五噫歌
漢 梁鴻
陟彼北芒兮,噫!
顧瞻帝京兮,噫!
宮闕崔巍兮,噫!
民之劬勞兮,噫!
遼遼未央兮,噫!
**********************
。
五噫歌
彼の 北芒に 陟
(のぼ)
りて ,噫
(ああ)
!
帝京を 顧瞻して,噫!
宮闕 崔巍として,噫!
民の 劬勞は,噫!
遼遼 未だ央
(つ)
きず,噫!
******************
◎ 私感訳註:
※梁鴻:後漢の人。生没年は不詳。字は伯鸞。扶風平陵(現・陝西咸陽県西北)の人。この詩のために姓名を改め、姓を運期とし、名を燿、字を侯光とする。貧しい家庭の出身である。
※五噫歌:各句の末尾に「噫」が計五回附いた歌の意。漢代のもの、本来の意の漢詩。奇数句で聯をなしていない。押韻も不明(「芒央」?「噫」??)のめずらしい詩。語彙も『詩經』と共通する「彼」「兮」「劬勞」などがある。「劬勞」は『詩經』「凱風」にも「凱風自南,吹彼棘心。棘心夭夭,
母氏
劬勞
。」と、ある。この詩は、作者が洛陽に来て、北
山に登った時の作。山より宮廷の栄華と庶民の貧苦をながめて作ったもの。これが、後漢の章帝にとがめられ不興を買い、姓名を改めて山東省の山に隠棲した。
※陟彼北芒兮,噫:あの北芒山に登って、 ああ! ・陟:〔ちょく;zhi4〕登る。・彼:あの。 ・北芒:〔ほくばう;bei3mang2〕洛陽の北にある北
山〔ほくばうさん;bei3mang2shan1〕のこと。芒山ともいう。嘗ての墓山という。唐の沈
期に『
山』「北
山上列墳塋」
と、これに基づいてある。 ・兮:〔けい;xi1〕語調を整える助辞。『詩經』『楚辭』など、上代の作品には多く見られる。ここは兮字脚
である。 ・噫:〔い:yi1〕ああ。あ。歎息の声。
※顧瞻帝京兮,噫:みやこを眺め、ああ! ・顧瞻:ふり返って眺める。「顧覧」ともする。 ・帝京:みやこ。帝都。皇帝の居る都市。
※宮闕崔巍兮:(宮室崔嵬兮),噫:皇宮の立派なことよ、ああ! ・宮室:皇宮。宮居。「室闕」ともする ・崔嵬:〔さいぐゎい;cui1wei1〕=崔巍〔さいぎ;cui1wei2〕本来は、石や岩がごろごろして険しい山。高大なさま、凹凸の激しいさま。ここは後者の意。
※民之劬勞兮,噫:庶民の苦労よ、ああ! ・劬:〔く;qu1〕つかれる。苦しむ。 ・劬勞:務めつかれる。骨折り疲れる。
※遼遼未央兮,噫:はるかで未だに尽きない、 ああ! ・遼遼:遥かなさま。 ・未央:尽きないさま。未だつきず。
◎ 構成について
奇数句。押韻不明(「兮,噫」?)。『詩經』『楚辭』と同じで、虚字脚
の「兮」「噫」ではなく、「芒央(京)」になる。「嵬:u*」「勞:ag」は韻脚ではないだろう。次の平仄はこの作品のもの。
●●●○○,○ !
●●●○○,○!
○●○○○,○!
○○○○○,○!
○○●○○,○!
「□□□□
兮,噫!」
が基本のパターンとなって、繰り返している。
2003.3. 3完
3. 5補
11.11
2004.3. 8
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