******************
◎私感訳注:
※和凝:濃艶、過激な詞を残す五代の人。
※河滿子:詞牌の一。詞の形式名。単調。『何滿子』ともいう。白居易の詩から。詳しくは「構成について」を参照。この作品は『花間集』第六にある。
※正是破瓜年幾:ちょうど十六歳の年で。 ・正是:ちょうど(…だ)。 ・破瓜:十六歳。思春期の少女を指す。漢字の「瓜」〔〕を分けると「二」と「八」というふうに別れ、「二」「八」になり、2×8=16となることから謂う。 ・年幾:年齢。年頃。=年紀。
※含情慣得人饒:思いを込めて色っぽく甘えてきて、人(男性)に許しを乞う。 ・含情:思いを込める。色っぽく。晩唐?・朱慶餘の『宮中詞』に「寂寂花時閉院門,美人相並立瓊軒。含情欲説宮中事,鸚鵡前頭不敢言。」とある。 ・慣:甘える。 ・得:〔動詞+得〕で、結果などを表す。 ・人:ここでは、男性(に)。 ・饒:許す。ここでは、甘えて、おねだりをしているさまをいう。
※桃李精神鸚鵡舌:麗しい春の風情を持っている上に、口上手だ。 *美しい姿の少女に甘えられてきて、男の方は、つい、「よし、よし」と少女の言うことを聞いてしまうことになってしまう状態をいう。 ・桃李精神:桃李のように麗しい春の情が満ちている。「桃李傷春風。淫樂意何極。」。 ・鸚鵡舌:言うことがてきぱきしている。口がうまい。口上手。中唐・元『寄贈薛濤』「言語巧偸鸚鵡舌,文章分得鳳皇毛」とありる。 ・鸚鵡:オウム。口まねのうまい愛玩用の小鳥。前出・晩唐?・朱慶餘の『宮中詞』に「寂寂花時閉院門,美人相並立瓊軒。含情欲説宮中事,鸚鵡前頭不敢言。」とある。
※可堪虚度良宵:すばらしい夜を空しく過ごすことに堪えられようか。 ・可堪:たえられようか。 ・虚度:空しく過ごす。 ・良宵:すばらしい夜。
※卻愛藍羅裙子:青いうすぎぬのスカートをひとえに愛する。 ・卻:ひとえに。 ・藍:青い。 ・羅裙子:うすぎぬのスカート。
※羨他長束繊腰:それ(少女のスカート)が、いつも(少女の)細い腰をしめているのを(思うと)羨ましくなる。 ・羨:うらやましく思う。 ・他:それ。代名詞。その少女のスカートを指す。 ・長:いつも。いつまでも。とこしえに。=常。 ・束:(帯を)しめる。 ・繊腰:(若い女性の)細い腰。
◎ 構成について
三十七字。単調。何滿子ともいう。三十六字の六言絶句体のものが標準になる。この作品の韻式は「AAA」。 韻脚は「饒宵腰」で、詞韻第八部平声。
●○○●,
○●○○。(韻)
●○○●●,
○●○○。(韻)
●○○●●,
○●○○。(韻)
|