田園樂七首之五 | |
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唐・王維 |
山下孤煙遠村,
天邊獨樹高原。
一瓢顏回陋巷,
五柳先生對門。
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田園樂 七首の五
山下 の孤煙 は遠 き村,
天邊 の獨樹 は 高き原。
一瓢 顏回 の陋巷 ,
五柳 先生 門を對 す。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?〜761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※田園楽七首之五:田園(生活)はすばらしい。作者の罔川での田園生活を指すか。これは七首のうちのその五。飲み食いにも事欠いた顔回を模範として、隠棲した陶淵明が身近にいる田園での孤高な姿を詠う。 *この六言詩の前半の節奏は「□□・□□・□□」となっており、後半は「□□□□+□□」となっている。なお、(『楚辭』などを除いて、)一般的に七言詩の節奏は「□□・□□+□□□」(=「□□・□□+□□・□」or「□□・□□+□・□□」)であり、五言詩の節奏は「□□+□□□」(=「□□+□□・□」or「□□+□・□□」。)(『楚辭』の場合では、七言句、五言句の場合も上述の形式は当て嵌まらない場合が多い)。
※山下孤煙遠村:山の麓(ふもと)に、ただひとすじたちのぼるけむり(の孤高の姿)。 ・孤煙:ただひとすじたちのぼるけむり。作者の孤高の姿でもある。
※天辺独樹高原:大空の涯に、ひとつだけ生えている木(の孤高の姿)。 ・天辺:大空の涯。遠く離れた土地。同時代の盛唐・王昌齡の『送薛大赴安陸』に「津頭雲雨暗湘山,遷客離憂楚地顏。遙送扁舟安陸郡,天邊何處穆陵關。」とある。 ・独樹:ひとつだけ生えている木。作者の孤高の姿でもある。
※一瓢顔回陋巷:(わたしの生活規範は、)一杯(だけ)の飲み物(や食べ物)にも事欠いていたものの学を究め、貧民街で(一生を)過ごした顔回(がんかい)(であり)。 *『論語・雍也篇』に「子曰:『賢哉回也!一箪食,一瓢飮,在陋巷,人不堪其憂,回也不改其樂。賢哉回也!』」に基づく。陶淵明の『自祭文』にも「逢運之貧,箪飄屡」とある。 ・一瓢:「一瓢飮」のことで、一杯(だけ)の飲料。ひしゃく一杯(だけ)。前出・「一箪食,一瓢飮」とは、僅かの飲食物ということで、それにも事欠いていたこと。「瓢」は酒や飲み物などを入れる器。 ・顔回:春秋時代の魯の人。紀元前522年頃〜前490年頃。字は子淵。孔門十哲の第一。貧家に生まれたが、聡明で学問を好み、孔子に最も嘱望された。生活は貧しく不遇で、陋巷に住み、食べ物にも事欠いたものの学に励んだが早逝し、孔子を嘆かせた。 ・陋巷:〔ろうかう;lou4xiang4●●〕狭い街路。貧民街。路地裏。
※五柳先生対門:(わたしの住居は、孤高の隠者である)陶淵明さまと門が向かい合っている。 ・五柳先生:陶淵明(=陶潜)の号。六朝・東晋の詩人で、江西の人。名は潜、字は淵明。(一説に:名は淵明、字は元亮)。官に就いたものの、束縛を嫌って、彭沢県県令を最後に官を辞して、故郷に帰って隠棲した。東晉・陶潛の『五柳先生傳』に「先生不知何許人,不詳姓字,宅邊有五柳樹,因以爲號焉。閑靜少言,不慕榮利。好讀書,不求甚解,毎有會意,欣然忘食。性嗜酒,而家貧不能恒得,親舊知其如此,或置酒招之,造飮必盡,期在必醉,既醉而退,曾不吝情。環堵蕭然,不蔽風日,短褐穿結,箪瓢屡空,晏如也。常著文章自娯,頗示己志,忘得失,以此自終。」とある。 ・対門:真向かい(の家)。門が向かい合っている。門を対す。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「村原門」で、平水韻上平十三元。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○●○,(韻)
○○●●○○。(韻)
●○○○●●,
●●○○●○。(韻)
2014.5.26 5.27 |
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