此身儻長在, 敢恨歸無日。 但願郎防邊, 似妾縫衣密。 |
衣 を寄 するの曲
此の身儻 し長 へに在 れば,
敢 へて恨 まんや 歸るに日 無きを。
但 だ願 はくはカ の邊 を防ぐこと,
妾 の 衣を縫ふに密 なるに似 んことを。
************************
◎ 私感訳註:
※羅与之:南宋末期の詩人。字は与甫、また北涯。号して雪坡。螺川(現・江西省吉安南)の人。南宋末の端平年間に科挙を屡々受けるが落第し、世に出ることなく終える。その詩は劉克荘の認めるところとなる。
※寄衣曲:(遠征中の夫の衣更え用の)衣服を(妻が)郵送で送り届ける、(妻の夫に対する切ない思いの歌を、妻の立場で詠う)。『寄衣曲』はこのページの作が第三首で、第一首は「憶郎赴邊城,幾個秋砧月。若無鴻雁飛,生離即死別。」、第二首は「愁腸結欲斷,邊衣猶未成。寒窗剪刀落,疑是劍環聲。」。 ・寄衣:衣服を郵送で送り届ける。当時は兵士の出征の際の服や武器は自腹であったと云う。 ・寄:送り届ける。郵送する。
※此身儻長在:(妻の言:)この肉体が、もし長く生きていられるのならば。 ・此身:この肉体。 ・儻:〔たう;tang3●〕もし。あるいは。かりに。もしも…ならば。 ・長在:長生きをする。とこしえに存在する意。
※敢恨帰無日:(男性の)帰る日のあてがないことをむやみに恨む(でしょうか)。 ・敢:みだりに。むやみに。おもいきって。あえて。しにくいこと、してはならないことを押し切ってする。ここでは、反語として使われている。通常の反語の形式は「敢不…」(敢(あ)へて…せざらんや)。 ・帰無日:帰る日のあてがない意。
※但願郎防辺:ひたすら、あなた(=男性)の国境防衛の仕事(に堅実であること=第四句)を願うばかりです。 ・但願:ひたすら…であることを願う。「但願」は「郎防辺似妾縫衣密」にかかる。盛唐・李白の『將進酒』に「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復回。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金尊空對月。天生我材必有用,千金散盡還復來。烹羊宰牛且爲樂,會須一飮三百杯。岑夫子,丹丘生。將進酒,杯莫停。與君歌一曲,請君爲我傾耳聽。鐘鼓饌玉不足貴,但願長醉不用醒。古來聖賢皆寂寞,惟有飮者留其名。陳王昔時宴平樂,斗酒十千恣歡謔。主人何爲言少錢,徑須沽取對君酌。五花馬千金裘。呼兒將出換美酒,與爾同銷萬古愁。」とあり、後世、北宋・蘇軾が『水調歌頭』で「明月幾時有? 把酒問天。不知天上宮闕,今夕是何年。我欲乘風歸去,又恐瓊樓玉宇,高處不勝寒。起舞弄C影,何似在人間! 轉朱閣,低綺戸,照無眠。不應有恨,何事長向別時圓?人有悲歡離合,月有陰晴圓缺,此事古難全。但願人長久,千里共嬋娟。」とうたう。 ・郎:夫(おっと)。妻が夫を呼ぶことば。 ・防辺:辺境を防備する。
※似妾縫衣密:わたし(=女性)の衣服を縫うのがきめ細かいように。 ・似:(…の)ように。ごとく。また、似て。≒如。 ・妾:〔せふ;qie4●〕わたくしめ。わらわ。謙譲の意を込めた女性の一人称。 ・縫衣:衣服を縫って作る。 ・密:しっかりと。密に。ここでは縫い目が密であるさまをいう。 ・縫:縫う。 ・密:びっしりつまっている。こまかい。中唐・孟郊の『遊子吟』に「慈母手中線,遊子身上衣。臨行密密縫,意恐遲遲歸。誰言寸草心,報得三春暉。」とある。
◎ 構成について
2016.6.16 |