同洛陽李少府觀永樂公主入蕃 | |
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唐・孫逖 |
邊地鶯花少,
年來未覺新。
美人天上落,
龍塞始應春。
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洛陽の李少府 の『永樂公主 の蕃 に入 るを觀 る』に同ず
邊地鶯花 少 なり,
年 來 れども未 だ新 たなるを覺えず。
美人天上 より落ち,
龍塞 始 めて應 に春なるべし。
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◎ 私感註釈
※孫逖:〔そんてき;Sun1 Ti4○●〕盛唐の詩人。嗣聖十三年(696年)頃〜上元二年(761年)。河南の人。左拾遺に抜擢され、後に、集賢院修撰をつとめ、中書舎人となる。 *姓を「遜」〔そん;Xun4●〕とするのもあるが、「遜」は中国人の一般的な姓ではない。『全唐詩』や『舊唐書・列伝第一百四十中・文苑中』では、「孫逖」とする。
※同洛陽李少府観永楽公主入蕃:李少府が作った詩の『永楽公主が異民族の許に降嫁するのを見て』に和した(詩)。 *洛陽の李少府が作った『觀永樂公主入蕃』の詩に和して作ったもの。 ・同:和(わ)する。 ・洛陽:〔らくやう;Luo4yang2●○〕(副)都。唐代、東都として繁栄した副都。現・河南省。 ・李少府:李という姓の県尉。 ・少府:官名。県尉の雅称。九卿の一。山海地沢に対する税をつかさどり、皇室の費用に充てる。後に宮中の衣服・宝物・食事などをつかさどる。 ・観:見物する。ながめる。みる(物をながめみる意、そばから物を見物する意)。 ・永楽公主:唐・第九代皇帝・玄宗の甥のむすめ。東平王・李続(唐・太宗の第十子である紀王・李慎の息子)の外孫。父は楊元嗣。唐の和親公主(=中国と周辺民族との和親を図るための婚姻で、周辺民族の首長に降嫁した中国皇帝のむすめ)の一。唐・開元二十五年に契丹(南満洲)の松漠(現・天津の東北500キロメートル、瀋陽の西北150キロメートル一帯:『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)50−51ページ「唐 河北道北部」にある)郡王である李失活に降嫁した。翌年、李失活が亡くなった後、永楽公主はその弟である李娑固に嫁いだ。 ・公主:天子のむすめ。皇女。姫君。 ・入蕃:(中国周辺の)野蛮国によめにやる。 ・入:よめにやる。 ・蕃:〔はん(ばん);fan1○〕えびす。野蛮人。異民族。 ・『観永楽公主入蕃』:李少府が作った詩の題『永楽公主が異民族の許に降嫁するのを見て』。
※辺地鴬花少:辺境の(契丹の)地では、ウグイスが鳴き、花が咲き乱れる(春景色となることは、)少なくて。 ・辺地:国境地帯。かたいなか。人里離れた土地。ここでは、契丹の地のことになる。 ・鴬花:ウグイスが鳴き、花が咲き乱れる春景色を謂う。
※年来未覚新:(新しい)年が来ても、まだ新春になったとは感じられない。 ・年来:としごろ。数年来。
※美人天上落:美女(=永楽公主)が天上界(=唐の帝室)より降嫁していく(ので)。 ・美人:顔かたちの美しい女性。美女。君主の喩え。才徳の優れた人。美男子。ここでは、永楽公主を指す。 ・天上:天上界である唐の帝室。本来の意は、空の上。空。 ・落:降嫁することを謂う。
※龍塞始応春:龍塞(匈奴(≒異民族≒契丹)の根拠地)でも、やっと春になることだろう。 ・龍塞:〔りょうさい/りゅうさい;long2sai4;○●〕匈奴の根拠地。地名で、龍城のことで河北省長垣県の南にある。漢代匈奴が集会して天を祭ったところ。転じて、匈奴の地。現・遼寧省の朝陽市。ここでは、永楽公主が降嫁した契丹の松漠郡辺りにあった居住地を指す。 ・始:やっと。ようやく。最初に。新たに。はじめて。副詞。 ・応:〔おう;ying1○〕当然…であろう。まさに…べし。 ・春:春になる。動詞として使われている。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「新春」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
○●●○○。(韻)
2013.1.22 1.23 |
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