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      山房春事
              
                  岑參 
梁園日暮亂飛鴉,
極目蕭條三兩家。
庭樹不知人死盡,
春來還發舊時花。

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山房春事       
                       
梁園
(りゃうゑん)の日暮  亂飛の鴉(からす)
極目
(きょくもく) 蕭條(せうでう)たり  三兩 家(さんりゃう か)
庭樹は 知らず  人 死に盡くすを,
春來 還
(ま)た 發(ひら)く  舊時の花。

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◎ 私感註釈

※岑參:〔しんじん;Cen2Shen1〕盛唐の詩人。開元三年(715年)〜大暦五年(770年)。南陽の人。安西節度使に仕え、当時西の地の涯までいった。ために、辺塞詩をよくする。蛇足になるが、岑參の「參」字は〔さん;can1〕〔しん;cen1〕〔じん;shen1〕とあるが、彼の名は〔じん;shen1〕になる(『中国大百科全書・中国文学 T』(中国大百科全書出版)

※山房春事:梁園にある山房での春のもの思い。季節の春秋は、風光が変化をきたす時期で、時代の推移変遷を感じさせるものとなる。

※梁園日暮亂飛鴉:(かつての御苑であった)梁園の夕暮れ時に、カラスが乱れ飛び。 ・梁園:〔りゃうゑん;liang2yuan2○○〕漢代に、文帝の子、梁の孝王が築いた園の名。現・河南省東部、商丘の東にある。竹が多く、修竹園とも呼ばれた。宮室の庭園。『史記・世家・梁孝王』に「孝王,竇太后少子也,愛之,賞賜不可勝道。於是孝王築東苑,方三百餘里。廣陽城七十里。」とある。王昌齡の『梁苑』「梁園秋竹古時煙,城外風悲欲暮天。萬乘旌旗何處在,平臺賓客有誰憐。」に詠われている梁園。我が国でいえば「さざなみの志賀の辛崎幸くあれど大宮人の舟待ちかねつ」になろうか。  ・日暮:日暮れ(に)。夕方(に)。 ・亂飛:(隊伍を組んだ群になって飛ぶことはしないで)乱れ飛ぶ。 ・鴉:〔あ;ya1〕カラス。

※極目蕭條三兩家:目の届く限りのもの寂しいさまであって、二、三軒の家が見えるだけである。 ・極目:目の届く限り。見わたす限り。 ・蕭條:〔せうでう;xiao1tiao2○○〕もの寂しいさま。 ・三兩:二、三。「二三」としないで、「三兩」とするのは「二三(●○)」は、本来「○○」とすべきところで使い、「三兩(○●)」は本来「●●」とすべきところで使う。この句は「●●○○
●●○」とすべきもので「●●」型の「三兩」を使った。 ・三兩家:二、三軒の家。

※庭樹不知人死盡:庭に植わっている花木は(そこに住んでいた皇族の)人たちが死に絶えってしまったことを知らぬげに。 *後世、晩唐・杜牧は『泊秦淮』で「煙籠寒水月籠沙,夜泊秦淮近酒家。商女
不知亡國恨隔江猶唱後庭花。」と使う ・庭樹:庭の樹木。 ・不知:知らない。 ・人:漢の梁の孝王の時代の人。曾ての大宮人。 ・死盡:死に絶える。ここは「去盡」ともする。 ・去盡:去り尽くす。

※春來還發舊時花:春になると、なおまた、昔と変わらない花を著(つ)けている。 ・春來:春になる。 ・還:なおまた。なお。 ・發:ひらく。 ・舊時:昔と変わらない。昔ながらの。昔のままの。

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◎ 構成について

 韻式は「AAA」。韻脚は「鴉家花」で、平水韻下平六麻。次の平仄はこの作品のもの。

○○●●●○○,(韻)
●●○○○●○。(韻)
○●●○○●●,
○○○●●○○。(韻)

2005.9. 4
     9. 5完
     9. 6補
2007.8.22

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