己亥歳
唐 曹松
澤國江山入戰圖,
生民何計樂樵蘇。
憑君莫話封侯事,
一將功成萬骨枯。
**********************
。
己亥歳
澤國の江山 戰圖
(せんと)
に入り,
生民 何ぞ計
(はか)
らん 樵蘇
(せうそ)
に樂
(やすら)
ぐを。
君に憑
(たの)
む 話
(かた)
る莫
(なか)
れ 封侯の事を,
一將 功 成って 萬骨 枯る。
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◎ 私感訳註:
『聯珠詩格』巻十一より
※曹松:晩唐の詩人。字は夢徴。830年?〜901年?。舒州(現・安徽省潜山)の人。若くして戦乱を避けて洪州の西山に住んだ。晩年になった901年(光化四年)、進士に及第するが、時に七十余歳だったという。
※己亥歳:879年(乾符六年)。唐末の黄巣の乱(875年〜84年)の最中の作品。塩賊の王仙芝が唐朝に殺された後、叛乱軍の再結集後の南下時期になる。 ・己亥:〔きがい;ji3hai4●●〕十干と十二支の組み合わせで、順序を表す方法で、三十六番目(つちのとゐ)のこと
。
※沢国江山入戦図:江南の水郷の山河も戦闘地域になった。 ・沢国:池や沼の多い江淮の地(現・江蘇省、安徽省)を指す。 ・江山:(祖国の)山河。 ・戦図:〔せんと;zhan4tu2●○〕交戦地域。作戦地帯。 ・入戦図:作戦地図に入っている。戦闘地として戦乱に巻き込まれたことをいう。
※生民何計楽樵蘇:庶民はどのようにして生計を立てていったらよいのだろうか。 ・生民:人民。庶民。民草。国民。 ・何計:どのような方策をとろうか。『聯珠詩格』では「何の計あってか」と読む。 ・計:計画する。方法を立てる。 ・楽:やすらか。ゆたか。心にかなう。たのしむ。 ・樵蘇:〔せうそ;qiao2su1○○〕薪を拾うことと草を刈ること。薪取りと草刈り等といった庶民の生計のことになる。『聯珠詩格』では「樵漁」とする。林業と漁業の意で、半ば隠逸の士の生業(なりわい)でもある。
※憑君莫話封侯事:あなたにお頼みするから諸侯に封ぜられるという事を語らないでほしい。 ・憑:たのむ。お願いする。 ・君:ここでは封侯を目指す武将のことになる。 ・莫話:言わないでほしい。 ・封侯:諸侯に封ぜられること。軍功を立てて出世すること。
王昌齡の『閨怨』に「閨中少婦不知愁,春日凝妝上翠樓。忽見陌頭楊柳色,
悔ヘ夫壻覓
封侯
。」
とあり、
高適の『九曲詞』に「
鐵騎行鐵嶺頭,
西看邏逤取
封侯
。海只今將飲馬,黄河不用更防秋。」
とあり、南宋・陸游の『訴衷情』「
當年萬里覓
封侯
,匹馬戍梁州。關河夢斷何處?塵暗舊貂裘。胡未滅,鬢先秋,涙空流。此生誰料,心在天山,身在蒼洲!」
とある。
※一将功成万骨枯:ひとりの将帥の武功がなっても、多くの兵卒の犠牲の上に成り立っている(のだから)。 ・一将:ひとりの将帥。ひとりの将軍。蛇足になるが、「将帥」(武将)の「将」は●になるが、「将軍」の「将」は○となる。後者の「将」(○)は、ひきいる、攻めるといった動詞の原義が生きているのだろう。 ・功成:手柄を立てる。功績が成就する。 ・万骨:多くの兵卒の骸。 ・枯:〔こ;ku1○〕ひからびる。「枯骨」となる。白骨となる。≒
〔ku1〕。王昌齢の『塞下曲』には「飮馬渡秋水,水寒風似刀。平沙日未沒,黯黯見臨
。昔日長城戰,咸言意氣高。黄塵足今古,
白骨
亂蓬蒿
。」
がある。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「圖蘇枯」で、平水韻上平七虞。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2005.5.21
2009.4. 1補
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