田園樂七首之一 | |
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唐・王維 |
出入千門萬戸,
經過北里南鄰。
蹀躞鳴珂有底,
崆峒散髮何人。
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田園樂 七首の一
千門 萬戸 に 出入し,
北里 南鄰 を 經過す。
蹀躞 として珂 を鳴らす底 か有らん,
崆峒 に 髮を散ずるは何人 ぞ。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?〜761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※田園楽七首之一:田園(生活)はすばらしい。作者の罔川での田園生活を指す。これは七首のうちのその一。人生の色々な有様-官僚となって権力を振るう者、官能と享楽と游侠の世界にいる者と…。現世の勢威をひけらかす者もいるものの、仙山で修行を積む道士もいるではないか…と、脱俗の生き様に辿り着いたことを詠う。六言詩・『田園楽七首』は、七首とも同様の形式をとっており、第一句と第二句とが対になり、第三句と第四句とが対になって表現されている。この詩の前半の節奏は「□□+□□・□□」となっており、前二語とその後の間の切れ目が大きい(=「□□+□□・□□」)。後半の節奏は「□□・□□・□□」となっている。なお、(『楚辭』などを除いて、)一般的に七言詩の節奏は「□□・□□+□□□」(=「□□・□□+□□・□」or「□□・□□+□・□□」)であり、五言詩の節奏は「□□+□□□」(=「□□+□□・□」or「□□+□・□□」。)(『楚辭』の場合では、七言句、五言句の場合も上述の形式は当て嵌まらない場合が多い)。
※出入千門万戸:宮殿に出入りする高級官僚(に)。 ・出入:出入りする。 ・千門万戸:宮殿の門が多く、人家が極めて多いさま。首都・長安の宮殿の宏大なさまを謂う。また、多くの家々。ここは、前者の意。
※経過北里南隣:色街にいる官能・游侠の徒。 ・経過:通り過ぎる。 ・北里:色街のこと。花柳の巷。遊廓。北にある村里の意で、唐の長安の北部の平康里に妓院が置かれたことによる。また、殷の紂王が作った淫らな舞のこと。ここは、前者の意。
※蹀躞鳴珂有底:馬のくつわ飾りを鳴らして進む(威風堂々とした権勢家)がどうしたというのだ。 ・蹀躞:〔てふせふ(現代仮名遣い:ちょうしょう)die2xie4●●〕馬の歩くさま。また、こまたで歩くさま。行ったり来たりするさま。往来の繁く盛んなさま。徘徊する。ここは、前者の意。 ・珂:〔か;ke1○〕宝石の一種で、白瑪瑙(しろめのう。)くつわ貝で飾った馬のくつわ。馬のおもがいにつける装飾。 ・底:なんぞ。なに。疑問の意を示す助字。盛唐・杜甫の『可惜』に「花飛有底急,老去願春遲。可惜歡娯地,キ非少壯時。ェ心應是酒,遣興莫過詩。此意陶潛解,吾生後汝期。」とあり、後世、南宋・張元幹の『賀新カ』送胡邦衡待制赴新州に「夢繞~州路。悵秋風、連營畫角,故宮離黍。底事崑崙傾砥柱,九地黄流亂注。聚萬落、千村狐兔。天意從來高難問,況人情、老易悲難訴。更南浦,送君去。 涼生岸柳催殘暑。耿斜河、疏星淡月,斷雲微度。萬里江山知何處,囘首對牀夜語。雁不到、書成誰與?目盡天懷今古,肯兒曹、恩怨相爾汝。舉大白,聽、金縷。」とある。
※崆峒散髪何人:崆峒山(こうとうざん)では、冠を脱いで髪を振り乱した者(=君主に仕えない道士たち)は、一体、どのような人だと謂うのだ。(わたしも、崆峒山(こうとうざん)の仙人や道士)のように、俗世の栄華を捨てて生きていくのだ)。 ・崆峒:〔こうとう;Kong1tong2○○〕現・甘粛省平涼市にある山の名。また、山東省にある島の名。ここは、前者の意。 ・散髪:髪を振り乱す。転じて、冠を脱いで、君主に仕えないこと。脱俗の仙人などを謂う。ここは、後者の意。かつて崆峒山(=現・甘粛省平涼市にある山)は、宗教的な聖地であり、多くの道士たちがここで修行をしていたことを指す。 ・何人:どのような人。どういう人。何者。いかなる人。なんぴと。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「鄰人」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●,
○◎●●○○。(韻)
●●○○●●,
○○●●○○。(韻)
2014.5.28 (臺灣) 6. 3 6. 4 |
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