海棠 | |
北宋・蘇軾> |
東風裊裊泛崇光,
香霧空濛月轉廊。
只恐夜深花睡去,
故燒高燭照紅妝。
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海棠
東風 裊裊 として崇光 に泛 ひ,
香霧 空濛 として 月廊 に轉 ず。
只 だ恐る夜 深くして花 睡 り去 らんを,
故 に高燭 を燒 して紅妝 を照らさん。
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◎ 私感註釈
※蘇軾:北宋の詩人。北宋第一の文化人。政治家。字は子瞻。号は東坡。現・四川省眉山の人。景祐三年(1036年)〜建中靖國元年(1101年)。三蘇の一で、(父:)蘇洵の老蘇、(弟:)蘇轍の小蘇に対して、大蘇といわれる。
※海棠:カイドウ。薔薇科の落葉灌木。淡紅色の花を春先につける。
※東風裊裊泛崇光:春風は、しなやかに纏い付くように吹き、気高い月光が高い空から地上を遍(あまね)く照らして。 ・東風:春風。 ・裊裊:〔でうでう/(現代仮名遣い:じょうじょう);niao3niao3●●〕しなやかに纏い付くさま。木が風に揺れるさま。ものの垂れて揺れるさま。 ・泛崇光:月光が高い空から地上を遍(あまね)く照らすさま。 ・泛:〔はん;fan4●〕うかぶ。うかびただよう。 ・崇光:気高かく美しい輝き。 ・崇:〔すう;chong2○〕たかい。たっとぶ。あがめる。
※香霧空濛月転廓:花のよいにおいの霧(きり)がぼんやりと漂い、月がひさしを(or部屋の別の所)に移っていった。 ・転:遷(うつ)る。時間の経過があったことをいう。 ・香霧:よいにおいの霧(きり)。 ・空濛:霧雨が降ってぼんやりするさま。作者(=蘇軾)に、『飮湖上初晴後雨』「水光瀲灧晴方好,山色空濛雨亦奇。欲把西湖比西子,淡粧濃抹總相宜。」がある。 ・月転廓:(時間が経って)月がひさし/部屋の別の所に移っていった。 ・転:遷(うつ)る。時間の経過があったことをいう。 ・廊:ひさし。表座敷の東西の部屋。
※只恐夜深花睡去:ただ、おそれるのは、(海棠(カイドウ)の)花が眠り込んでいくことで。 この句は、「「只・恐」+〔「夜・深」「花・睡去」〕」といった型で繋がっている。 ・只:ただ。…のみ。 ・夜深:夜が更ける。 ・(花)睡去:(海棠(カイドウ)の花が)眠り込んでいく意。 ・-去:動詞の後に附き、現在の動作・状態が、将来に持続していく感じを表す。
※故焼高燭照紅粧:それゆえに、高く大きな燭台を灯(とも)して、美人の装(よそお)いをした(海棠の花)を照らさせている。=紅妝。 ・故:ゆえ(に)。それだから。ことさら(に)。 ・高燭:高く大きな燭台。 ・紅粧:美人の装(よそお)い。化粧した美人。くれないに彩られた水や雲など。ここでは、海棠の花を指す。=紅妝。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「光廊妝」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2021.7. 8 7. 9 7.10 |
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