存亡感月一潸然,
月色今宵似往年。
何處曾經同望月,
櫻桃樹下後堂前。
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月に感じ 逝者を悲しむ
存亡 月に感じて 一(いつ)に潸然(さんぜん)たり,
月色 今宵 往年に 似たり。
何(いづ)れの處か 曾經(かつ)て 同(とも)に月を望める,
櫻桃(あうたう) 樹下 後堂(こうだう)の前。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※感月悲逝者:月が(目にふれると)、亡くなった人を悼み哀しむ感情が湧き起こってくる。 ・感月:月を眺めて感じることがある。月は、古来親しい人を思い起こす縁(よすが)でもある。 ・悲:なげきいたむ。こいしがる。 ・逝者:亡くなった者。逝去した人。『論語・子罕篇』「子在川上曰:逝者如斯夫。不舎晝夜。」では、孔子は、過ぎ行く時の流れのようすを謂っている。
※存亡感月一潸然:(あなたが)亡くなって、月に感じるところがあり、ひたすら、涙がはらはらとこぼれる。 ・存亡:亡くなること。「亡」の意。存在と減亡の意の滅亡の意が勝っている。また、生きることと死ぬこと。ここは、前者の意。ここでの「存亡」の義に似た用例は「興亡」。これも「亡」の意。辛棄疾の『南ク子』登京口北固亭有懷「何處望~州?滿眼風光北固樓。千古興亡多少事?悠悠。不盡長江滾滾流。」。 ・感月:月を見て感じるところがある。 ・一:ひとえに。もっぱら。 ・潸然:〔さんぜん;shan1ran2○○〕涙がはらはらと流れるさま。
※月色今宵似往年:月の色や形は、今宵も往時とそっくりである。 ・月色:月の色や形。 ・今宵:〔こんせう;jin1xiao1○○〕今夜。今宵(こよい)。「今夜」としないで、「今宵」としたのは、平仄の関係による。「今宵」〔こんせう;jin1xiao1○○〕は「○○」とすべきところに使い、「今夜」〔こんや;jin1ye4●○〕は「●●」とすべきところで使う。作者は正しく使い分けをしている。 ・似:似ている。…の如くである。 ・往年:昔。過ぎ去った歳月。
『BotanicalGarden』よりお借り致しました
写真撮影:青木繁伸(群馬県前橋市)
※何處曾經同望月:どこで、一緒に月見をしたかといえば。 ・何處:〔かしょ;he2chu4○●〕どこ。いづこ。 ・曾經:〔そうけい;ceng2jing1○○〕かつて。以前に。以前に…したことがある。蛇足になるが、「曾經」は現代語でも同義で使われる。「經」は曾ての経験「…を経てきて…」の意を指すのであって、副詞。 ・同:ともに。一緒になって。同じく。 ・望月:月を眺める。
※櫻桃樹下後堂前:(それは)ユスラウメの木の下で、奥御殿の前の方であった。 ・櫻桃:〔あうたう;ying1tao2○○〕ユスラウメ(写真:右)。また、さくらんぼ。ここは、前者の意。 ・樹下:木の下。 ・後堂:〔こうだう;hou4tang2●○〕奥御殿。後殿。天子や宮女の住む御殿群の一。
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「然年前」で、平水韻下平一先。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●○○○◎●,
○○●●●○○。(韻)
2006.3.30 3.31完 2007.8.14補 |
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