陸亀蒙白蓮　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩　Lu Guimeng

白蓮
	晩唐・陸龜蒙

素蘤多蒙別艷欺，
此花眞合在瑤池。
無情有恨何人覺，
月曉風淸欲墜時。

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白蓮

素(しろ)き蘤(はな)は　　多く　　別の艷(えん)の欺(あなど)りを蒙(かうむ)る，
此の花　眞(ただ)合(まさ)に　　瑤池(えうち )に在るべし。
情無く　恨(うらみ) 有るを　　何人(なんぴと)か覺(さと)らん，
月は曉(あ)け　風は淸き　　墜(おち)んと欲(ほっ)するの時に。

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◎　私感註釈

※陸亀蒙：晩唐の詩人、農学家。？～８８１年（中和元年）。字は魯望。号は天随子、江湖散人、甫里先生。姑蘇（現・江蘇省）の人。蘇州の名家の出で、湖州、蘇州刺史の幕僚をつとめた。その後、松江の甫里に隠棲して農耕に励み、開墾、農業の改良を行なった。

※白蓮：白いハスの花。

※素蘤多蒙別艶欺：白い花が、他の艶（つや）やかな色の花（＝紅蓮）から侮（あなど）りを受けている。　・素蘤：〔そゐ；su4wei3●●〕白い花。ここでは、白蓮のことになる。　・素：白い。　・蘤：〔ゐ；wei3●〕花。　・蒙：…られる。こうむる。　・別艶：他の艶（つや）やかな花。詩の前後から判断すると、可憐な白蓮ではなくて、彩り美しい紅蓮のことになる。　・欺：いじめる。あなどる。「蒙…欺」（（…に）いじめを受ける）。また、だます。あざむく。馬鹿にする。なお、現代（中国）語でも、「いじめ」は“欺負”、“欺侮”と言う。

※此花真合在瑤池：この花（＝白い花＝白蓮）は、本当に、まことに仙界の瑶池（ようち）にあるべきである。　・此花：この花。「素蘤（そゐ）」ことであり、「白蓮」のことである。　・真合：ちょうど…すべきである。ただまさに…べし。　・瑤池：〔えうち；yao2chi2○○〕崑崙（こんろん）山にある池の名。西王母（せいおうぼ）が住んでいるところ。西王母とは、女の仙人で崑崙山に住んで不死の薬を持っている。晩唐・李商隱に『瑤池』「瑤池阿母綺窗開，黄竹歌聲動地哀。八駿日行三萬里，穆王何事不重來。」がある。

※無情有恨何人覚：情がない（とはいえ）恨（うらみ）はあることを、誰が悟っていただろうか。　・無情：情がない。　・恨：うらみ。　・何人：なんぴと。なんびと。誰。　・覚：悟る。覚める。自覚する。

※月暁風清欲墜時：残月の暁（あかつき）に風が清々（すがすが）しい散ろうとする時（に）。　・暁：あかつき。夜明け。あかるい。あかるくなる。　・欲：…しようとする。…たい。　・墜：〔つゐ；zhui4●〕落ちる。落下する。衰える。

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◎　構成について

韻式は、「ＡＡＡ」。韻脚は「欺池時」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。

●●○○●●○，（韻）
●○○●●○○。（韻）
○○●●○○●，
●●○○●●○。（韻）