティングズ大尉は、〈引き立て役倶楽部〉の緊急理事会に出席することに。探偵助手たちの団体〈引き立て役倶楽部〉では、探偵助手の立場を揺るがす作品を発表しようとする作家に対して、過激な陰謀が企てられていたのだ。複雑な思いを抱えながらも、陰謀を阻止しようとするヘイスティングズ大尉だったが……。
- エルキュール・ポアロの助手をつとめるヘイスティングズ大尉を主人公にした、数々の探偵助手たちが登場するパロディミステリ風の作品。実在の作家――アガサ・クリスティ――が槍玉に挙げられて、虚構と現実が奇妙に交錯する中にあって、クリスティ作品の批評が展開されているのが見どころです。さらにミステリとしても興味深い結末が用意されており、よく考えられた作者の企みが光ります。
なお、はっきりしたネタバレはないように思いますが、『アクロイド殺し』・『そして誰もいなくなった』・『カーテン』は先に読んでおいた方がいいでしょう(*2)。
- 「バベルの牢獄」
- 地球人と軍事的緊張状態にあるサイクロプス人の統治する惑星に、工作員として“相棒”――鏡像人格とともに潜入した私だったが、気づいたときには囚われの身となっていた。肉体を失ったデータ人格とされながらも、内部に閉じてどこにも出口がない空間から、何とか脱出を図ろうとする私のもとに、切り離された“相棒”からの意味不明なメッセージが届いて……。
- 完全にSFの体裁を取った作品ですが、一見難解かつもっともらしい理論に支えられた物語の軸となるのは、出口のない“牢獄”から“どうやって脱出するか”という、ミステリのハウダニットに通じる興味。特に近年の某作家によるある種のミステリを読んでいる方であれば、そちらと同じような楽しみ方ができるのではないでしょうか。
終盤の“解説”の一部には苦笑を禁じ得ないところもありますが、それも含めて“アレ”を支える(擬似)理論的な裏付けが構築されているのは、やはりSFならではの魅力です。
- 「論理蒸発――ノックス・マシン2」
- 2073年。あらゆる情報を収集・保存・管理するゴルプレックス社のデータセンターとネットワーク上にある量子化されたテキストが、突然“炎上”し始めたという。その火元になったのは、エラリー・クイーンの『シャム双子の謎』らしいのだ。かつてユアン・チンルウの論文をもとに、『シャム双子の謎』を研究したゴルプレックス社のオペレーター、プラティバ・ヒューマヤンは……。
- 副題のとおり「ノックス・マシン」の続編にして、エラリー・クイーン『シャム双子の謎』をお題にした中編。〈国名シリーズ〉における『シャム双子の謎』の特異性をもとに奇想を積み重ねていき、テキスト“炎上”という大事件にまでつなげてあるのが見どころです。また、目前に迫る危機とは裏腹にどこか淡々と描かれる人間ドラマも魅力的で、静かな結末に浮かび上がる“エコー”が余韻とともに印象に残ります。
なお、これまたはっきりしたネタバレはなさそうですが、『シャム双子の謎』はもちろん『チャイナ橙の謎』も、先に読んでおいた方がいいでしょう(*3)。
*2: といいつつ、『カーテン』の内容はかなり忘れてしまっているのですが……。
*3: こちらもほとんど忘れてしまっているので、十分には理解できていないのが残念。
2013.04.15読了 [法月綸太郎]
悪魔と警視庁 The Devil and the C.I.D
[紹介]
ロンドンが濃霧に包まれた休戦記念日の夜。女性が路上でひったくりに遭うのを目撃したマクドナルド首席警部は、車を降りて犯人を追いかけバッグを取り戻す。そのまま警視庁に車を置いて帰宅したマクドナルドだったが、翌朝、車の後部から、メフィストフェレスの扮装をした男の刺殺死体が発見されたのだ。捜査の結果、前夜開かれた仮装舞踏会でメフィストフェレスに扮した者が数人いたらしいのだが、被害者の身元は杳として知れない。一方、舞踏会に出席していた老オペラ歌手の車に、ナイフと『ファウスト』の楽譜が残されていたことが判明して……。
[感想]
帯にも“クリスティに比肩する英国探偵小説黄金期もう一人の女王”
と謳われているE・C・R・ロラックですが、残念ながらその割に邦訳された作品はあまり多くありません。というわけで、長編では(*1)四作目の邦訳となる本書(と続いて刊行が予定されている『鐘楼の蝙蝠(仮)』(*2))が、ロラック再評価のきっかけとなるか、というところですが……面白いところもあるにはあるものの、個人的にはいささか微妙な気がしないでもありません。
本書で特筆すべきはやはり、実に魅力的な発端。よりによって探偵役であるマクドナルド首席警部の車の中から死体が発見されるという、何とも皮肉で愉快な状況――もちろんマクドナルドが車を離れた隙に犯人が押し込んだわけですが――もさることながら、派手なメフィストフェレスの扮装をした死体の登場はさすがに強烈なインパクト。さらにナイフと楽譜といった“小道具”も飛び出して、つかみは十分すぎるほどといっていいでしょう。
しかしながら、そこから先がどうにも地味な印象になっているのが、何とももったいなく感じられます。その最大の原因は、発端の不可解さの大部分が物語も序盤のうちに、しかも至極あっさりと解明されてしまう(*3)ことにあり、犯人はもちろん被害者の身元や動機が不明なまま残されているとはいえ、当初の状態からすると“謎”が一気にスケールダウンしたような感覚が生じるのは避けられず、損をしているようなところがあるのは確かです。
また、マクドナルド首席警部の単独行動が目立ちはするものの、題名の『悪魔と警視庁』そのままにというべきか、組織的かつ地道な警察による捜査――情報の収集を通じた解明に重点が置かれ、推理の面白さはやや控えめになっている感があります。どちらかといえば“探偵小説”よりも“捜査小説”風の趣で、これはこれで決して悪くはないのですが、個人的にはどこか物足りなさが先に立ってしまうのは否めません。
それでも、最後に明らかにされるちょっとしたトリック……ではなくて、その解明につながる“最後の決め手”はなかなかユニーク。「それでいいのか?」と半ばツッコミ混じりなところもありますが(苦笑)、図らずも(?)奇妙な味わいになっているのが面白いところで、ある意味印象に残るネタといえるでしょう。謎解きに過度な期待をかけるのは禁物かもしれませんが、それなりに楽しめる作品、といったところでしょうか。
2013.04.23読了 [E・C・R・ロラック]
落日のコンドル
[紹介]
〈影ジェンシー〉に所属するプロの殺し屋〈影ジェント〉の瀬見塚眠は、豪華客船のオーナーを暗殺するという任務を受け、チームを率いて洋上の船に潜入した。船員たちはみな薬物で眠らせたはずだったが、なぜか暗殺チームの一人が殺害されてしまった。敵の仕業か、それとも仲間割れか? 自動操縦で進む船が数時間後に座礁の危機を迎えるまでの間に、仲間殺しの犯人を見つけ出し、どこからともなく飛来して奇怪な空中殺法を繰り出す敵側の〈影ジェント〉コンドル三兄弟の襲撃をかわしつつ、任務を成功させなければならない。殺し屋たちの壮絶な戦いと推理の果ては……?
[感想]
“本格パズル・ロワイヤル”
あるいは“殺し屋たちの本格ミステリ刃法帖”
と銘打たれた本書は、『夕陽はかえる』に続いて(*1)本格ミステリと活劇を融合させた独特の味わいの作品です。任務とは直接関係のない殺し屋(影ジェント)殺害を発端とした『夕陽はかえる』に対して、本書では殺し屋の本分(?)である標的の暗殺任務が描かれており、その中で並行して推理/謎解きも展開されるという、一風変わったミステリとなっています。
序盤からいきなり殺し屋同士の戦いが繰り広げられ、(当然といえば当然ですが)物語は殺伐とした雰囲気に満ちています。もっとも、DJや茶人、蕎麦職人に保母(!)といった本業を持つ〈影ジェント〉たちの、“表の商売道具”を改造した武器を用いた戦いぶりは、都筑道夫の傑作『なめくじに聞いてみろ』を髣髴とさせながらも、(〈影ジェント〉たちの“殺しのニックネーム”(*2)のセンスも相まって)それ自体がどこか毒のあるギャグめいて映るところがあり、好みは分かれるかもしれません。
(身も蓋もない表現をすれば)死体が次々と量産される暗殺任務の遂行中では、推理など意味がないように思われるかもしれませんが、暗殺チームの行く手には不測の事態も含めて大小様々な謎が用意されており、任務を円滑に進めるために謎解きが不可欠となってくるのがうまいところ。とりわけ、血も涙もない殺し屋業界のことですから(?)、報酬をめぐる仲間割れの可能性は常に存在するわけで、“誰が誰を殺したのか”をはっきりさせる必要性にも納得できるものがあります。
実際のところ、報酬につながる“任務達成の証”の争奪戦という一面もあり、コン・ゲーム的な騙し合いの要素まで加わって見ごたえのあるものになっているのですが、謎解きとして目を引くのはやはり、中盤の“足跡のない殺人”をめぐる“多重解決”――というよりも、ある意味で殺し屋ならではの“推理合戦/自白合戦”。少々無茶なものばかりとはいえ、容疑者たちの特徴も生かしつつこれだけの“解決”を並べてみせる作者の豪腕(*3)に圧倒されるとともに、何ともシュールな状況には苦笑を禁じ得ません。
やがて、人間離れした空中殺法を繰り出すコンドル三兄弟との熾烈な戦いも始まりますが、その中にも不可解な謎が盛り込まれており、戦闘・騙し合い・謎解きが入り乱れて混沌としたまま物語は進んでいきます。そして……実に秀逸なミスディレクションによって巧みに隠蔽された、まったく予想外の真相に思わず仰天。およそ例を見ないネタをしっかりと結実させた作者の手腕には、脱帽せざるを得ません。最後の最後まで油断のならない、読み終えて満腹感の残る力作です。
2013.05.02読了 [霞 流一]
【関連】 『夕陽はかえる』