集靈臺 其二 | |
|
唐 張祜 |
虢國夫人承主恩,
平明騎馬入宮門。
卻嫌脂粉汚顏色,
淡掃蛾眉朝至尊。
******
虢國 夫人主恩 を承 け,
平明 馬に騎 して宮門 に入 る。
卻 って嫌 ふ脂粉 は 顏色を汚 すと,
淡 く蛾眉 を掃 きて至尊 に朝 す。
****************
◎ 私感註釈
※張祜:〔ちゃうこ;Zhang1 Hu4〕〜晩唐(?)の詩人。785年〜849年頃。字は承吉。河北道清河郡(現・河北省邢台市清河県)の人。清河の名族に生まれ、張公子と呼ばれた。
※集霊台:唐代、天の神をまつる台の名。長生殿をいう。驪山の華清宮にある。白居易の『長恨歌』に「臨別殷勤重寄詞,詞中有誓兩心知。七月七日長生殿,夜半無人私語時。在天願作比翼鳥,在地願爲連理枝。天長地久有時盡,此恨綿綿無絶期。」とある。これは『其二』で、虢国(かくこく→かっこく)夫人(=楊貴妃の美貌の姉)を詠う。『其一』:「日光斜照集靈臺,紅樹花迎曉露開。昨夜上皇新授籙,太真含笑入簾來。」はこちら。
※虢国夫人承主恩:虢国(かくこく→かっこく)夫人は、君主の恩をうけたまわって。 ・虢国夫人:〔くゎくこく(かくこく→かっこく)-ふじん;guo2guo2-fu1ren2●●○○〕唐・楊貴妃の三番目の姉の封号。生まれつきの美貌で、天子の前に出る時も常に化粧をしなかったという。生年不詳〜至徳元載(756年)。 ・承:(人の好意を)こうむる。うける。うけいただく。…していただく。…にあずかる。うけたまわる。 ・主恩:君主の恩。主人の恩。
※平明騎馬入宮門:夜明けに馬に乗って、宮殿の門を入る。 ・平明:夜明け。=平旦。また、公平で明らか。ここは、前者の意。盛唐・王昌齡の『長信怨』に「奉帚平明金殿開,且將團扇共徘徊。玉顏不及寒鴉色,猶帶昭陽日影來。」とある。 ・騎馬:馬に乗る。
※却嫌脂粉汚顔色:(世の常とは)逆に、おしろいは顔の色を損なうものだとして、嫌い。 ・却:反対に。却(かえ)って。 ・脂粉:おしろい。 ・顔色:顔の色。いろ。
※淡掃蛾眉朝至尊:蛾眉を淡く掃く(≒画く)だけで、(素顔のままで)天子様におめにかかる。 ・淡掃:うすく掃く。北宋・蘇軾の『飮湖上初晴後雨』に「水光瀲灧晴方好,山色空濛雨亦奇。欲把西湖比西子,淡粧濃抹總相宜。」とある。 ・蛾眉:細長く曲がって美しい眉。美人の眉の喩え。=娥眉。 ・朝:〔てう;chao2○〕おめにかかる。まみえる。向かう。面する。また、まつりごと。政務を執る。ここは、前者の意。蛇足になるが:朝〔てう;zhao1○〕あさ。 ・至尊:天子の敬称。この上なくとうとい。ここは、前者の意。
***********
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「恩門尊」で、平水韻上平十三元。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○○●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○○●○。(韻)
2018.5.28 5.29 5.30 5.31 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |