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君歌楊叛兒,
妾勸新豐酒。
何許最關人,
烏啼白門柳。
烏啼隱楊花,
君醉留妾家。
博山爐中沈香火,
雙煙一氣凌紫霞。
楊叛兒
君は 歌ふ 楊叛兒,
妾は 勸む 新豐の酒。
何許か 最も 人に 關する,
烏は 啼く 白門の柳。
烏は 啼きて 楊花に 隱れ,
君は 醉ひて 妾家に 留る。
博山爐中 沈香の火,
雙煙 一氣に 紫霞を 凌ぐ。
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◎ 私感註釈
※李白:盛唐の詩人。
※楊叛兒:男女の愛の歌。楽府詩集清商曲旧題。このやや後、中唐の徐凝も同様の『楊叛兒』「哀怨楊叛兒,駘蕩郎知否。香死博山爐,煙生白門柳。」を作った。「叛」は「伴」の意。
※君歌楊叛兒:あなた(男性)は、『楊叛兒』の歌を歌い(なされ)。 ・君歌:あなた(男性を指す)は、(大きな声に出して)歌う。 ・楊叛兒:男女の愛情を表す歌。『楽府詩集』にある「暫出白門前,楊柳可藏烏。歡作沈水香,儂作博山爐。」を指すか。
※妾勸新豐酒:わたし(女性)は、新豊のお酒をお注(つ)ぎ、致しましょう。 ・妾:〔せふ;qie4〕わたし。わらわ。(女性の一人称)。謙譲の意を込めている。 ・勸:すすめる。 ・新豐:陝西省驪山華清宮近くにある酒の名産地。長安東北郊20kmの現・臨潼になる。王維の『少年行』に「新豐美酒斗十千,咸陽遊侠多少年。相逢意氣爲君飮,繋馬高樓垂柳邊。」とある。或いは、江蘇省太倉にある地名。
※何許最關人:どこが一番気にかかるのか。 ・何許:どこ。いづこ。どんな。 ・最:もっとも。 ・關人:気にかかる。心配する。(人の)気になる。
※烏啼白門柳:カラスが鳴いている金陵の西門の柳になるだろう。 ・烏啼:カラスが鳴く。唐・張繼の『楓橋夜泊』に「月落烏啼霜滿天,江楓漁火對愁眠。姑蘇城外寒山寺,夜半鐘聲到客船。」 がある。「烏」は人称代詞や疑問詞ともみられる。 ・白門:建業(現・南京)城の西門。金陵(現・南京)のことでもあり、金陵の別称でもある。 ・柳:シダレヤナギ。前出楽府の「暫出白門前,楊柳可藏烏。」を蹈まえている。
※烏啼隱楊花:烏はハコヤナギの花に隠れて鳴いており。 ・隱:かくれる。かくす。前出「暫出白門前,楊柳可藏烏。」 ・楊花:ハコヤナギの花。風に吹かれてゆく、浮気っぽい女性を暗示する。
※君醉留妾家:あなた(男性)は、酔っぱらってわたし(女性)の家に泊まる。 ・醉:酔う。 ・留:とどまる。とどめる。 ・妾家:わたし(女性)の家。
※博山爐中沈香火:香炉の沈香の香煙は。 ・博山:男女の情愛を暗示する。 ・博山爐:香炉の名。彝器(儀式用の鼎等の道具)の上に山の形を刻して装飾とした香炉。半世紀後、劉禹錫は『傷秦行』で「來自長陵小市東,蕣華零落瘴江風。侍兒掩泣收銀甲,鸚鵡不言愁玉蘢。博山爐中香自滅,鏡奩塵暗同心結。從此東山非昔遊,長嗟人與絃倶絶。」とした。 ・博山:山東省博山県の東南の峡谷名。また、河南省淅川県の東。 ・沈香:〔ぢんかう;chen2xiang1○○〕熱帯や広東省に産する香木の名で、水に沈むからこう呼ばれる。香の名。
※雙煙一氣凌紫霞:二筋の煙が一つとなって、仙境にまで行き渡っている。 ・雙煙:二筋の煙。 ・一氣:一つとなる。男女の意気が一つとなったさまをいう。 ・凌:しのぐ。おかす。越える。わたる。 ・紫霞:紫雲(が たなびく仙境)。
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◎ 構成について
韻式は「aaBBB」。韻脚は「酒柳 花家霞」で、平水韻上声二十五有(酒柳)、下平六麻(花家霞)。次の平仄は、この作品のもの。
○○○●○,
●●○○●。(韻)
○●●○○,
○○●○●。(韻)
○○●○○,(韻)
○●○●○。(韻)
●○○○○○●,
○○●●○●○。(韻)
2004.10. 7 10. 8 10. 9完 2013. 8.10補 |
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