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晴煙漠漠柳毿毿,
不那離情酒半酣。
更把玉鞭雲外指,
斷腸春色在江南。
古別離
晴煙(せいえん) 漠漠として 柳 毿毿(さんさん)たり,
那(いか)んともせず 離情 酒 半ば酣(たけなは)なるを。
更に 玉鞭を把りて 雲外を 指(ゆびさ)せば,
斷腸の春色 江南に 在り。
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◎ 私感註釈
※韋莊:晩唐の詩人。836年(開成元年)〜910年(開平四年)。字は端己。杜陵(現・陝西省西安附近)の人。
※古別離:楽府旧題。後世、この詩と似た内容の詞が作られている。宋・無名氏の『一剪梅』に「漠漠春陰酒半酣。風透春衫,雨透春衫。人家蠶事欲眠三。桑滿筐籃,柘滿筐籃。 先自離懷百不堪。檣燕呢喃,梁燕呢喃。篝燈強把錦書看。人在江南,心在江南。」とある。
※晴煙漠漠柳毿毿:うららかな日の春霞が遠く遥かに連なって、柳の枝が細長く垂れ下がっている。 ・晴煙:うららかな日の春霞。 ・漠漠:遠く遥かなさま。連なっているさま。寂しいさま。 ・毿毿:〔さんさん;san1san1○○〕毛や柳の枝が細長く垂れ下がるさま。毛の長いさま。毛の長くふさふさとしたさま。
※不那離情酒半酣:別れの思いをどうすることもできなく、酒宴が半ばでも(胸が詰まってくる)。 ・不那:どうすることもできない。いかんともできない。 ・那:〔な;na3●〕なんぞ。疑問、反語を表す。文語の「奈」に近い。口語(現代語(表記))の“哪”。 ・離情:別れの思い。 ・酣:〔かん;han1○〕たのしむ。酒を飲んで楽しむ。たけなわ。酒宴の最中。 ・酒半酣:酒宴が半ば盛り上がろうとしている時。
※更把玉鞭雲外指:その上に、(餞別の宴が終わった後、出で立つために馬に乗って)立派な乗馬用のむちを手にとって(前途の)遥か彼方の空を指し示す(と)。 ・更:さらに。一層。その上。 ・把:〔は;ba3●〕手に取り持つ。 ・玉鞭:立派な乗馬用のむち。人が乗馬したことを表す。 ・雲外:雲の彼方(かなた)。空の彼方。遥か彼方(かなた)の空。雲上。 ・指:指す。ゆびさす。動詞。
※斷腸春色在江南:はらわたを断つような深い歎き(を帯びた)春の気配は、江南にある。 ・斷腸:はらわたを断つような深い歎き。 ・春色:春の景色。春の気配。 ・在:…にある。 ・江南:長江下流南部の豊穣の地。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「酣南」で、平水韻下平十三覃。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2005.12.23完 2011. 2.22補 2017. 5.15 |
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