尋陸鴻漸不遇 | |
盛唐・皎然 |
移家雖帶郭,
野徑入桑麻。
近種籬邊菊,
秋來未著花。
扣門無犬吠,
欲去問西家。
報道山中去,
歸時毎日斜。
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陸鴻を尋ぬるも漸う遇へず
家を移して 郭に帶 ると雖 も,
野徑は桑麻 に入る。
近く種 えたる籬邊 の菊,
秋 來 れども 未だ花を著 けず。
門を扣 けど 犬の吠ゆる無く,
去らんと欲 して 西家に問ふ。
報 らせ道 ふ: 「山中に去 かば,
歸時 は 毎日斜 ならん」と。
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◎ 私感註釈
※皎然:盛唐の詩僧。湖州の人。本姓は謝。字はC晝。
※尋陸鴻漸不遇:陸鴻を尋ねたが、だんだんと会えなくなってきた。 ・尋:たずねる。さがす。 ・陸鴻:陸羽。竟陵(現・湖北省天門)の人。戦乱を避けて湖州に隠棲。詩に長けていた。 ・漸:だんだん。しだいに。また、ようやく。 ・遇:〔ぐう;yu4●〕であう。思いがけなくあう。
※移家雖帯郭:引っ越しした先は、外側の城郭に繋がってはいるものの。 ・移家:引っ越し。 ・雖:いえども。 ・帯:めぐらす。つながる。 ・郭:外側の城郭。盛唐・孟浩然の『過故人莊』に「故人具鷄黍,邀我至田家。克村邊合,青山郭外斜。開筵面場圃,把酒話桑麻。待到重陽日,還來就菊花。」とある。
※野径入桑麻:野路がクワやアサの畑に入り込んでいる(場所だ)。 ・野径:野路。 ・桑麻:〔さうま;sang1ma2○○〕桑(くわ)と麻(あさ)。農業・養蚕業の対象となる植物(桑麻を植える所の意で、)田園。前出・陶潛の『歸園田居』五首其二「相見無雜言,但道桑麻長。桑麻日已長,我土日已廣。」。
※近種籬辺菊:近くは、垣根にキクをを植え(たが)。 ・種:〔種:動詞zhong4●〕種を播く。植える。 〔種:名詞zhong3〕たね。 ここは、前者の意。 ・籬辺:垣根。
※秋来未著花:秋になっても、まだ花を著(つ)けない。 ・未著花:まだ花を著(つ)けない。
※扣門無犬吠:門を叩くが、(犬がいないので)犬のほえ声がない。 ・扣門:門を叩く。 ・扣:〔こう;kou4●〕叩く。 ・無犬吠:(犬がいないので)犬のほえ声がない。 ・吠:〔はい;fei4●〕犬がなく。ほえる。
※欲去問西家:(会うのを諦めて)帰り去ろうとしたが、(念のため)西隣の家(の人に事情を言ったところ)。 ・欲:…しよう。…う。ほっす。 ・去:帰り去る。 ・西家:西隣の家。
※報道:「山中去-:(西隣の家の人が)報(しら)せて言うことには、「山の中に行ったので。 ・報道:(西隣の家の人が)報(しら)せて言う。 ・山中:山のなか。
※-帰時毎日斜」:帰宅の時刻は、(日が)斜めになる。夕刻になる」とのことだった。 ・帰時:帰宅の時刻。 ・斜:(日が)斜めになる。夕刻になる。
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◎ 構成について
この作品の平仄は、次の通り。韻式は、「AAAA」。韻脚は「麻花家斜」で、平水韻下平六麻。
○○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
2021.9.3 9.4 |
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