贈江客 | |
中唐・白居易 |
江柳影寒新雨地,
塞鴻聲急欲霜天。
愁君獨向沙頭宿,
水遶蘆花月滿船。
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江客 に贈 る
江柳 影 は寒し 新たに雨 るの地 ,
塞鴻 聲 は急 なり霜 らんと欲 するの天 。
愁 ふ 君が獨 り沙頭 に向 て宿するを,
水 は蘆花 を遶 りて 月は船に滿 つ。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上積極的な活動を展開する。
※贈江客:川での旅をする人に(この詩を)贈る。 ・贈:おくる。プレゼントする。 ・江客:川の旅をする人。
※江柳影寒新雨地:川辺の柳の影は寒々しい(のは、)新たに雨が降り出した(からで)。 *第二句(承句)と対になっている。 ・江柳:川辺の柳。 ・影:かげ。水面に映る像。 ・新雨地:ここでの「雨」は動詞で、「あめふる」の意と読む。 ・雨:名詞「あめ」〔う;yu3●〕。動詞「あめふる」〔う;yu4●〕。
※塞鴻声急欲霜天:空を渡り行くカリ(ヒシクイ)の声はあわただしくて、霜が降(ふ)りそうな空模様である。 ・塞鴻:〔さいこう;sai4hong2●○〕辺境地域の空を渡り行くカリ(ヒシクイ)。 ・急:気ぜわしい。あわただしい。せっかちな。 ・欲-:…とほっす。…たい。…そうだ。…ようだ。「欲+動詞」の形で、広く使われる。 ・霜:しもふる。ここでの「霜」は動詞として使っていよう。(「欲霜…」の使い方から)。
※愁君独向沙頭宿:ひとりで川辺に泊まるあなたに気持ちが沈む。 ・…君…:「(あなたは)、ひとりで川辺に泊まる(あなたを…)」『論語』の「有朋自遠方來…」と同様の文型(朋 有り 遠方より来たる)(朋の遠方より来たる有り)で、この詩の「君」は「朋」のことで、「遠方より来た」のか。 ・独向-:ひとりで…に。「向」字は、「於」字のはたらきをする。…に。 ・沙頭:川原のほとり。 ・宿:とまる。動詞。
※水遶蘆花月満船:(というのは)水面(みなも)はアシの花に取り巻かれ、月光は船いっぱいにあたる(寂寥たる中に居るからだ。) ・遶:〔ぜう(現;じょう);rao3●〕めぐる。めぐらす。とりまく。 ・蘆:〔ろ;lu2○〕アシ。ヨシ。
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◎ 構成について
この作品の平仄は、次の通り。韻式は、「AA」。韻脚は「天船」で、平水韻下平一先。
○●●○○●●,
○○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2021.10.17 10.18完 |
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