便從一雨望豐年, 大抵人情慰目前。 我比老農還計短, 只貪今夜夜涼眠。 |
雨後
便 ち 一たび雨ふる從 り 豐年を望む,
大抵 人情は目前 を慰む。
我 老農 に比 して還 ほ計 短く,
只 だ今夜 夜涼 を貪 りて眠らんのみ。
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◎ 私感訳註:
※査慎行:清代の詩人。順治七年(1650年)〜雍正五年(1727年)。初めの名は嗣l。字は夏重。号して査田。文字獄の後、名を慎行と改め、字を悔餘とし、他山と号した。浙江省海寧袁花の人。康熙四十二年の進士で、翰林院編修。「清初六家」の一。
※雨後:雨の降った後。 ・雨:〔う:yu3●〕名詞:あめ。 〔う:yu4●〕動詞:あめふる。
※便従一雨望豊年:ひとたび雨が降れば、すぐに(農民は)豊年を望む。北宋・柳永の『雨霖鈴』に「寒蝉淒切,對長亭晩,驟雨初歇。キ門帳飮無緒,留戀處,蘭舟催發。執手相看涙眼,竟無語凝噎。念去去千里煙波,暮靄沈沈楚天闊。 多情自古傷離別,更那堪、冷落清秋節。今宵酒醒何處?楊柳岸、曉風殘月。此去經年,應是良辰好景虚設。便縱有千種風情,更與何人説。とある。(「便從」と「便縱」とでは意味が異なるが…) ・便:もう。すぐに。…であれば…だ。…ならすなわち。…すなわち。 ・従:…から。…より。時間・範囲・変化の起点を示す。 ・望:希望する。
※大抵人情慰目前:(しかしながら、わたしは)大体(だいたい)、人情としては(遠い将来のことまで慮(おもんばか)らないで)今のことで安んじて(しまう)。 ・大抵:ほぼ。大体(だいたい)。 ・慰:慰める。安んずる。 ・目前:目下。現在。今のところ。 *日本語の中での「目前(もくぜん)」は、「きわめて真近か」の意があるが、漢語では「いま」の意。
※我比老農還計短:わたしは、経験豊かな農民よりも、なお考えが短絡的で。 ・比:…よりも。…に比べて。介詞。 ・老農:経験豊かな農民。 ・還:(…よりも)なお。さらに。 ・…比…還…:…よりも…のほうがさらに…。【A比B還…】(BよりもAのほうがさらに…/AはBよりもさらに…) ・計:はかりごと。考え。
※只貪今夜夜涼眠:ただ、今夜、夏の夜の涼気を貪(むさぼ)りたいだけだ。 ・只:ただ…だけだ。 ・貪:むさぼる。 ・夜涼:夏の夜の涼気。夜の納涼。
◎ 構成について
2017.8.5 |
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