聞雁 | |
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唐・韋應物 |
故園眇何處,
歸思方悠哉。
淮南秋雨夜,
高齋聞雁來。
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雁を聞く
故園眇 として何 れの處ぞ,
歸思方 に 悠なる哉 。
淮南秋雨 の夜,
高齋に 雁の來 るを 聞く。
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◎ 私感註釈
※韋応物:中唐の詩人。737年(開元二十五年)〜804年頃(貞元年間)。謝霊運、陶淵明の伝統を継ぐ自然派詩人。京兆万年(現・西安)の人。
※聞雁:カリが(鳴いて渡っているのを)耳にして。 ・聞:…を耳にする。聞こえる。 ・雁:ガン。カリ。雁は昭帝と蘇武の間の「雁書(雁信、雁札)」の故事もあり、郷里からの便り(=手紙)を聯想させる。
※故園眇何処:生まれたふるさとは、遥かに遠く、どちらの方になるのだろうか。 ・故園:生まれ故郷。ふるさと。 ・眇:〔べう;miao3●〕遥か。遠い。(=渺)。また、眼を細くして見る。また、すがめ。ここは、前者の意。東晉・陶淵明(陶潜)の『始作鎮軍參軍經曲阿作』に「弱齡寄事外,委懷在琴書。被褐欣自得,屡空常晏如。時來苟宜會,宛轡憩通衢。投策命晨旅,暫與園田疎。眇眇孤舟遊,綿綿歸思紆。我行豈不遙,登降千里餘。目倦川塗異,心念山澤居。望雲慚高鳥,臨水愧遊魚。眞想初在襟,誰謂形迹拘。聊且憑化遷,終反班生廬。」とある。 ・何処:どこ。
※帰思方悠哉:故郷に帰りたいと思う心は、ちょうど(『詩經』の『關雎』のように)遥かなことよ。 ・帰思:故郷に帰りたいと思う心。前出・東晉・陶潛の『始作鎮軍參軍經曲阿作』の「眇眇孤舟遊,綿綿歸思紆。」の紫字部分と同じ。 ・方:ちょうど。まさに。 ・悠哉:『詩經』周南『關雎』に「關關雎鳩,在河之洲。窈窕淑女,君子好逑。 參差荇菜,左右流之。窈窕淑女,寤寐求之。求之不得,寤寐思服。悠哉悠哉,輾轉反側。 參差荇菜,左右采之。窈窕淑女,琴瑟友之。參差荇菜,左右芼之。窈窕淑女,鐘鼓樂之。」とある。
※淮南秋雨夜:淮南地方の秋の雨の夜に。 ・淮南:〔わいなん;Huai2nan2○○〕淮水(現・淮河)以南の地方で、長江以北の地。ここでは任地の滁州(ちょしゅう)(現・安徽省)を指す。
※高斎聞雁来:高殿にある書斎で、(故郷の方から)カリが飛んでくる(鳴き声)を耳にした。 ・高斎:高殿にある書斎。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「哉來」で、平水韻上平十灰。この作品の平仄は、次の通り。絶句の標準の形式から大きくはずれている。
●○●○●,
○◎○○○。(韻)
○○○●●,
○○◎●○。(韻)
2011.12.22 12.23 |
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