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◎私感訳注:
※楊柳枝:詞牌の一。詞の形式名。この作品の『楊柳枝』は、中唐以降広く流布した白居易の七言絶句体のそれとは異なる。唐詞でいう『添声楊柳枝』のこと。『太平時』ともいう。七絶の各句に三字句が附いたとも見られる詞調。双調。四十字。詳しくは「構成について」を参照。この作品は『花間集』第四にある。
※膩粉瓊妝透碧紗:すらっとした美しい姿が、青いうすぎぬからすけて見える。 ・膩粉:なめらかなおしろい。べにやおしろい。化粧のこと。 ・膩:化粧のあぶら。 ・瓊妝:美しい装い。 ・瓊:美しい玉。 ・透:すける。すけて見える。 ・碧紗:青いうすぎぬ。
※雪休誇:(空から降る)雪よ、(その白さを)自慢するのをやめなされ。(あなたに勝るものがあるのだよ)。 ・休:やめよ。やめる。 ・誇:じまんする。ほこる。
※金鳳掻頭墮鬢斜:黄金の鳳凰の簪が、髪から抜け落ちようとして、斜めになっている。 ・金鳳掻頭:黄金の鳳凰の簪。 ・掻頭:カンザシ。 ・墮鬢:髪から抜け落ち(ようとしている)。 ・斜:ななめである。正常な情況でない。
※髮交加:(鬢が崩れてきて、)髪の毛の流れが入り混じっている。 ・交加:入り混じる。
※倚著雲屏新睡覺:雲母の屏風寄りかかって、今、(昼寝の)眠りから覚めたところだ。 ・倚著:寄りかかって。よりそって。 ・著:…ている。…しつつ。…しながら。…して…する。動詞の後に附く。“着”。 ・雲屏:雲母の屏風。盛唐・王維の『題友人雲母障子』に「君家雲母障,持向野庭開。自有山泉入,非因彩畫來。」とある。 ・新睡覺:今、(昼寝の)眠りから覚めたところ。
※思夢笑:夢を思いだして笑む。夢の思いだし笑い。
※紅腮隱出枕函花:(羞じらって)赤くなっているほおに附いたまくらの型を隠しながら。 ・紅腮:(羞じらって)赤くなっているほお。 ・腮:ほお(口語)。文語では「あご」になるが、ここは前者の意。 ・隱出:隠しても見えてくる。 ・枕函花:まくらの(花の刺繍の)型。
※有些些:いささかばかりある。 ・些些:いささかずつ。ぽつぽつと。点々と。
◎ 構成について
四十字 双調。唐詞での『添声楊柳枝』のこと。『太平時』ともいう。七絶体の『楊柳枝』とは異なる。平韻で起こり、換頭の仄韻を夾む形になる。ただし、前の頁の『添声楊柳枝』とは、換頭の部分が微妙に異なる。この作品の韻式は「AAAA aaAA」。前の頁の『添声楊柳枝』の韻式は「AAAA bbAA」になる。
韻脚は「紗誇斜加 覺〔かう;jiao4〕笑 花些」で、第十部平声六麻と、第十二部二十六宥。「覺」〔かう;jiao4〕は、「めざめる」の意。
●○○●○。(平韻)
●○○。(平韻)
○●●○○。(平韻)
●○○。(平韻)
●○○●●。(仄韻)
○●。(仄韻)
○●●○○。(平韻)
●○○。(平韻)
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