Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


賣花聲 題岳陽樓 
北宋・張舜民



木葉下君山。
空水漫漫。
十分斟酒斂芳顏。
不是渭城西去客,
休唱陽關。


醉袖撫危欄。
天淡雲閒。
何人此路得生還。
回首夕陽紅盡處,
應是長安。







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賣花聲 岳陽樓に題す

木葉(ぼくえふ) 君山(くんざん)()りて。
空水(くうすゐ) 漫漫(まんまん)たり。
十分に 酒を()みて  芳顏(はうがん)(をさ)む。
()れ 渭城(ゐじゃう)の西に去る(かく)にあらず,
(うた)ふを()めよ 『陽關(やうくゎん)』を。


醉袖(すゐしう) 危欄( き らん)()せば。
(あは)く 雲 (かん)たり。
何人(なんぴと)か ()(みち)  生還を()たる。
(かうべ)(めぐ)らせば 夕陽(せきやう)  (くれなゐ)()くる處,
(まさ)()れ 長安なるべし。

                    ****************





◎ 私感註釈

※張舜民:北宋の人。生歿年不詳。字は芸叟〔うんそう;Yun2sou3〕。浮休居士、矴斎と号す。邠州(現・陝西省邠県)の人。治平の進士。後、政争に絡んで、郴州(洞庭湖の南300キロメートルのところ=現・湖南省最南端)に左遷される。その途上、岳陽を通って、この『売花声』二首を作った。

※売花声:詞牌の一。『浪淘沙令』の別名。

※題岳陽楼:岳陽楼についての詞を作る。 ・題-:…について詩詞を作る。 ・岳陽楼:岳州(現・湖南省)の北部の洞庭湖畔の岳陽の街を囲む城壁の西門の楼。洞庭湖東北端に臨み、長江へ連なる水路の口にあたるところにある。岳陽城。北宋の范仲淹(范希文)の『
岳陽樓がある。唐・賈至の『岳陽樓重宴別王八員外貶長沙』「江路東連千里潮,青雲北望紫微遙。莫道巴陵湖水闊,長沙南畔更蕭條。」や、盛唐・杜甫の『岳陽樓』の「昔聞洞庭水,今上岳陽樓。呉楚東南,乾坤日夜浮。親朋無一字,老病有孤舟。戎馬關山北,憑軒涕泗流。」や、南宋・陳與義の『登岳陽樓』「洞庭之東江水西,簾旌不動夕陽遲。登臨呉蜀橫分地,徙倚湖山欲暮時。萬里來遊還望遠,三年多難更憑危。白頭吊古風霜裏,老木蒼波無限悲。」がある。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)57-58ページ「唐 江南西道」、『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期63-64ページ「南宋 荊湖南路荊湖北路 京西南路」の洞庭湖東畔に、岳州、巴陵とある。そこにある楼門

※木葉下君山:木の葉が(洞庭湖対岸の)君山に散る。 ・木葉下:木の葉が…に散るの意で、この句の由来は後出・『楚辭・九歌・湘夫人』に「帝子降兮北渚,目眇眇兮。嫋嫋兮秋風,洞庭波木葉。」に因る。 ・君山:洞庭山のこと。岳陽市の南西15キロメートルの洞庭湖の中にある小島。洞府山とも称した。岳陽楼の対岸(西側)にある小山。上の地図中央。その名の由来は「湘
の墓所」の意で、屈原は、舜の妃の「娥皇」「女英」のことを『九歌』で、「湘君」「湘夫人」とうたった。『楚辭・九歌・湘夫人』に「帝子降兮北渚,目眇眇兮。嫋嫋兮秋風,洞庭木葉。」とあり、南宋・戴復古は『柳梢靑・岳陽樓』で「袖劍飛吟,洞庭靑草,秋水深深。萬頃波光,岳陽樓上,一快披襟。   不須攜酒登臨。問有酒、何人共斟?變盡人間,君山一點,自古如今。」と詠う。

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岳陽楼前より岳陽門と洞庭湖を望む。
大陸旅游倶楽部三國志篇より賜る
各地名の位置関係             


※空水漫漫:空と(洞庭湖の)水面が限りない。 ・空水:空と水面。 ・漫漫:〔まんまん;man2man2○○〕時間や空間の限りないさま。路が長々と続いているさまであり、時間が長々と経ったことも謂う。この「漫」:〔まん;man2○〕(ひろい。水の果てしなく広いこと。みなぎる。ひろがる。みだれる。ほしいまま≒慢)は両韻で〔まん;man4●〕(ひろい。水の果てしなく広いこと。みちる≒滿)もある。後漢/魏・蔡琰(文姫)の『胡笳十八拍』の十七に「拍兮心鼻酸,關山阻修兮行路難。去時懷土兮心無緒,來時別兒兮思
漫漫。塞上黄蒿兮枝枯葉干,沙場白骨兮刀痕箭瘢。風霜凜凜兮春夏寒,人馬飢豗兮筋力單。豈知重得兮入長安,歎息欲絶兮涙闌干。」や、前出・岑參の『逢入京使』「故園東望路漫漫,雙袖龍鐘涙不乾。馬上相逢無紙筆,憑君傳語報平安。」など、これらの例は平声での「漫漫」の用例(『胡笳十八拍』は韻脚であり、その韻の用い方から平韻であること分かり、『逢入京使』は韻脚であることと、近体詩であって、その平仄の配列から平韻であることが分かる)。また、南宋・陸游の『小園』其三「村南村北鵓鴣聲,水刺新秧漫漫。行遍天涯千萬里,却從鄰父學春耕」とあるのは、仄韻としての用例。(前二者は平韻の押韻で当該字は韻脚であり、○○とみるべきところ。後者は「●●○○●●○」とすべき句の●●のところで使われている)。蛇足になるが、現代語では「漫」は〔まん;man4●〕のみ。

※十分斟酒斂芳顔:(もてなしの女性は)大層に酒を注いで、美しい顔をひそめ(てい)る。 ・十分:大層。非常に。 ・斟酒:酒をつぐ。酒を注ぐ。 ・斂:〔れん;lian3●〕ひそめる。おそれつつしむ。 ・芳顔:美しい顔。芳しい顔。ここでは接待する女性の美しい容貌を謂う。また、他人を敬って、その顔をいう語。=尊顔。ここは、前者の意。東晉・陶潛の『諸人共游周家墓柏下』に「今日天氣佳,清吹與鳴彈。感彼柏下人,安得不爲歡。清歌散新聲,綠酒開
芳顏。未知明日事,余襟良以殫。」とある。ただし、陶淵明の詩の「芳顔」では、アルコールがまわったくつろいだ表情。

※不是渭城西去客:(しかしながら、わたしは)渭城の西の方へ行く旅行者ではない。「渭城の西の方へ行く旅行者」とは、王維の『送元二使安西』(『陽関』=後世、送別の歌となる)「渭城朝雨裛輕塵,…西出陽關無故人。」を指す。 ・不是:(…は)…ではない。これ…ならず。 「是」:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・渭城:〔ゐじゃう;Wei4cheng2●○〕地名。長安の西北にあり、渭水を北に越えたところにある。現在の咸陽あたり。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)40-41「唐 京畿道 関内道」では咸陽と記されている。盛唐・王維の『送元二使安西』に「
渭城朝雨裛輕塵,客舍靑靑柳色新。勸君更盡一杯酒,西出陽關無故人。」とある。 ・西去客:(渭城から出発して、更に陽関を越えて)西の方に行く旅人、の意。前出・王維の『送元二使安西』「西出陽關無故人」を踏まえたもの。

※休唱陽関:(だから)『陽関(三畳)』を唱うな。 ・休:…するな。やめよ。副詞。 ・陽関:関所名。敦煌の西にある。ここではを送別の歌としての『陽関』謂う。前出・王維の『送元二使安西』に「渭城朝雨裛輕塵,客舍靑靑柳色新。勸君更盡一杯酒,西出陽關無故人。」を三回くり返して歌い、惜別の歌とした。
『陽關三疊』については、こちらを参照→

※酔袖撫危欄:酔った姿で、高殿の手すりを打ち(遠くを眺めて物思いに耽る)。 ・撫:〔ぶ;fu3●〕叩(たた)く。打つ。=拊。 ・危欄:高い所の手すり。高殿の手すりで、遠くを眺めて物思いに耽る姿を暗示する表現。 ・危:高い。

※天淡雲閑:空や雲が、冷ややかでひっそりとしたさまだ。 ・天淡雲閑:空や雲が冷ややかでひっそりとしているさま・状態の形容。「天淡雲閑」は「S・A+S・A」といった互文表現。「空が冷ややかで雲がひっそりとしているさま」という状態の形容。「
」は、「天淡」「雲閑」といった似通った語句の互文のいいまわし。方向詞、対義語、反義語から構成された主語+述語「S・V+S・V」(「S・A+S・A」)構造のとき、その形容する表現として、この互文表現が見受けられる。現代・毛澤東の『人民解放軍占領南京』に「鍾山風雨起蒼黄,百萬雄師過大江。今勝昔,慨而慷。宜將剩勇追窮寇,不可沽名學覇王。天若有情天亦老,人間正道是滄桑。」とある「虎踞龍盤」は地勢の険峻なさまの形容で、竜虎が蟠踞する(とぐろを巻き、うずくまっている)ような状態の形容。この表現は、辛棄疾の『念奴嬌』「我來弔古」にも見られる。毛沢東に『清平樂 六盤山』一九三五年十月に「天高雲淡,望斷南飛雁。不到長城非好漢,屈指行程二萬。   六盤山上高峰,紅旗漫捲西風。今日長纓在手,何時縛住蒼龍?」がある。

※何人此路得生還:どういう人が、この路を生きて帰ることができたのだろうか。 ・何人:なんぴと。どういう人。いかなる人。 ・此路:湖南省最南端への旅路。

※回首夕陽紅尽処:後ろを振り向けば、夕日の赤い色が尽きるところ(は)。 ・回首:後ろを振り向く。頭を振り向ける。首(こうべ)をめぐらす。 ・紅尽処:(夕日の)赤い色が尽きるところ。この詞では「振り返れば夕日の赤い色が尽きるところ、そこは都の長安(汴京(べんけい))だろう」と詠っているが、位置関係が少しおかしい……。(右側の下段の図を参照。)

※応是長安:きっと長安(の都)なのだろう。 ・応是:当然…であろう。まさにこれ…なるべし。 ・長安:(唐の)首都。なお、北宋の首都は汴京(べんけい; Bian4jing1)(=開封(かいほう;Kai1feng1))。それゆえ、「長安」との表現だが、実際には、北宋の首都の汴京(べんけい)を指す。


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◎ 構成について

◎ 賣花聲  浪淘沙 浪淘沙令 過龍門 練丹砂 ともいう。
 五十四字(双調)。平韻一韻到底。韻式は「AAAA AAAA」。 前後の韻式は同じ。韻脚は「山漫顏關 欄閑還安」で、詞韻第七部平声十四寒十五刪。 
 
●●○○,(A平韻)
●○○。(A平韻)
●●○○。(A平韻)
○○●●,
●○○。(A平韻)


●●○○,(A平韻)
●○○。(A平韻)
●●○○。(A平韻)
○○●●,
●○○。(A平韻)
2017.5. 5
     5. 6
     5. 7
     5. 8
     5. 9
     5.10




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