從軍樂,告國民:
世界上,國竝立,競生存。
獻身護國誰無份?!
好男兒,莫退讓,發願做軍人。
******
從軍樂
從軍樂 , 國民に告ぐ:
世界上, 國竝立 して, 生存を競 ふ。
身を獻 げ 國を護 ること誰 か份 無からん?!
好 男兒,退讓 する莫 れ, 軍人と做 るを發願 せよ。
*****************
◎ 私感註釈
※梁啓超:清末・中華民国初期の政治家・思想家。1873年(同治十二年)〜1929年(中華民国十八年)。字は卓如。号は任公、飲冰室主人。広東省新会の人。康有為に師事し、立憲君主制を主張、維新を目指し戊戌変法に参与したが百四日で失敗(戊戌政変)、日本に亡命した。日本語文献を通じて、西洋ブルジョアジーの新しい社会・政治・経済・哲学・歴史などの理論を紹介した。民国時代は、司法総長などを歴任した。
※従軍楽:従軍はすばらしい。梁啓超が作った軍歌で、楽府題の『從軍行』(従軍の苦を歌った詩)をもじったもの。十一番まであるが、それらの押韻箇所は全てこれに同じ。当時、「好人不當兵,好鐵不打釘。」(まともな人間は兵隊にはならず、まともな鉄(=純度の高い鉄)は釘にはならない)という諺があったほど、兵士になることは忌避され、実態としても、流氓が兵士となっていたという時代背景がある。 ・從軍:軍隊に入って戦争に行く。=従戎。 ・樂:〔らく;le4●〕蛇足になるが、『C平樂』の「樂」は〔がく;yue4●〕。
※從軍樂告國民:従軍はすばらしい! 国民に(以下のように)告げるが。 ・國民:国民。その国の国籍を有する者。ただし、現在では、日本語の「国民」に該る中国語は“公民”。『中華人民共和国憲法』での表記に因るが、中国の近現代史を見れば「国民党」があり、それとの紛らわしさを避けるための配慮もあるのか。
※世界上國竝立競生存:世界では、国々が並んで立って、生存を競(きそ)いあっている。 ・世界上:世界で。 ・竝立:二つ以上のものが並んで立つ。また、同時に存在する。 ・競:きそう。
※獻身護國誰無份:身をささげて、国をまもることに、誰に持ち分がなかろうか。(みんなあるのだ!) ・獻身:身をささげる。 ・護國:国をまもる。 ・誰無:だれが…などなかろうか。(みんなあるのだ!) ・份:〔ふん;fen4●〕…の分(ぶん)。持ち分。分け前。
※好男兒莫退讓發願做軍人:りっぱな男よ! 退き譲るなかれ。軍人となる誓いを立てて(人々を救おうではないか)。 ・好男兒:りっぱな男。 ・莫:…するな。…なかれ。 ・退讓:〔たいじゃう;tui4rang4●●〕へりくだり譲る。 ・發願:誓いを立てる。願をかける。人々を救おうという心を起こす。 ・做:…となる。「做」≒「作」。「做」は「作」の俗字で、意味上、「做/作」を明確に区別することは困難である。現代語で、具体的なものを作る場合の表現には、「做」を多く用いる。名詞としては「做」は用いない。名詞としては「作」を用いて「大作」「傑作」などとする。
***********
◎ 構成について
韻式は「AAaA」。韻脚は「民存份人」で、平水韻や新韻では特定し難いが、-n韻。この作品の平仄は次の通り。
○○●,●●○:(韻)
●●●,●●●,●○○。(韻)
●○●●○○●?(韻)
●○○,●●●,●●●○○。(韻)
2011.7.31 8. 1 |
トップ |