食茘枝 | |
蘇軾 |
羅浮山下四時春,
盧橘楊梅次第新。
日噉茘枝三百顆,
不辭長作嶺南人。
『東坡絶句』二 卷三 三十二葉 文化四年
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茘枝 を食 す
羅浮 山下 は四時 春 ,
盧橘 楊梅 次第 に新 たなり。
日に噉 らふ茘枝 三百顆 ,
辭 せず長 へに嶺南人 と作 るを。
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◎ 私感註釈
※蘇軾:蘇東坡。北宋の文学者。1037年〜1101年。字は、子瞻、また和仲。号して、東坡居士。眉州眉山(現・四川省眉山)の人。仁宗の嘉祐二年(1057年)の進士。神宗の煕寧年間(1068年〜1077年)、王安石の新法に反対したため、杭州知事に左遷され、哲宗の時には司馬光と政見が合わなかったため、地方へ出て、各地の知州を歴任した。更には、先帝の朝政を誹謗した文章を書いた罪で、遠く恵州に流された。
※食茘枝:レイシを食べる。 ・茘枝:〔れいし;li4zhi1リーチー●○〕れいし。中国南方原産の果物。赤い果皮の中に白色半透明で薫り高い果肉の果物。南方方言(広東語、閩南語)経由の呼称ではライチ。
大きな地図で見る羅浮山(罗浮山)(=中央の山)
※羅浮山下四時春:(わたしのいる)羅浮山(らふざん)の麓(ふもと)は、年中、春(のよう)で。 ・羅浮山:〔らふざん;Luo2fu2shan1○○○〕現・広東省恵州市と広州市との中間点の博羅にある山の名(右の地図の中心の山)。道教の十大名山の一。作者のいる恵州の西北にある山。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)69−70ページ「唐 嶺南道東部」の循州の博羅のすぐ北にあり、『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)34−35ページ「北宋 広南東路 広南西路」の恵州の西寄りの博羅のすぐ北側にある。 ・四時:〔しいじ(しじ);si4shi2●○〕四季。春夏秋冬の四つの季節の総称。また、一日中。ここは、前者の意。東晉・陶潛の『雜詩十二首』其七に「日月不肯遲,四時相催迫。寒風拂枯條,落葉掩長陌。弱質與運?,玄鬢早已白。素標插人頭,前途漸就窄。家爲逆旅舍,我如當去客。去去欲何之,南山有舊宅。」とある。
※盧橘楊梅次第新:キンカンやヤマモモが次々と獲れている。 ・盧橘:〔ろきつ;lu2ju2○●〕金柑(キンカン)の別名。枇杷(ビワ)の別名。ここは、前者の意。 ・楊梅:〔やうばい;yang2mei2○○〕ヤマモモ。苺(いちご)に似た実を結ぶ果樹。 ・次第:つぎつぎと。晩唐の杜牧に『過華清宮絶句』「長安回望繍成堆,山頂千門次第開。一騎紅塵妃子笑,無人知是茘枝來。」とあるり、中唐・白居易の『觀幻』に「有起皆因滅,無不暫同。從歡終作,轉苦又成空。次第花生眼,須臾燭過風。更無尋覓處,鳥跡印空中。」 とある。
※日噉茘枝三百顆:日にレイシを三百個むさぼり食(えるので)。 ・日:日に。日々に。 ・噉:〔たん;dan4●〕食(く)う。くらう。むさぼる。=啖、貪。 ・顆:〔くゎ;ke1●〕まるい物を数える助数詞。また、つぶ。まるい物。ここは、前者の意。
※不辞長作嶺南人:永遠に広東人となっても、かまわない。 ・不辭:いとわない。 ・長作:永遠に…となる。 ・嶺南人:広東人。作者は恵州(現・深?の北50キロメートル)に流された。 ・嶺南:現・広東省一帯を指す。五嶺(南嶺山脈)の南の地方を指し、現・広東省、現・広西壮族自治区、現・海南省と安南の地。唐代の道(どう)(=行政区劃)の一。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)69−70ページ「唐 嶺南道東部」、72−73ページ「唐 嶺南道西部」にある。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「春新人」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2011.5.18完 5.19補 11. 2画 |
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