山居雜詩 | |
金・元好問 |
鷺影兼秋靜,
蟬聲帶晩涼。
陂長留積水,
川闊盡斜陽。
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山居雜詩
鷺影 秋靜 に兼 へ,
蟬聲 晩涼 を帶ぶ。
陂 長くして積水 を留 め,
川闊 くして 斜陽盡 く。
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◎ 私感註釈
※元好問:金の文学者。字は裕之。号して遺山。1190年〜1257年。北魏の拓跋氏の家系。なお、当時の金は、満洲、華北、華中をおさえていた。
※山居雑詩:山中生活での諸々の詩。 *『山居雑詩』は全て六首あり、その六首全てが対句のみで構成されている、極めて技巧的な詩篇である。 ・山居:山中に住むこと。 ・雑詩:興の趨(おもむ)くままに作った、型にとらわれない詩。
※鷺影兼秋静:サギの姿は、秋の静かさをあわせもって表して。 ・鷺影:サギの姿。サギの影。 ・兼:加える。兼ね合わせる。あわせもつ。かねる。この「兼」については、対句の「蝉聲帯晩涼」を見れば、「兼」は「帶」と対になっており、動詞。なお、「兼」は介詞的な意「かねて、あわせて、ともに、と」等があるが、詩の構成から見て、作者の意図と異なる。
※蝉聲帯晩涼:セミの鳴き声は、(夏の)夕方の涼しさをおびている。 ・蝉聲:セミの鳴き声。 ・帶:(…を)おびる。盛唐・劉長卿の『送靈K』に「蒼蒼竹林寺,杳杳鐘聲晩。荷笠帶斜陽,青山獨歸遠。」とあり、日本・太宰春臺の『登白雲山』に「白雲山上白雲飛,幾戸人家倚翠微。行盡白雲雲裡路,滿身還帶白雲歸。」とある。 ・晩涼:夕方の涼しさ。涼しくなった夏の夕方。
※陂長留積水:堤防は長い(ので)、あつまった水を溜めて。 ・陂:〔は;po1○、ひ;pi2●、bei1〕坂。堤。土手。 ・留:とどめおく。とどめる。 ・積水:あつまりたまった水。海水、湖水などを謂う。王維は『送祕書晁監還日本國』「積水不可極,安知滄海東。九州何處遠,萬里若乘空。向國惟看日,歸帆但信風。鰲身映天K,魚眼射波紅。ク樹扶桑外,主人孤島中。別離方異域,音信若爲通。」とある。
※川闊尽斜陽:川幅は広い(ので)、夕陽が沈んでいく(のが見える)。 ・闊:〔くゎつ;kuo4●〕ひろい。両方に限りがあり、見わたして幅広である。 ・尽:この句も「川闊尽斜陽」と「陂長留積水」とは対句で、「留」と「尽」が対。「尽」には動詞で「つくす、つきる」意があり、副詞的な用法では「ことごとく」の意がある。ここでは「留」と「尽」が対なので、「尽」を動詞「つくす、つきる」意と見るのが妥当。 ・斜陽:西に傾いた日。夕日。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「涼陽」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
○●●○○。(韻)
2011.9.4 |
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