自遣 | |
北宋・王安石 |
閉戸欲推愁,
愁終不肯去。
底事春風來,
留愁愁不住。
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自 ら遣 る
戸を閉 ぢて 愁ひを推 さんと欲 っすれども,
愁ひ終 に肯 て去らず。
底事 ぞ春風 來 れば,
愁ひを留 めんとすれども 愁ひ住 まらず。
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◎ 私感註釈
※王安石:北宋の政治家、改革者。文学者。1021年(天禧五年)〜1086年(元祐元年)。字は介甫。号は半山。撫州臨川(現・江西省臨川)の人。神宗のとき宰相となり、変法(制度改革)を倡え強行したが、司馬光らの反対に遭い、やがて失脚して引退する。散文に優れる。唐宋八大家の一人。
※自遣:みずから憂さを晴らす。みずからを慰める。自分で気を紛らわす。
※閉戸欲推愁:世間との交際を絶って、愁いを推(お)しのけようとする(が)。 ・閉戸:世間との交際を絶つ、意。隠棲する、意。戸を閉める。 ・欲-:…たい。…う。…になろうとする。ねがう。のぞむ。もとめる。ほっする。 ・推:おしのける。
※愁終不肯去:愁いは、結局のところ、去ろうとしなかった。 ・終:結局のところ。とどのつまり。ついに。 ・不肯-:…しようとしない。承知しない。
※底事春風来:(それなのに)どうして、春風が来た(ら)。 ・底事:(古白話)なにごとぞ。どうして。=何事。南宋・張元幹の『賀新カ』送胡邦衡待制赴新州に「夢繞~州路。悵秋風、連營畫角,故宮離黍。底事崑崙傾砥柱,九地黄流亂注。聚萬落、千村狐兔。天意從來高難問,況人情、老易悲難訴。更南浦,送君去。 涼生岸柳催殘暑。耿斜河、疏星淡月,斷雲微度。萬里江山知何處,囘首對牀夜語。雁不到、書成誰與?目盡天懷今古,肯兒曹、恩怨相爾汝。舉大白,聽、金縷。」とある。 ・底:なんぞ。なに。疑問の意を示す助字。盛唐・王維の『田園樂七首』之一に「出入千門萬戸,經過北里南鄰。蹀躞鳴珂有底,崆峒散髮何人。」とある。盛唐・杜甫の『可惜』に「花飛有底急,老去願春遲。可惜歡娯地,キ非少壯時。ェ心應是酒,遣興莫過詩。此意陶潛解,吾生後汝期。」とある。
※留愁愁不住:愁いを留め(ようとしても)、愁いは、止(とど)まろうとしない(のだ)。((なぜだか春になると、)愁いは消えて行くのだ)。 ・留:とどまる。長く同じ所に居る。 ・不住:とどまらず。竹枝詞「瞿塘峽口水煙低,白帝城頭月向西。唱到竹枝聲咽處,寒猿閑鳥一時啼。」では、屡々出てくる。「瞿塘峽口水煙低,白帝城頭月向西。唱到竹枝聲咽處,寒猿閑鳥一時啼。」でも有名。李白に『早發白帝城』「朝辭白帝彩雲間,千里江陵一日還。兩岸猿聲啼不住,輕舟已過萬重山。」があり、中唐・白居易の『送春』に「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」とある。
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◎ 構成について
韻式は、「aa」。韻脚は「去住」で、平水韻去声六御(去)・去声七遇(住)。この作品の平仄は、次の通り。
●●●○○,
○○●●●。(韻)
●●○○○,
○○○●●。(韻)
2019.7.18 7.19 |
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