何滿子
唐・張
故國三千里,
深宮二十年。
一聲何滿子,
雙涙落君前。
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。
何滿子
故國 三千里,
深宮 二十年。
一聲 何滿子,
雙涙 君前に 落つ。
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◎ 私感訳註:
※何滿子:人名。悲痛な歌、の意で使われている。『何滿子』という詩題の作品は、元
、毛文錫、和凝…と多く、白居易にも『何滿子』があり、その前書きには「開元中,滄州有歌者何滿子,臨刑,進此曲以贖死,上竟不免。」と書かれて「世傳滿子是人名,臨就刑時曲始成。一曲四調歌八疊,從頭便是斷腸聲。」詠っている。この何満子とは、唐の開元年間の滄州出身の優れた歌い女の名のことで、彼女は何らかの事情で死刑に処せられることとなった。死刑は、長安の都で行われることになり、処刑直前に執行官が最期の希望を聞いた。彼女は、この世に別れる前に歌を一曲唱いたいと願った。執行官は、その願いを聞き届け、彼女に歌うことを許した。彼女は歌い出したが、感情が横溢し、死の恐怖よりも悲憤慷慨の激情が迸った。歌声は、冤罪の悲しみを訴えて、聞く者に大きな感動を与え、一同、涙した。やがて、歌い終わって処刑される瞬間、あわやという時に、霓裳羽衣の曲を作り、梨園の弟子を養った玄宗皇帝の赦免の使者がやって来た。彼女の音楽的な才能を惜しんだためという。この故事に基づいて、彼女が唱った歌や、広く悲歌を『何満子』というようになった。
この作品は、数字を使った対句により構成されている。『宮詞』ともする。
※故國三千里:ふるさとを遠く離れてきて。 ・故國:ふるさと。郷里。 ・三千里:遥かな距離をいう。
※深宮二十年:後宮深く埋もれて、皇帝の寵愛を受けることもなく、二十年が過ぎてしまった。 ・深宮:後宮深く埋もれて。後宮で皇帝の寵愛を受けることもなく。 ・二十年:寵愛を受けることもなく過ぎた二十年。
※一聲何滿子:一節の『何滿子』を唱えば。 ・一聲:一節の。一曲の。 ・何滿子:ここでは、悲しげな歌。
※雙涙落君前:君王の前で、両眼から涙をこぼしてしまった。 ・雙涙:両眼から流す涙。・落:おとす。(涙を)こぼす。 ・君前:君王の前で。皇帝の前で。毛治中先生によると、この「君」は『唐詩紀事』に基づいて、唐の武宗というが、未確認。ただ、このページの作品の作者・張
の『孟才人歎』の「序」に「武宗皇帝疾篤,遷便殿。孟才人以歌笙獲寵者,密侍其右。上目之曰:『吾當不諱,爾何爲哉』?指笙嚢泣曰:『請以此就縊』。上憫然,復曰:『妾嘗藝歌,請對上歌一曲以泄其憤』。上以懇許之,
乃歌
一聲何滿子
,氣亟立殞
。」とある。
氣亟立殞。当たり前と言えば、当たり前だが、『舊唐書』武宗本紀には、関聯記述は無かった。蛇足になるが、『武宗本紀』を見て分かったことだが、彼は薬物中毒で三十三歳の若さで亡くなっている。道教に凝っての薬物中毒だ。水銀になるか。
◎ 構成について
。韻式は「AA」。韻脚は「年前」で平水韻部下平一先。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
○●●○○。(韻)
2004.1.6
1.7
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