漁父詞 | |
清・陳文述 |
打槳湖邊問酒家,
青山澹冶隔明霞。
風過處,
縠紋斜,
蓑衣吹滿碧桃花。
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漁父詞
槳 を打 ぎ 湖邊に酒家 を問 ふ,
青山澹冶 明霞 を隔 つ。
風過 ぎし處,
縠紋 斜めに,
蓑衣 に 吹き滿 つ碧桃 の花。
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◎ 私感註釈
※陳文述:清の詩人。乾隆三十六年(1771年)〜道光二十三年(1843年)。初名は文傑。字は譜香、雲伯、英白。後に文述と改名。号して退庵、雲伯、碧城外史等。銭塘(現・浙江省杭州)の人。嘉慶五年(1800年)の挙人。浙江学政であった阮元の幕下に入り、治水などに功があった。詩は、西崑体に巧みであった。
※漁父詞:詞牌の一。これは『漁父詞四首』の一(春)。その二が「雨後蜻蜓散夕陽,晩來水碧似清湘。明鏡裏,月華涼,荷花世界柳絲ク。」。その三が「楓葉瀟瀟幾點秋,蘆埼曲曲漾清流。隨處好,艤扁舟,水葓花下一雙鴎。」。その四が「澗曲橋低路幾重,漁莊隱約暮煙中。攜瘦鶴,送飛鴻,萬梅花下一孤篷。」。
※打槳湖辺問酒家:櫂(かい)で船を漕(こ)いでいて、湖のほとりで(船を停めて)、酒屋(はどこにあるかということ)をたずねた。 ・打槳:櫂(かい)で船を漕(こ)ぐ。 ・槳:〔しゃう;jiang3●〕櫂(かい)。かじ。 ・湖辺:湖のほとり。ここでは郷里の杭州・西湖になろうか。 ・問:たずねる。とう。 ・酒家:酒屋(さかや)。酒店。晩唐・杜牧の『C明』に「C明時節雨紛紛,路上行人欲斷魂。借問酒家何處有,牧童遙指杏花村。」とある。
※青山澹冶隔明霞:うっすらとした青い山影が、夕焼け空を遮(さえぎ)っている。 ・青山:樹木が青々と茂っている山。また、墳墓の地。ここは、前者の意。晩唐・杜牧の『寄揚州韓綽判官』に「山隱隱水遙遙,秋盡江南草木凋。二十四橋明月夜,玉人何處ヘ吹簫?」とある。 ・澹冶:〔たんや;dan4ye3●●〕うっすらとして美しい。=淡冶〔たんや;dan4ye3●●〕。 ・隔:遮る。仕切る。隔てる。 ・明霞:きらびやかに輝く焼けの霞や雲。
※風過処:風が吹いた後のところに。
※縠紋斜:(風のために、)皺(しわ)模様の波紋が斜めに(起こり)。 ・縠:〔こく;hu2●〕ちりめん。しわ模様のあるうすでのちぢみ絹。 ・縠紋:皺(しわ)模様の波紋を謂う。中唐・劉禹錫の『竹枝』に「江上春來新雨晴,瀼西春水縠紋生。橋東橋西好楊柳,人來人去唱歌行。」とある。
※蓑衣吹満碧桃花:(風のために、)蓑(みの)に、碧桃(へきとう)の花が吹きかかって、いっぱいになっていた。 ・蓑衣:〔さい;suo1yi1○○〕みの。萱、菅、藁等の茎や葉を編んで作った雨具。中唐・柳宗元の『江雪』に「千山鳥飛絶,萬徑人蹤滅。孤舟簑笠翁,獨釣寒江雪。」とあり、中唐(?)・張志和の『漁歌子』に「西塞山前白鷺飛,桃花流水魚肥。笠,蓑衣,斜風細雨不須歸。」とあり、北宋・蘇軾の『浣溪沙』に「西塞山邊白鷺飛,散花洲外片帆微。桃花流水鱖魚肥。 自庇一身箬笠,相隨到處蓑衣。斜風細雨不須歸。」とあり、北宋・周紫芝の『漁父詞』に「好個~仙張志和,平生只是一漁蓑。和月醉,棹船歌。樂在江湖可奈何。」とある。 ・碧桃:桃の一種で、結実しない種。花は八重咲きで白やピンクの花瓣。
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◎ 構成について
◎ 漁父詞 (漁歌子ともいう)
二十七字。単調。平韻一韻到底。韻式は「AAA」。韻脚は「家霞斜花」で、詞韻第十部平声六麻。
●○○●●○,(韻)
○●●○○。(韻)
○●●,
●○○,(韻)
○●●○○。(韻)
2017.5.11 5.12 |
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