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水光瀲灧晴方好,
山色空濛雨亦奇。
欲把西湖比西子,
淡粧濃抹總相宜。
湖上に飮み 初め晴るるも 後に雨ふる
水光 瀲灧(れんえん)として 晴れて 方(まさ)に好く,
山色 空濛(くうもう)として 雨も 亦た奇なり。
西湖を把(も)って 西子と比せんと 欲すれば,
淡粧 濃抹 總(すべ)て 相(あ)ひ宜(よろ)し。
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◎ 私感註釈
※蘇軾:北宋の詩人。北宋第一の文化人。政治家。字は子瞻。号は東坡。現・四川省眉山の人。景祐三年(1036年)〜建中靖國元年(1101年)。三蘇の一で、(父:)蘇洵の老蘇、(弟:)蘇轍の小蘇に対して、大蘇といわれる。
『聯珠詩格』より 『東坡絶句』一 卷二 九葉より 『歴代絶句類選』二 第八葉
※飲湖上初晴後雨:(杭州の西)湖上で、酒盛りをしたら、初めのうちは晴れていたが、やがて雨が降ってきた。 *杭州西湖上で、酒盛りをし、西湖の風光の麗しさと西施の美を比べて詠ったもの。清末、黄遵憲がこれに基づいて一連の作品を遺している。 ・飮湖上:杭州西湖上で、酒盛りをする。 ・初晴後雨:初めのうちは晴れていたが、やがて雨が降ってきた。ここでの「晴」「雨」は、動詞として使われている。
※水光瀲灧晴方好:湖の水面が輝き、さざ波のしきりに動くのは、晴れの時がちょうよい。 ・水光:水面の輝き。後世、元・趙孟頫の『岳鄂王墓』で、西湖を「鄂王墓上草離離,秋日荒涼石獸危。南渡君臣輕社稷,中原父老望旌旗。英雄已死嗟何及,天下中分遂不支。莫向西湖歌此曲,水光山色不勝悲。」と使う。 ・瀲灧:〔れんえん;lian4yan4●●〕さざ波のしきりに動くさま。水の溢れるさま。ここは、前者の意。 ・方:まさに。ちょうど。ここを「方好」(ちょうどよい)、とはせずに「偏好」(ひとえによい)とするのもある。平仄から謂うと、ここは○が来べきところで、「方」「偏」ともに適合している。
※山色空濛雨亦奇:山の色が霧雨が降って薄暗いさまでは、雨もまた独特の趣がある。 ・山色:山の色。 ・空濛:霧雨が降って薄暗いさま。唐・武元衡の『題嘉陵驛』に「悠悠風旆繞山川,山驛空濛雨作煙。路半嘉陵頭已白,蜀門西更上青天。」とある。 ・亦…もまた(同様に)。(晴れは、なかなか佳いものだが、雨)もまた同様に。 ・奇:めずらしい。独特の趣がある。
※欲把西湖比西子:西湖を西施と比較しようとすれば。 ・欲:…をしようとする。『聯珠詩格』では「若」とする。「若」:もし。もしも。 ・把:〔古語・現代語〕…をもって。…を取って。本来は動詞で、「手に持つ」ということだが、介詞に近い働き「把+名詞」となって、「將+名詞」の場合の「將」に限りなく近い。「以」にも稍近い。 ・西湖:杭州にある風光明媚な湖で、西湖十景で有名。「斷橋殘雪」「蘇堤春曉」「雷峰夕照」「三潭印月」「雙峰插雲」「花港觀魚」「曲院風荷」「南屏晩鐘」「柳浪聞鶯」「平湖秋月」と、実に優雅な名の美しいところである。 ・比:〔古語・現代語〕くらべる。西湖、西施どちらも、「西」が附いていることから来る聯想もあろう。 ・西子:西施。春秋時代の越の國の美女。呉王夫差の愛妃。「西施捧心」「効顰」で有名。呉王夫差は、愛妃西施のために、ここ西湖畔の姑蘇山上に(姑)蘇台を築いた。
※淡粧濃抹総相宜:薄化粧も濃い化粧も、(それぞれが)全てぴったりとしている。 ・淡粧:淡い化粧。薄化粧。 ・濃抹:濃い化粧。「淡粧濃抹」は、西施の化粧のさまと、西湖の天候の変化を謂う。 ・總:すべて。総じて。ここを「兩」((ふたつ)ながら=右上『聯珠詩格』の写真)ともする。 ・相宜:〔白話〕適当である。適合している。ふさわしい。
◎ 句の大意
・水光瀲灧晴方好:水面にはさざ波のしきりに起って、晴れてちょうどよい、
・山色空濛雨亦奇:山の色が雨にけぶる風情もなかなかのものである。
・欲把西湖比西子:西湖を西施と比べて(謂お)うとすれば、
・淡粧濃抹總相宜:薄化粧も濃い化粧も(晴れても雨であっても)、どちらもなかなかふさわしい。
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◎ 構成について
七絶平起。韻式は「AA」。韻脚は「奇宜」で、平水韻上平四支(奇宜)。以下の平仄は、この作品のもの。
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
●●○○●○●,
●○○●●○○。(韻)
2002. 8.24 8.25 8.26完 2003. 6. 7補 2007.11.15 2010.10.16 2011.11. 5画 2020.10.20 |
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