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遙夜沈沈如水,
風緊驛亭深閉。
夢破鼠窺燈,
霜送曉寒侵被。
無寐,
無寐,
門外馬嘶人起。
如夢令
遙けき夜 沈沈として 水の如く,
風 緊(きつ)くして 驛亭は 深く閉ざす。
夢は 破れ 鼠は 燈を窺ひ,
霜は 曉寒を 送り 被(しとね)を 侵す。
寐(い)ぬる 無し,
寐(い)ぬる 無し,
門外に 馬 嘶きて 人 起く。
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◎ 私感註釈
※秦觀:北宋の人。1049年〜1100年。字は少游。進士になり、中央で活躍し、軾の門下(蘇門四学士)の一として「屈宋之才」と讃えられた。しかし、政争のために、地方へ飛ばされ、地方の任地を転々とし、許されて返る途中、現・江西省の藤州で客死した。作風はその境涯に比例して、艶麗なもの、悲愴なものがある。
※如夢令:詞牌の一。憶仙姿、宴桃源、比梅、不見、古記、無夢令、如意令ともいう。詳しくは下記「構成について」を参照。
※遙夜沈沈如水:長い夜が(深い)淵のように、しんしんと更けてゆく。 ・遙夜:長い夜。秋季や冬季のよながを謂う。李Uの『蝶戀花』「遙夜亭皋閑信。乍過C明,早覺傷春暮。數點雨聲風約住。朦朧淡月雲來去。 桃李依依春暗度。誰在秋千,笑裏低低語?一片芳心千萬緒,人間沒個安排處!」 とある。 ・沈沈:夜が深まっていくさまをいう。
※風緊驛亭深閉:風がやむことなく吹き続けるので、宿場の宿舎は(戸や窓を)しっかりと閉ざしている。 ・風緊:風がやむことなく吹く。唐・杜牧の『南陵道中』に「南陵水面漫悠悠,風緊雲輕欲變秋。正是客心孤迥處,誰家紅袖凭江樓。」 とある。 ・驛亭:駅舎。宿場の宿舎。 ・深閉:(風のために戸や窓を)しっかりと閉ざす。
※夢破鼠窺燈:鼠が灯火の方を窺って(うろちょろしており、そのため)寝ているのを起こされた。 ・夢破:夢を破られた。寝ているのを起こされた。 ・鼠窺燈:鼠が灯火の方を窺い見る。
※霜送曉寒侵被:霜が明け方の冷え込み(寒気)をかけぶとんの中に送り込んでくる。 ・霜送:霜が(寒気)を送る。 ・曉寒:明け方の冷え込み。 ・侵被: かけぶとんの中に入ってくる。 ・被:掛け布団。
※無寐,無寐:ねむれない。無寐:ねむれない。
※門外馬嘶人起:外で馬がいなないて、駅亭の泊まり客が起きて(旅立ちの準備も整った)。 ・門外:戸外で。外で。 ・馬嘶:(旅をする馬車や乗馬の)馬がいなないて。 ・人起:駅亭の泊まり客が起きて(旅立ちの準備を始めている)。
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◎ 構成について
単調。三十三字。仄韻。韻式は「aaaara」。韻脚は「水閉被寐寐起」で第三部八霽ほか。第六句は前句の畳句。如夢令の特徴は、第一句も第二句も、その後も、同様の詞調「●●○○●」の繰り返しになっていることである。
●●○○●,(仄韻)
●●○○●。(仄韻)
●●○○,
●●○○●。(仄韻)
○●,(仄韻)
○●,(畳句)(仄韻)
●●○○●。(仄韻)
2002.5. 3 5. 4 2007.4.19 |
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