遊長寧公主流杯池二十五首之十四 | |
上官婉兒 |
攀藤招逸客,
偃桂協幽情。
水中看樹影,
風裏聽松聲。
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長寧公主の流杯池に遊ぶ 二十五首之十四
藤に攀ぢて 逸客を招き,
桂を偃せて 幽情に協ふ。
水中に 樹影を看て,
風裏に 松聲を聽く。
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◎ 私感註釈
※上官婉兒:〔じゃうくゎん・ゑんじ;ShàngguānWǎn'ér〕「上官」は複姓の一。664年(麟徳元年)〜710年(景龍四年/唐隆元年/景雲元年)。唐代の女官。唐・中宗の時、昭容の職位に就く。陝州陝県(現・河南省)の人。上官儀の孫で才媛。後に、政変のため殺された。『中国大百科全書 中国文学U』693ページには「Shangguan Wan'er」と載っている。(蛇足になるが、中国映画『武則天』では、則天武后は上官婉兒を「ShàngguānWǎr」と呼んでいた。)
※遊長寧公主流杯池二十五首:長寧公主の流杯池で(曲水流觴の宴で)遊ぶ。 *これはその際の二十五首の十四で、二十五首全て仙境を詠う。 ・長寧公主:中宗(李顕)の娘。中宗と韋后との間に生まれる。 ・流杯池:杯を流す池。曲がりくねった小川状の細長い池。ここで杯を水面に浮かべ、杯が自分の前を流れ過ぎてしまわないうちに詩を作る風雅な遊びをする。
※攀藤招逸客:藤によじのぼって隠士の霊魂を招き。(寓意:仙境に繁る藤によじのぼって(隠棲生活を送り)隠士の霊魂を招き)。 *この聯「攀藤招逸客,偃桂協幽情」について、「藤」を「葛」などの蔓草と同様に見て、隠棲を暗示する言葉(「書引藤爲架,人將薜作衣。」 )とし、「桂」を「月の宮殿」を謂うと見て、宮廷生活ととる。「仙境に繁る藤によじのぼって(隠棲生活を送り)隠士の霊魂を招き、桂が生えている月の宮殿での生活(唐朝の宮中で仕えること)を止めて、静かな思いを叶えたい。」という両面の意味があろうか。 ・攀:引く。よじのぼる。寄る。したう。よじのぼる。 ・藤:かずら。フジ。 ・招逸客:『楚辭』に『招隱士』「攀援桂枝兮聊淹留。王孫遊兮不歸,春草生兮萋萋。」がある。 ・招:招く。呼び返す。 ・逸客:隠逸の人。隠者。隠士。
※偃桂協幽情:桂をなびき伏せて、静かな思いにあわせる。(寓意:桂が生えている月の宮殿での生活(=唐朝の宮廷生活)を止めて、静かな思いを叶えたい。) ・偃:〔えん;yan3●〕やめる。とめる。苦しむ。また、伏せる。なびきふす。ここは、前者の意が寓意として使われていよう。 ・桂:カツラ。人品が清く貴く世俗を抜け出ている趣がある語。また、月世界にあるという木。 ・協:〔けふ;xie2●〕あわせる。叶(かな)える。かなう。 ・幽情:静かな心。風雅な思い。
※水中看樹影:水面に(映る)木の影を見て。 ・水中:水面。水上。また、水中。蛇足になるが、古漢語「水上」は、水辺の意もあり、古漢語「水中」は水面。水上の意もある。日本語での意とずれる場合がある。
※風裏聽松聲:風の中から松の枝を吹き抜ける風の音を耳をすまして聴く。 ・風裏:風の中。 ・聽:(耳をすまして)聴く。 ・松聲:松の枝を吹き抜ける風の音。松籟。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「情聲」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●,
●●●○○。(韻)
●●◎●●,
○●○○○。(韻)
2009. 1. 5 |
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