闕題二首 (山中) | |
盛唐・王維 |
荊谿白石出,
天寒紅葉稀。
山路元無雨,
空翠溼人衣。
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闕題 (山中)
荊谿 に白石 出 で,
天寒 うして紅葉 稀 なり。
山路 元 より雨 無けれど,
空翠 人の衣を溼 ほす。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?〜761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※闕題二首:『闕題』:題が欠け落ちる、意。これは其の一。『山中』ともする。晩秋〜初冬の景色を詠った。
※荊渓白石出:荊渓(けいけい)は(冬に近い気節なので水量が少なく、川原には乾いて)白く見える石が現れ。 ・荊谿:(けいけい;Jing1xi1○○)川の名。源は陝西省の藍田県に湧き、長安に流れこんで㶚水となる川の流れ。 谿:〔けい;xi1○〕谷川。≒渓〔けい;xi1○〕谷川。 ・白石:(ここでは乾燥のため、乾いて白く見える石を謂う。
※天寒紅葉稀:空の空気の流れは冷たく、もみじもの季節(=晩秋)も終わろうとしている。 ・天寒:空の気配と空気の流れは冷たい。 ・紅葉:もみじの季節-今は晩秋も終わろうとする時であることを謂う。 ・稀:まれである。
※山路元無雨:山道は、もとより雨が無いものの。 ・元:もと。 ・元無雨:もとより雨が無い。
※空翠湿人衣:滴るような緑に立ち籠める靄や霧が、人(わたし)の衣服を湿らせた。 ・空翠:〔くうすゐ;kong1cui4◎●〕深山の緑の樹林の間に立ちこめる、みずみずしい山気(現代で謂う水蒸気か)。また、滴るような緑。空に聳え立つ山の木々の緑。ここは、前者の意。 ・翠:みどり。萌葱色(もえぎいろ)。また、カワセミ。ここは、前者の意。 ・湿:うるおす。しめす。ぬらす。また、湿気。ここは、前者の意。「溼」は「濕」の本字。 ・人衣:わたしの衣服。人の衣服。
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◎ 構成について
この作品の平仄は、次の通り。韻式は、「AA」。韻脚は「稀衣」で、平水韻上平四支(衣)・五微(稀)。
○○●●●,
○○○●○。(韻)
○●○○●,
○●●○○。(韻)
2021.10.20 10.21 |
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