煮豆燃豆萁, 豆在釜中泣。 本是同根生, 相煎何太急? |
七歩詩(應聲而作詞)
豆を煮るに 豆萁(まめがら)を 燃やせば,
豆は 釜中に 在りて 泣く。
本 是れ 同根に 生ぜしに,
相ひ煎(に)ること 何ぞ 太(はなは)だ 急なる?
諱 | 字 | 「諱」の読みと意味 | 「字」(あざな)の意味 | |
植 | 子建 | 〔しょく〕:うえる。 〔ち〕:たてる、おく、はしら。 |
たてる。はじめる。「植」「建」どちらも「たてる」と訓む。 |
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兄 | 丕 | 子桓 | はじめ、もと。大きい。 | 一定の処。しるし、柱、勇ましい |
父 | 操 | 孟コ |
『古詩源』 |
『古文眞寶』 |
※七歩詩:『古文眞寶』や『古詩源』にある(写真右下・上)。これは『古文眞寶』のもの。 『三國演義』第七十九回「兄逼弟曹植賦詩。姪陥叔劉封伏法」には『七歩詩』が出てくる。曹丕は弟の曹植に対して「吾今限汝行七歩吟詩一首」と命じ、作った「兩肉齊道行,頭上帶凹骨。相遇由山下,起相突。二敵不倶剛,一肉臥土窟。非是力不如,盛氣不泄畢。」がそれである。それに対して曹丕は「七歩成章,吾猶以爲遲。汝能應聲而作詩一首否?」といわれ、再び作ったのがこのページの詩である。『兄弟』詩である。兄弟仲、兄弟愛を提起する詩である。
この詩は『三國演義』(元・羅貫中著。日本でいう『三国志演義』『三国志』)第七十九回「兄逼弟曹植賦詩。姪陥叔劉封伏法」に出てくる。(これを漢詩・魏詩(漢魏の詩歌)として、「先秦漢魏六朝詩歌辞賦の頁」で扱っていいかどうか多少疑問もあるが、そのこととは別に『三國演義』での三曹の人間関係を理解するために、古来屡々使われてきた作品であることは事実である。)この詩は普通『七歩詩』といわれているが、『七歩詩』は別の五言詩(後出)であり、これは『三國演義』での表現を借りれば『應聲而作詩』であり、『兄弟』と題してもよいものである(後出紫字部分参照)。皇帝である兄・曹丕と作者・曹植とはともに曹操の息子で兄弟であるものの、才能をめぐり、仲が悪かった。兄・皇帝より才能や行動を疑われ、「七歩進むうちに詩を一首、作ってみせよ」と命じられ、曹植は七歩で「兩肉齊道行,頭上帶凹骨。相遇凹山下、起相突。二敵不倶剛,一肉臥土窟。非是力不如,盛氣不泄畢。」と作った。これが『七歩詩』である。するとさらに、「七歩で作るのでは遅すぎる。言われた声と同時に作れるか。『兄弟』という詩題だ。」曹植は即座に「煮豆燃豆,豆在釜中泣。本是同根生,相煎何太急!」(豆を煮るに豆(まめがら)を燃やせば,豆は釜中に在りて泣く。本 是れ同根に生ぜしに,相ひ煎(に)ること何ぞ太(はなは)だ急なる?)と口ずさんだ。これを聞いて曹丕は涙をこぼした。「『吾與汝情雖兄弟,義屬君臣。汝安敢恃才蔑禮?昔先君在日,汝常以文章誇示於人,吾深疑汝必用他人代筆。吾今限汝行七歩吟詩一首。若果能,則免一死。若不能,則從重治罪,決不姑恕。』植曰:『願乞題目。』時殿上懸一水墨畫,畫着兩隻牛,鬪於土牆之下,一牛墜井而亡。丕指畫曰:『即以此畫爲題。詩中不許犯着「二牛鬪牆下,一牛墜井死」字樣。』植行七歩,其詩已成。詩曰:「兩肉齊道行,頭上帶凹骨。相遇凹山下,起相突。二敵不倶剛,一肉臥土窟。非是力不如,盛氣不泄畢。」曹丕及羣臣皆驚。丕又曰:『七歩成章,吾猶以爲遲。汝能應聲而作詩一首否?』植曰:『願即命題。』丕曰:『吾與汝乃兄弟也。以此爲題。亦不許犯着「兄弟」字樣。』植略不思索,即口占一首曰:『煮豆燃豆,豆在釜中泣。本是同根生,相煎何太急!』。曹丕聞之,潸然涙下。」これはまた六句の「 | 煮豆持作羹, |
漉豉以爲汁。 | |
萁向釜下然, | |
豆在釜中泣。 | |
本是同根生, | |
相煎何太急?」 |
※煮豆燃豆:豆を煮るのに、豆がらを燃やす。 ・煮豆:豆を煮る。 ・燃豆:豆の茎(豆がら)を燃やす。 ・豆萁:〔とうき;dou4qi2●○〕豆の茎。豆がら。
※豆在釜中泣:豆は釜の中で泣く。 *豆と豆萁とは、本来同一の根から生えている謂わば身内だが、豆がらは燃えて(身内の)豆を煮て来るので、豆は堪えかねてカマの中で泣いている。 ・釜中泣:釜の中で泣く。豆と豆萁とは、本来同一の根から生えている、いわば身内だが、豆萁(豆がら)は燃えて豆を煮て来るので、豆は堪えかねてカマの中で泣いている
※本是同根生:本来は同じ根から生長した。 *ここでは曹丕と曹植の兄弟を指し、兄が弟を殺し除こうとすることを云っている。 ・本是:本来は。 ・同根生:同じ根から生長した。ここでは曹丕と曹植との兄弟をも指す。
※相煎何太急:豆萁が豆をにることにどうしてそんなに急くのか。 *どうしてそんなに激しく攻撃してくるのか。 ・相煎:豆萁が豆をにる。兄が弟を虐めることを云っている。 ・相:…てくる。動作が対象に及ぶ時の表現。 ・何太急:どうしてそんなに急くのか。 ・何:なんぞ。反問。疑問の辞。 ・太:はなはだ。あまりにも。 ・急:いそぐ。せく。急である。
◎ 構成について
五言詩。韻式は「aa」。韻脚は「泣急」で、入声韻。この詩の平仄は次の通り。
●●○●○,
●●●○●。(韻)
●●○○○,
○○○●●。(韻)
2001. 2.15 5.18完 9.15補 2002. 7.10 2003. 1.28 2005. 4.23 2007. 7.23 2009. 4. 2版 2018.10.23 |
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