有家不得歸, 有涙無處垂。 有法不公正, 有冤訴向誰。 |
辭世
家有 れども 歸るを得 ず,
涙有 れども垂 るる處 無し。
法有 れども 公正ならず,
冤 有 れども誰 に向かってか訴へん。
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◎ 私感訳註:
※川島芳子:(=愛新覚羅顕㺭)。昭和時代前期の満蒙独立運動家。清・光緒三十三年(明治四十年 1907年)〜中華民國三十七年(昭和二十三年 1948年)。清朝の皇族・第十代粛親王善耆の第十四王女。川島浪速の養女となり、大正二年(1913年)に来日。昭和のはじめ、清朝の再興を期して上海に渡る。以後、日本軍に協力して情報活動に従事し、男装の麗人といわれた。日本の敗戦後、中華民国政府によって漢奸として逮捕され、昭和二十三年三月二十五日、銃殺された。四十二歳。北京出身。松本高女卒。本名は愛新覚羅顕㺭。字は東珍。号して誠之。漢名は金璧輝。俳名は和子。芳麿、良輔とも名乗る。
※辞世:死に臨んで残す詩歌。「家あれども帰り得ず 涙あれども語り得ず 法あれども正しきを得ず 冤あれども誰にか訴えん」
※有家不得帰:家があっても、帰ることが出来ない。 ・有-:ある。所有している。「有」の後の名詞(「家」)は、後の動詞(「帰」)の対象。 ・不得:…ことができない。…してはならない。…するを得ず。「有家帰不得」の意。盛唐・杜甫の『哀江頭』に「少陵野老呑聲哭,春日潛行曲江曲。江頭宮殿鎖千門,細柳新蒲爲誰香B憶昔霓旌下南苑,苑中萬物生顏色。昭陽殿裏第一人,同輦隨君侍君側。輦前才人帶弓箭,白馬嚼齧黄金勒。翻身向天仰射雲,一笑正墜雙飛翼。明眸皓齒今何在,血汚遊魂歸不得。清渭東流劍閣深,去住彼此無消息。人生有情涙霑臆,江草江花豈終極。黄昏胡騎塵滿城,欲往城南望城北。」とある。
※有涙無処垂:涙があっても、流すところがない。 ・無処-:どこにもない。ところとして…なし。 ・垂:たらす。たれる。
※有法不公正:法律はあっても、公明正大でない。 ・不公正:公明正大でない。
※有冤訴向誰:ぬれぎぬであっても、誰に訴えようか。 ・冤:〔ゑん;yuan1○〕ぬれぎぬ。無実の罪。 ・訴:うったえる。言う。 ・向誰:だれに(対して)。
◎ 構成について
2015.7.21 7.22 |
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