Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye


陶淵明
陶潜 陶淵明 五柳先生伝
           
                    
              東晉 陶潛
      五柳先生傳  
       
先生不知何許人,
不詳姓字,
宅邊有五柳樹,
因以爲號焉。
閑靜少言,
不慕榮利。
好讀書,
不求甚解,
毎有會意,
欣然忘食。
性嗜酒,
而家貧不能恒得,
親舊知其如此,
或置酒招之,
造飮必盡,
期在必醉,
既醉而退,
曾不吝情。
環堵蕭然,
不蔽風日,
短褐穿結,
箪瓢屡空,
晏如也。
常著文章自娯,
頗示己志,
忘得失,
以此自終。



******

五柳先生傳
                       
先生は 何許の人なるかを 知らず,
姓字も 詳かにせず,
宅邊に 五柳樹 有りて,
因て以て  號と爲す。
閑靜にして  言 少なく ,
榮利を 慕はず。
書を讀むを 好めど,
甚だしくは解するを 求めず,
意に 會
(かな)ふこと  有る毎に,
欣然として 食を 忘る。
性  酒を 嗜
(たしな)む,
而れども  家 貧にして  恒
(つね)には得ること 能はず,
親舊  其の此
(か)くの如きを 知り,
或は 置酒して 之
(これ)を招き,
飮に 造
(いた)らば  必ず盡(つく)し,
期するは  必ず醉ふに 在り,
既に 醉ひ  而して 退かば,
曾て  情を 吝
(やぶさか)にせず。
環堵  蕭然として,
風日を  蔽
(さへぎ)らず,
短褐  穿結,
箪瓢  屡
(しばし)ば 空(むな)しきも,
晏如たり。
常に 文章を著し  自ら娯しみ,
(すこぶ)る 己が志を 示し,
得失を 忘れ,   
此を以て  自ら終んぬ。


*****************

◎ 私感註釈

※陶潛:陶淵明。東晉の詩人。

※五柳先生傳:陶潜の自叙伝。この文は、『晉書・列傳・隱逸』の陶潛の部分から採ったもの。

※先生不知何許人:先生は、どこの人か分からない。 ・先生:陶淵明自身のこと。 ・不知:分からない。 ・何許:どこ。どのへん。いづこ。 ・人。史書では、伝統的にその人物の1.姓。2.名。3.字。その後、号や諡の紹介があり、やがて、4.出身地になる。それに続くのが、5.家系。6.官職などとなる。出身地不詳ということになる。尤も、前出『晉書・列傳・隱逸』の陶潛の部分には「陶潛字元亮,大司馬侃之曾孫也。祖茂,武昌太守。」とあり、その家系も分かっている。

※不詳姓字:姓や字(あざな)(も)つまびらかでない。 *この句は「亦不詳其姓字」ともする。 ・不詳:つまびらかでない。 ・姓字:姓と字(あざな)。姓名。「名」に比べて「字」は、社会的な人間関係上の呼称であるといえ、他人が陶潜を呼ぶときに必要である。それがつまびらかではないということは、社会的な交際を断っていると謂える。実際、陶潜の名と字は、混乱していて、『晋書』『文選』等によっては「潛」(潜)を名とし、「淵明」を字とし、或いはその逆とする。前出『晉書・列傳・隱逸・陶潛』では、「陶潛字元亮」と、元亮となっている。蛇足になるが、本サイトでは、始め「陶潜」で統一していたが、日本での通用を考え、途中から「陶淵明」をメインにした。不統一になっているが…。

※宅邊有五柳樹:家の傍に五本の柳の木がある。 ・宅邊:家の近くに。 ・有:…がある。蛇足になるが、「ある」の意で「在」字を使うとすれば、「在宅邊有五柳樹」となる。その場合、「在」は「…に(ある)」の意になる。 ・五柳樹:五本の柳の木。

※因以爲號焉:そのため、(その五柳を)号とした。 ・因:そのため。よって。原因、理由をいう。 ・以爲:…を…とする。「以…爲」に同じ。蛇足だが、「おもへらく」ではない。陶潜と同時代以前、屈原もこの用法が多い。 ・號:号とする。動詞。 ・焉:語調を調えるための終助辞。

※閑靜少言:(陶淵明は)ひっそりとしていて、言葉数も少ない。 *この句は「閑靖少言」ともする。 ・閑靜:ひっそりとしている。 ・閑靖:静かでやすらか。 ・少言:あまり発言しない。

※不慕榮利:名誉や利益をほしがらない。 ・不慕:ほしがらない。もとめない。 ・榮利:名誉と利益。栄達と利益。

※好讀書:読書を好む(が)。 ・好:このむ。動詞。・讀書:(学問のため)本を読む。勉強をする。「本を読む」ことだが、日本語での語感よりも道を究めるための研究学習の味わいが強い。

※不求甚解:甚だしくは解することを求めない。厳格に完全に理解することは、要求しない。「甚だしく
解するを求めず。」後出、部分否定。 蛇足になるが、「甚だしく解することを求めず。」では「甚不求解」になる?? ・不求:求めない。追求しない。 ・甚解:深く解明する。

※毎有會意:意にかなうことがある度に。 ・毎有:…の度ごとに。 ・會意:意にかなう。会心。 ・會:かなう。さとる。

※欣然忘食:よろこんで、食事することも忘れる。 ・欣然:よろこぶさま。 ・忘食:食事することも忘れる。

※性嗜酒:生まれつき酒を好む(が)。 ・性:生まれつき。さが。性質。 ・嗜酒:酒をたしなむ。酒を好む。

※而家貧不能恒得:しかしながら、家が貧しいために、恒常的には、得ることができない。 *「而家貧不能恒得」を「家貧不能常得」ともする。蛇足になるが、「不能恒得」は部分否定で「恒(つね)に
得る(こと) あたはず」(いつも必ず入手出来るとは限らない)になる。「恒不得」だと「恒(つね)に 得ず」(いつも必ず入手出来ない)。前出の「不求甚解」も同様に部分否定(甚だしく求めず)になる。

※親舊知其如此:親戚や旧友は、(陶淵明の経済)状況が、このような次第だと分かっている。 ・親舊:親戚や旧友。 ・知:知っている。分かっている。 ・其:(陶淵明の経済)状況。 ・如此:このような次第。

※或置酒招之:しばしば酒を準備して、陶淵明を招待した。 ・或:ある時には。 ・置酒:酒を準備して人をもてなすこと。酒食を用意すること。酒を調えること。 ・招之:ここでは、陶淵明を招待すること。

※造飮必盡:飲みに行けば、必ず(飲み)尽くし。 *「造飲必盡」を「造飲輒盡」ともする。その場合は「飲みに行く度に」になる。 ・造:いたる。来る。行く。きわめる。 ・飲:のむ。(酒を)のむ。 ・必:かならず。…のときは、かならず。 ・輒:…をするごとに。そのたびごとに。すなはち。 ・盡:つきる。つくす。ここはここは、後者の意。飲み尽くす。

※期在必醉:ねらいは必ず酔っぱらうことにある。 ・期在:期すこと(は)…にある。…に、目当てを付ける。 ・必醉:必ず酔っぱらう。充分に酒を楽しむことをいう。

※既醉而退:酔ってしまえば、退席して。 ・既:…た からには。…した以上は。 ・醉:酔っぱらう。 ・退:退く。退席する。

※曾不吝情:いつまでもぐずぐずしたことがない。 *この句は「曾不吝情」を「曾不吝情去留」ともする。「去留」がある方が意味の通りがよい。 ・曾不:今までずうっと…でなかった。 ・蛇足だが、「不曾」とすれば、「かつて…だったことがない。」と、経験がなかったことをいうことになる。 ・吝情:おしむ心。ケチる心。ここは動詞句で、「情をおしむ」になる。 ・吝:おしむ。しぶる。やぶさか。

※環堵蕭然:家の周りのかきねは、がらんとして。立派な住居ではない、ということ。 ・環堵:家の周りのかきね。 ・堵:(家の周りの)かき。 ・蕭然:がらんとしたさま。ものさびしいさま。ここは、前者の意。

※不蔽風日:風や日光をおおい防ぐことはない。宅地の垣が、その働きをしていない、粗末なことをいう。 ・蔽:おおう。 ・風日:風や日光。

※短褐穿結:粗末な木綿の粗布の衣服で、ツギだらけの着物で。 ・短褐:丈の短い木綿の粗布。身分の卑しい者が着る粗末な衣服。 ・穿結:破れたところを結び合わせる。ぼろぼろの服を繕う。ぼろぼろの服。

※箪瓢屡空:飲食物の容器が、しばしば空っぽになる。しばしば飲食にも事欠くことを言う。『論語・雍也篇』に「子曰:「賢哉回也!
一箪食,一瓢飲,在陋巷,人不堪其憂,回也不改其樂。賢哉回也!」に基づく。陶淵明の『自祭文』にも「逢運之貧,箪飄屡」とある。 ・箪瓢:飯を盛る器と酒や飲み物などを入れる器。 ・屡空:しばしば空っぽになる。

※晏如也:(「環堵蕭然,不蔽風日,短褐穿結,箪瓢屡空」というように、劣悪な住居や粗末な衣服、飲食に事欠いても)安らかであった。劣悪な衣食住の環境であっても、顏回のように「不改其樂」ということ。 ・晏如:安らかなさま。 ・也:上の文を結ぶ助辞。断定の終助辞。ここは、前者の意で使われていよう。その場合、(日本語の読み下しでは)読まない場合がある。

※常著文章自娯:常に書物や文字に書きあらわして、自分でたのしんでいる。 ・常:つねに。 ・著:(書物や文字に)書きあらわす。 ・自娯:自分でたのしむ。

※頗示己志:やや、すこし自分自身のこころざしを示す。 ・頗:やや、すこし。すこぶる。ここは、前者の意で使われる。 ・示:しめす。 ・己志:自分自身のこころざし。

※忘得失:損得を忘れる。 *「忘得失」を「忘懷得失」ともする。 ・忘得失:損得を忘れる。利益や損失のことを考えない。

※以此自終:このような次第で、自分の人生を終えた。 ・以此:このような(状態)で。 ・自終:自分の人生を終える。

               ***********





◎ 構成について

韻文ではない。一応この作品の平仄を次に載せておく。

○○●●○●○,
●○●●,
●○●●●●,
○●○●○。
○●●○,
●●○●,
●●○,
●○○●,
●●●●,
○○●●,
●●○,
○○○●○○●,
○●○○○●,
●●●○○,
●●●●,
○●●●,
●●○●,
○●●○。
○●○○,
●●○●,
●●○●,
○○●○,
●○●。
○●○○●○,
◎●●●,
●●●,
●●●○。
2003.11.16
     11.17
     11.18完
2015. 6.10補

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