******
白頭垂涙話梨園,
五十年前雨露恩。
莫問華清今日事,
滿山紅葉鎖宮門。
梨園の弟子
白頭 涙を垂らして 梨園を 話し,
五十年前 雨露の恩。
問ふ莫(なか)れ 華清 今日の事を,
滿山の紅葉 宮門を 鎖(とざ)す。
*****************
◎ 私感註釈
※梨園弟子:唐の玄宗皇帝(明皇)が宜春北院を与え、梨園に自ら創った音楽の教坊の音学生。後世、転じて、中国では京劇関係、日本では歌舞伎関係の世界を謂うようになった。「皇帝梨園子弟」を指す。白居易の『長恨歌』の皇帝が安禄山の乱の終熄後都へ帰ったが、嘗ての愉しい日々はなく一人寂しく暮らしていた描写で、「春風桃李花開日,秋雨梧桐葉落時。西宮南内多秋草,落葉滿階紅不掃。梨園子弟白髮新,椒房阿監娥老。夕殿螢飛思悄然,孤燈挑盡未成眠。遲遲鐘鼓初長夜,耿耿星河欲曙天。鴛鴦瓦冷霜華重,翡翠衾寒誰與共。悠悠生死別經年,魂魄不曾來入夢。」とある。似た感じのものに劉禹錫の『楊柳枝詞』「煬帝行宮水濱,數枝楊柳不勝春。晩來風起花如雪,飛入宮牆不見人。」 や、李白の『玉階怨』「玉階生白露,夜久侵羅襪。却下水精簾,玲瓏望秋月。」 、白居易の『勤政樓西老柳』「半朽臨風樹,多情立馬人。開元一株柳,長慶二年春。」 、唐・張の『何滿子』「故國三千里,深宮二十年。一聲何滿子,雙涙落君前。」 などがある。
※白頭垂涙話梨園:白髪頭の老人が涙を流しながら、(嘗ての)梨園の様子を語っている。 ・白頭:白髪(しらが)頭の老人。 ・垂涙:涙を流して。 ・話:話す。語る。動詞。 ・梨園:唐の玄宗皇帝(明皇)が梨園に自ら創った音楽の教坊。
※五十年前雨露恩:五十年前の開元天寶の治世玄宗の皇恩(が、思い起こされる)。 ・五十年前:玄宗の梨園があった開元天寶の治世。八世紀中葉とその前。 ・雨露:恵みが広く及ぶこと。恩沢。「聖朝多雨露,莫厭此行難。」「氣得神仙迥,恩承雨露低」皇恩を指すか、雨露(あまつゆ)そのものを指す。ここでは、前者の意。 ・恩:皇恩。
※莫問華清今日事:華清宮の今日の事情を訊ねてくださるな。 ・莫問:訊ねてくださるな。 ・莫:…なかれ。禁止や打ち消し。ここでは、前者の意。 ・問:たずねる。きく。問う。 ・華清:皇帝の行宮があったところ。温泉地。長安東方にある。前出白居易の『長恨歌』に「春寒賜浴華C池,温泉水滑洗凝脂。侍兒扶起嬌無力,始是新承恩澤時。雲鬢花顏金歩搖,芙蓉帳暖度春宵。」とある。 ・今日事:今の事態。「莫問□□千古事」「莫問□□今日事」という典型でもある。
※滿山紅葉鎖宮門:山一面の紅葉が(生い茂って、)華清宮の宮門の入り口を鎖している。 ・滿山紅葉:山一面の紅葉。 ・鎖:とざす。 ・宮門:華清宮の入り口。
***********
◎ 構成について
平起。韻式は、「AAA」。 韻脚は「園恩門」で、平水韻上平十三元。次の平仄はこの作品のもの。
●○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2004.4.18完 2007.4.21補 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |
メール |
トップ |