故國無心渡海潮,
老禪方丈倚中條。
夜深雨絶松堂靜,
一點山螢照寂寥。
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日東の鑒禪師に 贈る
故國 無心にして 海潮を 渡り,
老禪の 方丈 中條に 倚る。
夜 深く 雨 絶えて 松堂 靜かに,
一點の 山螢 寂寥を 照らす。
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◎ 私感註釈
贈日東鑒禪師:日本の鑑禅師に贈る。鄭谷の作であるが、司空圖の作ともする。 。日東:日本を謂う。 ・鑒禪師:鑑禅師。日本人僧侶の名。
※故國無心渡海潮:故國日本を後にして、(仏道の求法のため)無心で海潮を渡ってきたが。
※老禪方丈倚中條:老僧の僧坊は中條山によりそっている。 ・老:必ずしも年が寄っているとは、限らない。一種の敬称であり、現代語でも“老師”は使わている。 ・中條:中條山。雷首山。長安と洛陽の中間、山西省最南端の永済県の東にある。同時代、八仙の一人・張果老が隠遁したところでもある。蛇足になるが、万里の波濤を乗り越え、入唐した日本人僧が、求めて行ったところは、碧山の中。恐らくそこに、骨も埋めたか。感慨無量。
※夜深雨絶松堂靜:夜も遅く更けてから雨が止んで、松林の中のお堂は、靜まりかえっており。
※一點山螢照寂寥:ただ、ぽつんと一つだけの山蛍が寂しげに光っている。
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◎ 構成について
七言絶句。韻式は「AAA」の平声一韻到底。韻脚は「良黄陽」。平水韻下平七陽になる。この作品の平仄は次の通り。
●○◎○○●○,(韻)
●○○●●○○,(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2003.6.23 |
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