豆架瓜棚暑不長, 野人籬落占秋光。 牽牛花是隣家種, 痩竹一莖扶上墻。 |
秋を訪ふ絶句
豆架 瓜棚 暑さ 長からず,
野人の籬落 秋光を占む。
牽牛花は 是れ 隣家の種(しゅ),
痩竹 一莖 扶けて 墻(しゃう)に上らす。
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◎ 私感訳註:
※呉錫麒:清代の詩人。
※訪秋絶句:江戸、明治期の日本人は、どのような詩が好きだったのか、その感覚が知りたかったので、日本人・土屋榮の抄するところの『清詩佳絶』を見た。南宋・陸游の『秋懷』「園丁傍架摘黄瓜,村女沿籬采碧花。城市尚餘三伏熱,秋光先到野人家。」の強い影響を受けている。
※豆架瓜棚暑不長:豆の(畑の)支柱にヘチマの棚には、暑さはそう長くはない。 ・豆架:(えんどう)豆などの茎を支える柱。 ・瓜棚:ヘチマの蔓を匍わせる棚(たな)。前出・陸游『秋懷』では「黄瓜」でキュウリのこと。 ・不長:そう長くはない、短い、間もなく終わる、の形容詞系の意。前出・陸游『秋懷』では「尚餘三伏熱」と表現するところ。 ・長:〔ちゃう;chang2○〕ながい。形容詞。蛇足になるが、動詞の意の、長ずる、生長する、大きくなる、は:〔ちゃう;zhang3●〕。ここは韻脚で、前者の形容詞「ながい」〔ちゃう;chang2○〕平声。
※野人籬落占秋光:庶民の(住まいの)垣根には、秋の気配が占めている、 ・野人:庶民。田舎者。 ・籬落:〔りらく;li2luo4○●〕まがき。「落」はかこい。 ・占:しめる。 ・秋光:秋の景色。秋の日光。
※牽牛花是隣家種:アサガオは、お隣さんが植えたもので。 ・牽牛花:〔けんぎうくゎ;qian1niu2hua1○○○〕アサガオの花。前出・陸游『秋懷』では「碧花」で、やはりアサガオのこと。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・隣家:おとなり。 ・種:〔しゅ;zhong4●〕植える。植えたもの。動詞系。蛇足になるが、名詞「たね」は〔しゅ;zhong3●〕になる。
※痩竹一莖扶上墻:細い竹一本にすがって、垣を攀(よじのぼ)ってきている。 ・痩竹:細い竹。 ・一莖:一本。 ・莖:〔けい;jing1○〕くき。 ・扶:(手を添えて)たすける。(杖をついて)ころばないようにする。 ・上:のぼる。あがる。 ・墻:〔しゃう;qiang2○〕かき。へい。かこい。=牆。
◎ 構成について
2007.9.11 9.12 9.15 |