Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


岳鄂王墓
趙孟頫             


鄂王墓上草離離,
秋日荒涼石獸危。
南渡君臣輕社稷,
中原父老望旌旗。
英雄已死嗟何及,
天下中分遂不支。
莫向西湖歌此曲,
水光山色不勝悲。





西湖畔・岳王廟前にて
三十功名塵與土, 八千里路雲和月。 背景は『満江紅』詞

怒髮衝冠,憑闌處、瀟瀟雨歇。
秦檜(向かって右)と妻の王氏
民族の裏切り者として、縛められて
千古に亘って墓前に跪かされている。
(この写真を撮っていた時、小さな子どもが来て、
秦檜の頭上に向かって握りこぶしを振りあげて、
打死你ダア ス ニィ」と言ったのには
正直のところ、驚いた。
遠い過去のことではなかったのか、と。)
墓前の石像群(この詩の「石獸」等) 岳鄂王墓
「尽忠報国」



******

岳鄂王がくがくわうの墓              
鄂王がくわう墓上 ぼ じゃう  草 離離りりとして,
秋日しうじつ 荒涼くゎうりゃう  石獸せきじう あやふし。
南渡なん と の君臣  社稷しゃしょくを輕んずるも,
中原ちゅうげん父老 ふ らう  旌旗せい き を望む。
英雄 すでに死して  なげくも 何ぞ及ばん,
天下 中分ちゅうぶんして  つひに支へず。
西湖にいて 此の曲を歌ふこと なかれ,
水光すゐくゎう 山色  悲しみにへず。

                     ****************



◎ 私感註釈

※趙孟頫:〔てうもうふ(ちょうもうふ)Zhao4 Meng4fu3〕南宋〜元の政治家、文人。南宋の王室の一族・趙家の出であるが、元朝に仕えた人物。1254年(寶祐二年)〜1322年(至治二年)字は子昂。号して松雪道人。呉興(現・浙江省湖州)の人。

※岳鄂王墓:岳飛の墓。現・浙江省杭州の西湖西岸に岳王廟がある。 ・岳鄂王:〔がくがくわう;Yue4E4wang2〕岳飛:〔がくひ;Yue4Fei1〕のこと。宋代相州湯陰の人。抗金の英雄。主戦派。そのため、講和派の秦檜の讒言により、罪を得て謀殺される。後に、その功績を称えて鄂王に追封されたため岳鄂王と呼ばれた。漢民族の英雄とされる

※鄂王墓上草離離:岳飛の墓の上は、草が伸びて連なり垂れて。 ・鄂王:岳飛が死後鄂王に封ぜられたことによる。 ・鄂王墓上:岳飛の墓の上に。現・岳王廟の墳墓に。杭州の西湖西岸にある。「鄂王墳上」ともする。平仄上では「墓」よりも「墳」の方がよい。(下掲「◎構成について」を参照) ・離離:〔りり;li3li3●●上声〕稲や麦の穂が伸びて垂れるさま。ふさふさと。連なりつくさま。(なお、「離」は両韻で、「はなれる」意は〔り;li2○〕、「つらなりつく」は〔り;li3●〕。ただし、現代語では〔li2○平声(陽平)〕に統一)。この作品は平仄の配列から考えて、〔り;li2○=平声〕としてつかっているようだ。『詩經・王風』の『黍離』に「彼黍
離離,彼稷之苗。行邁靡靡,中心搖搖。知我者,謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。   彼黍離離,彼稷之穗。行邁靡靡,中心如醉。知我者,謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。   彼黍離離,彼稷之實。行邁靡靡,中心如噎。知我者,謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。」とある。

※秋日荒涼石獣危:秋の日ざしに、荒れはてた(墓前の)石造りの動物は、高く聳えている。或いは、秋の日ざしに、荒れはてた(墓前の)石造りの動物は、(崩れかかって)あやうげである。 ・荒涼:荒れはててさびしい。 ・石獣:墓前の参道を夾んで侍(はべ)る石造りの馬などの(冥界で)使役する動物。(上掲写真参照) ・危:高い。また、あやうい。はかない。そこなう。また、端正である。正しい。「高い」の意では、両宋・張元幹の『石州慢』己酉秋呉興舟中作「雨急雲飛,瞥然驚散,暮天涼月。誰家疏柳低迷,幾點流螢明滅。夜帆風駛,滿湖煙水蒼茫,菰蒲零亂秋聲咽。夢斷酒醒時,
危檣C絶。   心折,長庚光怒,群盗縱,逆胡猖獗 欲挽天河,一洗中原膏血。兩宮何處?塞垣只隔長江,唾壺空撃悲歌缺。萬里想龍沙,泣孤臣呉越。」がある。

※南渡君臣軽社稷:(華北の地を捨てて、淮河以南)江南半壁の地に渡り、(南宋を建国した)皇帝・高宗(張構)や臣下の秦檜などは、祖国の土地神(=華北の国土)を軽んじて。 ・南渡:北方の異民族に圧迫されて長江を渡って江南半壁の地に漢民族の国家をうち立てたことを謂う。歴史上、(西)晋が滅んだ後の東晉、また、(北)宋が滅んだ後の南宋のこと。この詩作品の場合、北宋滅亡後の南宋を謂う。北宋は北方に興った異民族の金国のために、皇帝を拉致(永嘉の乱、靖康の変)されて滅び、南宋となって淮河以南に拠って漢民族の国家を保持し続けた。唐・北宋の詩詞では晉・王導の事績(東晋の創立に参画し、元帝司馬睿、明帝、成帝の三代の国政を総攬した。江南の貴族と南渡した西晋の貴族とを連係させ、東晋の基礎を築いたこと)をいう。『晉書・列傳・王導』「晉國既建,以(王)爲丞相軍諮祭酒。桓彝(桓階の弟、桓温の父)初過江,見朝廷微弱,謂曰:「我以中州多故,來此欲求全活,而寡弱如此,將何以濟!」憂懼不樂。往見(王),極談世事,還,謂(周)曰:『向見管夷吾,無復憂矣。』過江人士,毎至暇日,相要出新亭飮宴。中坐而歎曰:『風景不殊,舉目有江河之異。」皆相視流涕。惟(王)愀然變色曰:「當共勠力王室,克復神州,何至作囚相對泣邪!』衆收涙而謝之。」。この部分は、南宋の豪放詞には、常に出てくる部分である。民族の怨念がこもっている部分。しかしながら、ここでは、王導が積極性を発揮した人物とは見ず、江南半壁での安泰を求めた退嬰的な態度をざるを得なかった人心の動向といった状況を詠っている。〔王導に会った後の人物評として、『この前、管仲のような人物に会った。全然憂い歎いていない。』と。長江を南渡して(遁れてきた)人士たちは、)いつも休みの日になると、(長江南岸の建康=南京附近の)新亭に集まって、酒を酌み交わしていた。周は、『風景(=風と陽光)は(故国)とは異なってはいないが、目にする川の姿、全てが新たで異なったものである』と言ったので、みんなは、見つめ合って、涙を流した。ひとり、王導だけは、形を改め正して、憤りを見せ『(我々は、)一緒になって王室のために力を尽くして(建設すべきであり)、祖国の故地・神州を恢復させるべきであり、何をめそめそと亡国の民のようになっているのか!(この江南に新天地があるではないか!)』と言ったので、みんなは彼に謝った。〕以上が晉・王導の南渡である。しかし、南宋以降は、北宋末の靖康の変以降の変転を指してのことが多い。または晉代を詠いながら、北宋末の靖康の変以降の変遷をいう。この作品は元代のもので、作者は宋王朝の血を引く者で、やはり、靖康の変後のことを謂おう。 ・君臣:君主と臣下。ここでの「君」とは、高宗(張構)のことになり、「臣」とは、秦檜などになろうか。 ・社稷:〔しゃしょく;she4ji4●●〕祖国、国家をいう。天子が宮殿の右に祀った国家の尊崇する神霊。国家の最も重要な守り神。土地神(=社)と五穀の神(=稷)のこと。宗廟に対置される。盛唐・杜甫の『ゥ將』五首其二に「韓公本意築三城,擬絶天驕拔漢旌。豈謂盡煩回紇馬,翻然遠救朔方兵。胡來不覺潼關隘,龍起猶聞晉水C。獨使至尊憂
社稷,ゥ君何以答升平。」とある。

※中原父老望旌旗:(異民族の領土となった漢民族の故地・)中原(=華中、華北)(に取り残された漢民族の)老人が(南)宋の皇帝の軍勢の旗を待ち望んでいる(のを見捨てたではないか)。 ・中原父老:(異民族の領土となった漢民族の故地・)華中、華北(に取り残された漢民族の)老人。両宋・辛棄疾の『水龍吟』甲辰歳壽韓南澗尚書に「渡江天馬南來,幾人眞是經綸手。長安
父老,新亭風景,可憐依舊。夷甫諸人,~州沈陸,幾曾回首。算平戎萬里,功名本是,眞儒事、公知否。   況有文章山斗,對桐陰、満庭C晝。當年墮地,而今試看,風雲奔走。獄風煙,平泉草木,東山歌酒。待他年整頓,乾坤事了,爲先生壽。」とあり、南宋・陸游に『夜讀范至能攬轡録言中原父老見使者多揮涕感其事作絶句』「公卿有黨排宗澤,帷幄無人用岳飛。遺老不應知此恨,亦逢漢節解沾衣。」(夜に、范成大の『攬轡録』を読んで、書かれてあった『中原の父老は、南宋の使者を見て涕を揮うことが多い』と言うのを讀み、その事に感動して絶句を作る。正しくは、「夜に 范至能の『攬轡録』に『中原父老 使者を見て多く涕を揮ふ』と言ふを讀む」がよかろう。「范至能」は范成大のこと。その亡国の恨みの詩に『州橋』「州橋南北是天街,父老年年等駕迴。忍涙失聲詢使者,幾時眞有六軍。」 があり、南宋・張孝祥の『六州歌頭』に「長淮望斷,關塞莽然平。征塵暗,霜風勁,悄邊聲。黯銷凝。追想當年事,殆天數,非人力。洙泗上,絃歌地,亦羶腥。隔水氈ク,落日牛羊下,區脱縱。看名王宵獵,騎火一川明,笳鼓悲鳴,遣人驚。   念腰間箭,匣中劍,空埃蠹,竟何成!時易失,心徒壯,歳將零。渺~京,干瀦懷遠,靜烽燧,且休兵。冠蓋使,紛馳鶩,若爲情?聞道中原遺老南望剃ワ霓旌。使行人到此,忠憤氣填膺,有涙如傾。」とある。 ・中原:漢民族の故地で、河南省を中心とした黄河中流域の平原地帯。 ・父老:年取った男子の敬称。老翁。老人。 ・望:のぞむ。前出・張孝祥の『六州歌頭』のピンク字「常南望」を参照。 ・旌旗:はた。前出・張孝祥の『六州歌頭』の青字部分を参照。

※英雄已死嗟何及:(異民族に抵抗した漢民族の)英雄たちもとっくに死に絶えて、歎いても(もはや)間に合わない。 ・英雄:ここでは、南宋初期抗金の英雄を指す。宗沢や岳飛、韓世忠など。また、元に抵抗したのでは文天祥が有名。 ・已:とっくに。すでに。 ・嗟:〔さ;jie1(jue1)○〕なげく。なげき。また、ああ。重い感嘆の声。舌を巻いて感嘆、嘆き悲しむ声。ここは、前者の意。 ・何及:及ばない。かなわない。

※天下中分遂不支:国土は半分にされて、ついには、(それも)支えきれなくなった。(←南宋末の情況)国土は半分にされて、ついに、(華北、華中は)支えきれなくなった。(←北宋末の情況) ・天下中分:北宋は北方に興った異民族の金国のために靖康の変で滅び、その後、南宋は淮河を金国との国境線とし、江南半壁の地に追いやられたことを謂う。 ・遂:〔すゐ;sui4●〕ついに。とうとう。また、意に適う。とげる。ここは、前者の意。 ・不支:ささえられない。『文中子・事君』の「大廈將顛,非一木所
也。」(大きな建物が倒れる時は、一本の木で支えられるものではない⇒国家の滅亡するは、少しの対応では防ぎきれるものではない、ということの譬え)に基づく。

※莫向西湖歌此曲:(曾て、南宋の首都であった杭州の)西湖で、この曲を歌わないで(ほしい)。 ・莫向-:…で…をするな。…に…するな。…に向かって…をするな。「向」は「於」の意。一文中に介詞(前置詞)と動詞がある場合、否定の副詞は動詞の前には附かないで、介詞の前に附く。例えば「向京都去」を打ち消す場合は、普通「莫向京都去」であって「向京都莫去」とはしない。中唐・孟郊の『古別離』に「欲別牽カ衣,カ今到何處。不恨歸來遲,莫向臨邛去。」とあり、北宋・晏幾道に『鷓鴣天』「醉拍春衫惜舊香,天將離恨惱疏狂。年年陌上生秋草,日日樓中到夕陽。雲渺渺,水茫茫。征人歸路許多長。相思本是無憑語,莫向花箋費涙行。」がある。 ・西湖:浙江の杭州の真ん中にある湖。当時、南宋は首都を臨安(現・杭州)に置いていたので、「南宋の首都の中心のところ」の意を持つ。北宋・林升の『題臨安邸』「山外山樓外樓,西湖歌舞幾時休。暖風薫得遊人醉,直把杭州作汴州。」と詠い、南宋・劉克莊は『戊辰即事』で「詩人安得有衫,今歳和戎百萬縑。從此
西湖休插柳,剩栽桑樹養呉蠶。」と詠う。 ・歌:うたう。動詞。 ・此曲:具体的にどのような曲を指すのかは分からないが、統一された祖国の山河の秀麗さをうたったものになる。

※水光山色不勝悲:(人が作りだした音楽と、自然の景観である西湖の)水面の輝きや(周りの)山の色とが相(あい)俟(ま)って、悲しみに堪えられない(からだ)。 ・水光:水面の輝き。北宋・蘇軾の『飮湖上初晴後雨』に「
水光瀲灧晴方好,山色空濛雨亦奇。欲把西湖比西子,淡粧濃抹總相宜。」とある。 ・不勝:〔ふしょう;bu4(*)sheng1●○〕我慢できない。…に堪えない。…できない。(・勝:〔しょう;sheng1○平韻字〕たえる。こらえる。しのぐ。 なお、〔しょう;sheng4●仄韻字〕は、勝つ。おさえる。まさる。(ただし、現代(北京)語では、ともに後者の発音〔sheng4〕。)ここの用法では平韻字での意味。平韻字としての用例には、李白の『蘇臺覽古』「舊苑荒臺楊柳新,菱歌C唱不勝○○○●●)。只今惟有西江月,曾照呉王宮裡人。」や、杜甫の『春望』「國破山河在,城春草木深。感時花濺涙,恨別鳥驚心。烽火連三月,家書抵萬金。白頭掻更短,渾欲不勝。」や、白居易『楊柳枝』其三に「依依嫋嫋復青青,勾引清風無限情。白雪花繁空撲地,阪N條弱不勝。(●○○●●)」 や、劉禹錫の『與歌者何戡』「二十餘年別帝京,重聞天樂不勝○○○●●)。舊人唯有何戡在,更與殷勤唱渭城。」や、蘇軾の『水調歌頭』「明月幾時有?把酒問天。不知天上宮闕,今夕是何年。我欲乘風歸去,又恐瓊樓玉宇,高處不勝○●●)。起舞弄C影,何似在人間!」や、劉綺莊の『揚州送人』に「桂楫木蘭舟,楓江竹箭流。故人從此去,望遠不勝◎●●)。落日低帆影歸風引櫂謳。思君折楊柳,涙盡武昌樓。」などがある。

               ***********



◎ 構成について

韻式は、「AAAAA」。韻脚は「離危旗支悲」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。


●○●●●◎◎,(韻)
○●○○●○○。(韻)
○●○○○●●,
○○●●◎○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2010.10.14
     10.16
     10.17
     10.18
     10.19完
2011. 9. 3補



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