懷君屬秋夜,
散歩詠涼天。
山空松子落,
幽人應未眠。
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秋夜 丘二十二員外に 寄す
君を 懷ひて 秋夜に屬し,
散歩して 涼天に詠ず。
山 空しくして 松子(しょうし) 落ち,
幽人(いうじん) 應(まさ)に未だ眠らざるべし。
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◎ 私感註釈
※韋應物:中唐の詩人。737年(開元二十五年)〜804年頃(貞元年間)。謝霊運、陶淵明の伝統を継ぐ自然派詩人。京兆万年(現・西安)の人。
※秋夜寄丘二十二員外:秋の夜に、丘家の二十二男である員外郎の丘丹に手紙と詩を出した。 *なお、この詩を受け取った丘丹は、『和韋使君秋夜見寄』「露滴梧葉鳴,秋風桂花發。中有學仙侶,吹簫弄山月。」を作った。 ・秋夜:秋の夜。 ・寄:手紙で届ける。手紙で送る。 ・丘:姓の一。名は丹。蘇州の人。 ・二十二:排行で、(男兄弟の)二十二番目。二十二男(大家族制での)。 ・員外:補佐役。定員以外に補任された官。=員外郎。
※懷君屬秋夜:あなたを懐かしく思い出しているのは、おりしもちょうど秋の夜であり。 ・懷:なつかしく思い出す。 ・君:あなた。 ・屬:ちょうどいま。おりしも。たったいま。いましたばかり。まさに。たまたま。≒適。
※散歩詠涼天:すずしい秋の夜をそぞろ歩きをして詩をうたった(りした)。 ・散歩:そぞろ歩き。 ・詠:詩をよむ。詩を作る。詩をうたう。 ・涼天:すずしい秋の季節。
※山空松子落:山には人気がなく(静かなので)、松笠の落ちる(音がよく響くが)。 ・山空:山には人気がない。山は、葉が散って人気がない。なお、王維の『鹿柴』では「空山不見人,但聞人語響。返景入深林,復照青苔上。」とあるが、「山空」と「空山」とはどちらも○○だが、句の構成が異なる。「山空松子落」と「空山不見人」では、それぞれが句中の対になっており、
山空松子落: 山空 松子落 :山は 空しく ⇔ 松子は 落ちる 実・虚+実・虚 空山不見人: 空山 不見人 :空しい 山 ⇔ 見えない 人 虚・実+虚・実
というように、句中の前半と後半の構成を揃えるための配慮による。盛唐・王維は『鳥鳴澗』では「人闌j花落,夜靜春山空。月出驚山鳥,時鳴春澗中。」とする。 ・松子:松笠。まつかさ。
※幽人應未眠:人里離れて静かに暮らしているあなた(のところでも、松笠の落ちる音がよくして)おそらく、まだ寝られないでいることだろう。 ・幽人:人里離れて静かに暮らしている人。世を遁れた人。隠者。隠棲している人。ここでは、丘丹を指す。李白に『山中與幽人對酌』「兩人對酌山花開,一杯一杯復一杯。我醉欲眠卿且去,明朝有意抱琴來。」がある。 ・應:きっと…だろう。まさに…べし。 ・未眠:まだ眠っていない。
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◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「天眠」で、平水韻下平一先。次の平仄はこの作品のもの。
○○●○○,
●●●○○。(韻)
○○○●●,
○○○●○。(韻)
2007.10.16完 2012. 8. 8補 2017. 9.16 |
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