〔越調〕 天淨沙
秋思
元・馬致遠
枯藤老樹昏鴉,
小橋流水人家,
古道西風痩馬。
夕陽西下,
斷腸人在天涯。
**********************
。
〔越調〕 天淨沙
枯藤の老樹 昏
(くれ)
の鴉,
小橋の流水 人家,
古道の西風 痩馬。
夕陽 西に下れば,
斷腸の人 天涯に 在り。
******************
◎ 私感訳註:
※天淨沙・秋思:元曲。重苦しい語感の名詞によって構成されている特異な作品。『越調』は宮調(=楽曲)を指し、『天浄沙』は曲牌名(=詞の長短の句や押韻等の形式)を指す。『秋思』が詞の題。元代に興った。柳永『少年遊』「長安
古道
馬
遲遲,高柳亂蝉棲。
夕陽
島外,
秋
風
原上,目斷四天垂。 歸雲一去無蹤迹,何處是前期?狎興生疏,酒徒蕭索,不似去年時。」
や、宋・范仲淹『蘇幕遮』「碧雲天,黄葉地,秋色連波,波上寒煙翠。山映斜陽天接水,芳草無情,更在斜陽外。黯ク魂,追旅思,夜夜除非,好夢留人睡。明月樓高休獨倚,酒入愁腸,化作相思涙。」
、唐の耿
の『秋日』「返照入閭巷,憂來誰共語。古道少人行,秋風動禾黍。」
、また、南宋・陸游の『小舟遊近村捨舟歩歸』「
斜陽
古柳
趙家莊,負鼓盲翁正作場。身後是非誰管得,滿村聽説蔡中カ。」
などの思いを敷衍したのかもしれない。
※枯藤老樹昏鴉:冬枯れで葉が落ちたフジの蔓と古木、(更に)夕暮れ時の(数羽の)カラス(の姿)。 ・枯藤:冬枯れで葉が落ちた蔓性の植物。フジ。ツタ。 ・老樹:古木。 ・昏鴉:夕暮れ時のカラス。 *秋の点景で、重苦しいものを挙げている。・昏:夕暮れ。日暮れ。
※小橋流水人家:小さな橋が架かっている)せせらぎの(畔にある数軒の)人家。 *秋の点景で、規模の小さいものを挙げている。 ・小橋:小さな橋。 ・流水:(小さな橋が架かっている)せせらぎ。小さな川の流れ。 ・人家:(数軒の)人家。
※古道西風痩馬:古くからある古びた道で、秋風が痩せた馬に(吹きかかり)。 *秋の点景で、衰勢を表すものを挙げている。 ・古道:古くからある古びた道。 ・西風:秋風。 ・痩馬:痩せた馬。
※夕陽西下:夕日が西に沈もうとする。 ・夕陽:夕日。 ・西下:西に沈む。
※斷腸人在天涯:辛い思いをしている人が、地の果てを旅している。 ・斷腸:断腸の思いをしている(人)。 ・人:ここでは、独り旅をしている作者自身を指す。 ・在:…にある。…にいる。 ・天涯:空の果て。極めて遠いところ。故郷を遠く離れたところ。
◎ 構成について
元曲。押韻は四声指定で、順に、平声、平声、上声、去声、平声、となる。韻式は「平声、平声、上声、去声、平声」。韻脚は「鴉家(平)、馬(上)、下(去)、涯(平)」。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●○○,
○○●●○○,
●●○○去上。
●○○去,
●○○●○○。
2004.1. 9
1.10
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