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柳絮 | |
南宋・居簡 |
輕輕漠漠又斜斜,
去作靑萍漾水涯。
院落晩風閑意緒,
合分一半與梨花。
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柳絮
輕輕 漠漠 又 た斜斜 ,
去りて青萍 と作 りて水涯 に漾 ふ。
院落 晩風 意緒 閑 に,
合 に一半 を分 かちて梨花 に與 ふべし。
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◎ 私感註釈
※居簡:〔こかん;Ju1jian3〕南宋の臨濟宗の僧侶。興隆二年(1164年)~淳祐六年(1246年)。字は敬叟。俗姓は王、或いは龍。潼川府(現・四川省三台)の人。潼川で出家し、杭州の浄慈寺などで仏法を修め、八十三歳の長寿を全うした。世に「北澗の居簡」と称される。
※柳絮:〔りうじょ;liu3xu4●●〕柳の花が咲いた後の風に舞う綿毛のある種子。風に従って動くものの譬喩。流離(さすら)うもの。政治的な節操もなく情況に流されて揺れ動く者。南唐後主・李煜の『望江梅』に「閑夢遠,南國正芳春。船上管絃江面淥,滿城飛絮輥輕塵。忙殺看花人。 閑夢遠,南國正淸秋。千里江山寒色暮,蘆花深處泊孤舟。笛在月明樓。」とあり、北宋・司馬光の『居洛初夏作』に「四月淸和雨乍晴,南山當戸轉分明。更無柳絮因風起,惟有葵花向日傾。」
とあり、北宋・蘇軾の『和孔密州五絶』東欄梨花に「梨花淡白柳深靑,柳絮飛時花滿城。惆悵東欄一株雪,人生看得幾淸明。」
とあり、朱淑眞の『蝶戀花』送春「樓外垂楊千萬縷,欲系青春,少住春還去。猶自風前飄柳絮,隨春且看歸何處。 綠滿山川聞杜宇,便做無情,莫也愁人苦。把酒送春春不語,黄昏卻下瀟瀟雨。」
とある。
※軽軽漠漠又斜斜:(柳絮は)軽やかに、広々として寂しげに、その上さらに、斜めになって。 *「軽軽漠漠又斜斜」は畳字で構成された、リズミカルで滑らかな句であり、(日本語・漢音(歴史的仮名遣い)では:)〔けいけい ばくばく いう しゃしゃ〕、(中国語・普通話では:)〔qīngqīng mòmò yòu xiéxié(チンチン モーモー イョウ シェシェ)〕、(平仄では:)〔○○ ●● ● ○○〕と、それが実感できる。 ・軽軽:〔けいけい;qing1qing1○○〕軽く。そっと。 ・漠漠:〔ばくばく;mo4mo4●●〕広々として寂しいさま。 ・又:〔いう;you4〕さらに。その上。ふたたび。また。 ・斜斜:斜めになって、傾いて、の意。
※去作靑萍漾水涯:(飛んで)行って、ウキクサとなって、汀(みぎわ)を漂(ただよ)っている。 ・作:(…と)なる。 ・萍:〔へい;ping2○〕ウキクサ。 ・漾:〔やう;yang4●〕ただよう。波が揺れ動く。水に漂い流れる。 ・水涯:〔すゐがい;shui3ya2●○〕みぎわ。川や海などの岸。
※院落晩風閑意緒:中庭を吹きわたる夕風は、気持ちが穏やかなので。 ・院落:中庭。庭の周囲は、建物か垣になっている。閉鎖的な感じのする庭。 ・晩風:夕方に吹く風。夕風。 ・閑:のどか。 ・意緒:〔いしょ;yi4xu4●●〕あれこれの思い。気持ち。
※合分一半与梨花:きっと半分はナシの花に与えたのだろう。(梨の樹に白い花が咲いているのは、きっと、梨の木が夕風から白い柳絮をもらって、自分の白い花としているのだろう) *庭木の梨の花が柳絮に似ていることを、このように表現した。 ・合:まさに…べし。当然の意を示す。≒「當」。また、ともに。こぞって。当然な。 ・分:わける。わかつ。 ・一半:半分。 ・与:あたえる。 ・梨花:ナシの花。春に白い花をつける。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「斜涯花」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○●●●○○。(韻)
2012.6.1 6.2 6.3 |
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