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江路東連千里潮,
青雲北望紫微遙。
莫道巴陵湖水闊,
長沙南畔更蕭條。
岳陽樓に 重ねて 王八員外の長沙に貶せらるるを 宴別す
江路 東に連(つら)なる 千里の潮(うしほ),
青雲 北に望めば 紫微(しび) 遙かなり。
道(い)ふ 莫(なか)れ: 「巴陵(はりょう) 湖水 闊(ひろ)し」と,
長沙の南畔 更に 蕭條(せうでう)たらん。
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◎ 私感註釈
※賈至:盛唐の詩人。718年(開元六年)〜772年(大暦七年)。字は幼幾。洛陽の人。安史の乱には、玄宗に従って、蜀に避れる。
※岳陽楼重宴別王八員外貶長沙:王八員外が長沙に左遷されるので、岳陽楼でもう一度、別れの宴を張る。 *この作品、さらっと読めば、長沙に向かう王八員外を脅かすかのようであるが、勿論そんな意ではない。語句の切り方で意味が大きく変わる。(後述)。 ・貶:〔へん;bian4●〕おとしめる。けなす。左遷される。
※江路東連千里潮:長江の流れる道筋は、東の方に連なって、遙か彼方まで続く水の流れである。 ・江路:長江の流れる道筋。川の流れ。 ・東連:東の方に連なっている。 ・千里:長大な距離を謂う。 ・潮:うしお。水の流れ。長江の流れで「潮」字がたまに見かけるが、海の干満のことと関聯があるのかどうか、不明。白居易の『憶江南』「江南憶,最憶是杭州。山寺月中尋桂子,郡亭枕上看潮頭。何日更重遊。」や張籍の『小長干曲』「春江無雲潮水平,蒲心出水鳧雛鳴。長干夫婿愛遠行,自染春衣縫已成。」など。
※青雲北望紫微遙:青みがかった雲のある北の方を望めば、皇居は遙か遠い。 ・青雲:青みがかった雲。晴れた空。青空。徳の高いことをいう。世俗から離れて超然としていることをいう。 ・北望:北の方を眺める。 ・紫微:〔しび;zi3wei1●○〕皇居。宮廷。もと、紫微垣のことで、天帝の座。天を三垣(えん)、二十八宿に分けた三垣の一。 ・遙:遠い。はるかである。
※莫道巴陵湖水闊:いいなさるな、「巴陵の洞庭湖の湖水は、果てしなく広い」などとは。 ・莫道:いうなかれ。この句のかかっていく対象を「巴陵湖水闊」(巴陵湖水 闊し(と))のみとすると、次の「長沙南畔更蕭條」(長沙は南畔更に蕭條。)は、作者・賈至の言になり、王八員外は驚き恐れ、目をむいたことだろう。言いたい内容は別として、詩の起承転結からすれば、それで完成されているが。
ここの「莫道」の対象は「巴陵湖水闊長沙南畔更蕭條」(巴陵湖水闊く,長沙の南畔更に蕭條たらん(と)。=王八員外の漏らした歎きのことば)になる。語句の切り方で、がらっと意味が変わる好例。 ・莫:なかれ。打ち消し、禁止を表す。 ・道:いう。(ものを)言う。言葉で言い表す。 ・巴陵:〔はりょう;ba1ling2○○〕岳陽県南西の山の名。岳陽県南西の地名。岳州。 ・巴陵湖水:巴陵の湖水で、洞庭湖の水のこと。 ・闊:〔くゎつ;kuo4●〕広い。
※長沙南畔更蕭條:長沙はその南岸にあって、いっそう、もの寂しいものなのだ。 ・長沙:岳陽の南100キロメートルの所にある都市。現・湖南省省都。 ・南畔:南岸。長沙は、洞庭湖の南側50キロメートルになる。 ・畔:〔はん;pan4●〕ほとり。岸。水際。 ・更:その上に。一層。さらに。 ・蕭條:〔せうでう;xiao1tiao2○○〕ものさびしいさま。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「潮遙條」で、平水韻下平二蕭。次の平仄はこの作品のもの。
○●○○○●○,(韻)
○○●◎●○○。(韻)
●●○○○●●,
○○○●●○○。(韻)
2005.8.23 8.24 8.25 |
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